第106話 時には運に任せよう
曹操の従弟である『曹洪』は1人馬を走らせていた。
そして、敵か味方か分からぬ軍勢の声を聴き、彼はそこへ向かった。
月明かりが照らす中、遠くよりその地に目を凝らすと、そこには孤軍奮闘している曹操の姿があった。
(ぼっちだ!兄上がひとりぼっちだ!ひとりぼっちで周囲の兵たちに剣を立てている!助けなければ!!)
曹洪は馬の腹を蹴り、急ぎ曹操救出へと向かった。
「ぬえへへへへ!つっかっまっえた~~!!」
「・・・」
2人の兵により、曹操が亀甲縛りにされそうになったその時、曹洪が曹操の元へ颯爽と駆けつけた。
「貴様ら!我が兄上を縛りプレイするなど言語道断!くたばれ!!」
「ぬわわわわ!先っちょだけ!先っちょだけでいいから縛らせて!!」
「やかましい!!」
曹洪は馬上にて剣を振り下ろし、1人は背中から斬り伏せ、もう1人は首を跳ねた。
事が済むと、曹洪は馬から降りて、倒れている曹操の元に近寄り、曹操を抱き上げた。
「兄上!しっかりして下さい、兄上!曹洪ですぅ!!」
「うっ・・・曹洪か・・・助かったぞ。」
「気がつかれましたか、兄上!早くここから脱出しましょう!!」
「う、うむ。・・・すまん。」
矢に撃たれ、馬から落馬し、敵と戦い、満身創痍の曹操を支えながら、曹洪は乗ってきた馬へと曹操を乗せた。
そして、自身も馬に乗ると、片手で曹操を支え、片手で手綱を握り、馬を走らせた。
道なき道を走らせ、追手から逃れようとした2人であったが、すぐに徐栄が手勢を連れて、彼らを追いかけてきた。
追ってくる兵たちから無我夢中で逃げる曹操たち。
そんな彼らの目の前に絶望的な光景が広がる。
「か、河が・・・。これまでか・・・。」
彼らの目の前には大河が広がっていた。それも流速は速い。
万全の状態ならまだしも、曹操たちは満身創痍。
とても泳ぎきれるように思えなかった。
「私の命運も尽きたか。・・・曹洪。馬から降ろしてくれ。自害する。」
「なっ!? 何を馬鹿なことを!兄上らしくもない!そんな馬鹿なことを言ってる暇があったら鎧を脱いで下さい!!」
「鎧を脱ぐだと?脱いで何をするのだ?」
「決まっています!この大河を泳ぐのです!泳いで向こう岸まで逃げのびるのです。」
「し、しかし今の体力ではとても・・・。」
「諦めなければ何でもできます!それに・・・そこはもうアレです!天に任せましょう!!」
「天に任せるか・・・ふっ、ふふふふ。あはははは!よかろう!天に任せるとしよう!!」
諦めない覚悟を抱いた曹操は、曹洪とともに馬から降りて鎧を脱いだ。
その他、必要最低限の物以外は全て捨てて、彼らは身軽になった。
そして、2人は河岸に立つと、曹洪は曹操を肩にかけ、勢いよく水が流れる大河へとその身を委ねた。
「じょ、徐栄様!あれを見てください!!」
「むっ!あ、あれは・・・人魚か!!」
「アホかっ!あれは曹操たちですよ!奴らはこの河を渡って逃げるつもりです!!」
「なにっ!こ、この河を渡るなど、なんと命知らずな!!」
「とてもじゃないですけど、この河を渡りきるなんて不可能ですよ。・・それにしても、惜しかったですね。奴を捕らえれば褒美は我らのモノでしたのに。」
「う~む。しかたあるまい。対岸の兵に連絡して、曹操の土左衛門を探すとしよう。」
曹操たちの自殺行為を目にした徐栄は兵を引き揚げ、その場を後にしたのであった。
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