第184話 優秀な人には優秀な人材が集まる

 黄巾賊を討伐したことにより曹操の名はさらに広まった。

 名を上げた曹操の元には数多くの才ある者が集まって来た。


 王佐の才『荀彧じゅんいく

 行軍教授『荀攸じゅんゆう

 聡慧参謀『程昱ていいく

 大賢人 『郭嘉かくか


 彼らは皆、才知に長けた賢才たちであった。


 特に荀彧は曹操に気に入られ、「貴公は私の張子房ちょうしぼうである。」と称賛された人物であった。


 ※張子房とは漢の高祖である劉邦りゅうほうに仕え、覇業を助けた名軍師『張良ちょうりょう』のことです。


 曹操は彼らを手厚くもてなし、最高の礼を持って軍へと迎え入れた。



 曹操の元に集まったのは、なにも賢才たちばかりではない。

 勇猛な士も集まっていた。

 その中でも特に異彩を放ったのは『典韋てんい』という名の大男であった。


 典韋は重さ80斤(=18Kg)の鉄のほこを左右の手に持ってぶん回すことが出来ると豪語する、クレイジーなとんでも野郎であった。

 そのとんでも話を聞いた曹操は、


「嘘つけ。」


 と彼の話を全く信じなかった。


 そこで典韋は、「しからば、我が武をお見せしよう・・・そぉーーい!!」と陣営中央にて言葉通りに戟の舞を実践して見せた。


 ちょうどその時、突如として大風が陣営内に吹き荒れた。

 そして、その風の影響により、陣営に立てられていた大旗がグラグラと揺れて今にも倒れそうになった。


「「やばいよ、やばいよ~~!!皆で旗を~支えろえろ!!」」


 大旗の周囲にいた何十人もの兵たちは、旗竿を倒すまいと皆で旗竿を必死に支えた。

 しかし、荒れに荒れる強風の力には及ばず、彼らは揺れる旗竿につられて右往左往していた。

 それを見た典韋は、


「退けい!俺がやる!!」


 と兵たちをどけて、片手で旗竿を掴んだ。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!(ぷるぷるぷるぷる)」


 数十人がかりで支えていた旗竿を、彼は1人、片手のみで支えて見せた。

 しかもその後、更なる強風が吹こうとも、彼は両手を使うことはせず、片手だけで旗竿を支えきって見せた。


 それを見た曹操は、


「う~む。いにしえ悪来あくらいにも劣らぬ男だ。」


 と舌を巻いて彼を褒め称えた。


 悪来とは昔、いん紂王ちゅうおうの臣下で怪力無双を誇った人物である。

 曹操がそれにも勝ると称したことで、以来、悪来は典韋のあだ名となったのであった。

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