第72話 逃げるが勝ち
「曹操!今の光は一体なんであるか!!」
「はっ!今の光の原因はこれにございます!!」
董卓が振り返るや否や、曹操は片膝をつき、頭を下げ、両手で七星剣を献上する姿勢を取った。
曹操が思いついた打開策。
それは『献上』であった。
暗殺に使用するはずであった七星剣を董卓に献上することで、この場を切り抜けようとする見事な策であった。
「董卓様にこの剣を献上しようと布で拭いておりました。この剣にちりばめられた宝石による輝きが鏡に反射してしまったのでしょう。申し訳ございませんでした。」
「むむむ。・・・どれ見せて見よ。」
董卓は牀から起き上がると、曹操が持っていた七星剣を奪い取り、まじまじとそれを眺めた。
董卓が七星剣を手に取って眺めていると、呂布が良馬を引き連れ戻ってきた。
「ううむ。見事な名剣であるな。ありがたく頂戴するとしよう。」
「ははぁ!喜んでいただき何よりです!・・・董卓様。鞘はこちらになります。この鞘も見事でしょう?」
「むむっ!この鞘もまた見事なり!曹操よ!褒めてつかわす!」
「お褒めの言葉、恐悦至極に存じます。」
董卓は七星剣を気に入ったようで、曹操を大いに褒め称えていた。
一方、戻ってきたばかりの呂布はその様子を見て眉をひそめていた。
呂布の表情を見た曹操は心臓をバクバクと鳴らして内心焦っていたが、顔には出さず平然を装っていた。
そんな曹操に呂布が馬を見るように促す。
「・・・曹操殿。馬を見給え。」
「はっ!ご準備感謝いたします!」
曹操は呂布に頭を下げると庭に出て、良馬の毛並みを確かめた。
「これは素晴らしい良馬。ありがたく頂戴いたします。・・・董卓様。よろしければ董卓様の前で試乗してみてもよろしいでしょうか?」
「うむ。よかろう。存分に試してみるがよい。」
董卓はご機嫌だったようで、曹操のこの発言に何の疑いも持たず、馬の試乗を許した。
「ありがとうございます。・・・はっ!」
董卓からの許しを得た曹操は馬にまたがり、鞭を一振り、そのまま丞相府の門外へ駆け出していった。
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