第185話 親孝行をすること

 その日は何か変わった日というわけでもなかった。

 陽が強いとか、風が強いとか、地震が起きたとかそういう特別な日ではなかった。

 ごく普通の平和な日。

 しかし、曹操はこの日、ふとあることを思い出した。


「・・・私も今日になるまでに随分と父に迷惑をかけてきたのだな。」


 曹操が思い出したことは、彼の父である曹嵩そうすうのことであった。


 曹嵩は今、故郷の陳留ちんりゅうにはおらず、琅邪ろうや(徐州北部の国)という片田舎で隠居生活を送っていた。


「今の自分があるのは全て父上のおかげ・・・この恩を返すには、今において他になし!」


 曹嵩は曹操を溺愛しており、曹操もまた父の曹嵩を敬愛していた。


 敬愛する父を自分の屋敷に迎えようと、彼は早速行動に移った。

 側近に筆と硯を用意させ、一筆したためると、泰山たいざんの太守『応劭おうしょう』を呼びつけた。


「応劭!琅邪ろうやにいる我が父と面会し、この手紙を父に渡せ!!そして、琅邪ろうやの中で死を待つ父を息子が心配していると伝えろ!!よいな!!」


「了解ちゃ~ん!曹嵩様を応じさせ、曹操様の元にしょうするよう力を尽くします!今のを略して応劭です!なんちゃって~!(テヘペロ!)」


「つまらんことを抜かすな!早く行け!!」


「アイアイサー!!」


 曹操より命を受けた応劭は、ピューーッ!と急いで琅邪へと向かったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る