第154話 美しいモノは誰でも欲しがる

 呂布の胸はドッキドキ!であった。

 彼は貂蝉に完全に惚れてしまい、彼女から目を逸らすことが出来なくなっていた。

 そんな彼の姿を近くより見ていた王允は、「ここがチャンス!」と彼に悪魔の囁きを始める。


「将軍・・・もしかして貂蝉がお気に召しましたか?」


「うっ!? いや・・・まぁ・・・その・・・お、男ならこのような美人を誰でも欲しがるものよ。」


 いつもの豪胆な呂布からは想像できないほどの消極的な姿勢に王允は思わず笑いそうになったが、彼は笑いを堪えて悪魔の囁きの続きを行う。


「娘よ、よろこべ!将軍はお前のことをお気に召したようであるぞ!!」


「まぁ!!それは・・・とても光栄に存じます。しかし・・・恥ずかしくもございます。」


 王允の一言で貂蝉は袖で顔を隠した。

 そして袖から顔をチラチラと覗かせ、呂布の顔をときより見つめた。

 それを見た呂布はこう思った。


(うひょーーー!これはアカーーーン!かわいすぎるでぇーーー!!)


 呂布は貂蝉に落城寸前であった。

 そんな彼に王允は悪魔の囁きにて畳み掛ける。


「将軍・・・もし将軍が望むのならば、貂蝉を差し上げてもよろしいですが・・・。」


「えっ!? ほ、本当であるか!!」


「ええ、誰がそのような言葉を冗談で申しましょうか。・・・もちろん、娘が賛同すればですが・・・。して、貂蝉よ。お前はこの話をどう思う?」


 王允は貂蝉に問いかけた。

 しかし、この問いに対する答えは決まっている。

 彼女にはその答えを口に出す以外の選択肢はないのである。

 それが彼女の選んだ道だからだ。


「とても光栄に存じます。」


 彼女の答えを聞いた呂布は今日一番の笑顔を見せた。


「おおっ!では王允殿!貂蝉を俺に・・・。」


「はい。将軍に娘を差し上げましょう。」


「うむ!王允殿!感謝いたす!!」


 呂布は王允の手を握り、感謝の言葉を述べた。


「では将軍。吉日を選んで、貂蝉を将軍の家に送ります。」


「うむ。・・・王允殿。必ず、必ず頼みますぞ。・・・絶対に、絶対にですぞ。」


 陥落した呂布は感謝の言葉と共に、何度も、何度も繰り返し王允に念押しして、ようやく帰ったのであった。

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