第71話 打開策は必死に考えよう

 ジリジリ、ジリジリと曹操は七星剣を片手に董卓に近づいていた。


(抜っき足♪差っし足♪忍び足~♪優しくソフトで丁寧に~奴を一刺しするんだ~い♪)


 気配を殺し、足音を消し、呼吸を抑え、気持ちを静めて董卓を暗殺しようとする曹操。

 今の曹操に隙は無し。このまま暗殺は成功する・・・かのように思えたその時、事態は急変することとなる。


 曹操がある程度の距離まで近づき剣を構えると、董卓が寝転がっていた牀の側にあった壁の鏡がピカッと光った。


「むぅ!今の光はなんだ!!」


(し、しまった!七星剣の輝きで鏡に光が!!)


 董卓を暗殺するために王允から借りた聖なる剣である『七星剣』がここにきて裏目に出てしまった。

 思わぬ事態に焦る曹操。

 董卓は巨漢であるが、その体格に似合わず動きは意外と素早い。

 董卓が曹操の方へと振り返るまで1秒もかからないであろう。

 その1秒の間に曹操は打開策を考えた。必死に必死に考えた。


0.2秒経過!


「曹操!」


(剣をしまうか?・・・否!しまっている時間は無い!剣を抜いた状態でこの状況を打破するしかない!!)


0.4秒経過!


「曹操!今の」


(このまま暗殺を実行するか?・・・否!この距離では遠すぎる!暗殺は不可だ!!)


0.6秒経過!


「曹操!今の光は」


(逃げるか?・・・否!逃げるのは愚策!捕まるのは火を見るより明らか!!)


0.8秒経過!


「曹操!今の光は一体」


(剣を隠すか?・・・否!それはアホ過ぎる!『わたくし、董卓様を暗殺しに来たのですわ!』って認めるようなもの!!)


1.0秒経過!


「曹操!今の光は一体なんであるか!!」


(笑ってごまかすか?・・・否!マヌケ過ぎる!『テヘペロ!!』なんて可愛らしい仕草をした瞬間、打ち首確定だ!・・・ならばこれしかない!!)



 1秒というわずかな時間を掛けて振り向く董卓!

 焦る曹操!考える曹操!必死な曹操!

 剣をしまう時間は無い!

 このまま暗殺を実行することは不可!

 大魔王から逃げることは出来ない!

 剣を隠すことはアホのすること!

 笑ってごまかすなど愚の骨頂!

 曹操!絶体絶命の大ピンチ!

 はたして曹操はこの状況を打破することが出来るのか!!


 ・・・続く

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