第28話 妖術は卑怯
500+2500=3000の兵を引き連れた劉備軍は目的地の山に到着した。
「ここが張宝のいる山か・・・しかし、この天気は一体なんだ?」
劉備は空を見上げて呟いた。
どんよりした曇り空に吹き荒れる風。加えて霧が発生しており視界がハッキリとしなかった。
(何か嫌な予感がする・・・用心せねば。)
劉備がそう考えるや否や、嫌な予感が的中した。
ここにきて朱儁から借りた兵士たちがビビり始めたのだ。
ビビり始めた理由がわからず、劉備が彼らに問いかける。
「お前たち。どうかしたのか?臆病風にでも吹かれたか?」
「劉備の大将・・・実はですね・・・。」
劉備の問いに対して、彼らはしどろもどろしてハッキリと答えようとしなかった。
その様子を見た関羽は彼らを怒鳴りつけた。
「言いたいことがあるならハッキリと申すがよい!」
「ひぃーー!!そ、それがですね・・・敵の大将の張宝は妖術使いなのです。」
「妖術使いだと?どういうことだ!説明せい!」
「この先に
朱儁の兵たちはおずおずと劉備たちの顔色を窺いながら事情を説明した。
「答えになっておらんし、何を言っているのかさっぱりわからん・・・ただ、わしから言えることは、お主たちは腰抜けの集まりだということだ。」
関羽はビビる朱儁の兵たちに厳しい一言を突き付けた。
関羽の一言で、温室で育てられた官軍の兵たちは自身の主たち同様に露骨な態度を示した。
「信じて貰えないなら結構ですよ。すぐにわかりますから。」
引き返す態度を見せない劉備たちに朱儁の兵は逆切れして、しぶしぶと鉄門峡に向かい歩を進めた。
劉備一行が鉄門峡に着くと、さらに天気が悪化していた。
また、鉄門峡からは風がビュービューと
(これはただ事ではないな。)
劉備はそう思ったが、ここで引き返しては朱儁の兵を罵った関羽に恥をかかすことになるので、退くことなく全軍に進行命令を下した。
「妖術など恐れるに足らず!全軍前進!」
しかし、劉備の勇ましい姿とは裏腹に兵たちは士気の上がらぬことこの上なし。
兵たちは足取り重く、老人のごとき緩やかなスピードで鉄門峡に突撃していった。
その様子を見た張飛が後方から怒鳴りつける。
「貴様らふざけるなよ!妖術ごときにビビッて戦が出来るか!もっと雄々しく突撃せよ!出来ぬやつは俺が首をはねてやるぞ!」
そう言って張飛は蛇矛を振り回して、兵たちの尻を叩いた。
しかし、張飛の鼓舞も空しく、兵たちの進行速度は老人から初老のおじさんの歩くスピードに変わっただけで、士気は一向にあがらなかった。
士気あがらぬ劉備軍は鉄門峡へ進行した。
劉備軍が鉄門峡へと足を踏み入れると、突如大きな笑い声が彼らを包んだ。
「見るがよい同志たちよ。死神に取り憑かれた軍がまたこの地に来おった。同志たちよ。彼らに地獄の門を開けてやるとしようではないか。」
そして、呪いのような意味不明な言葉が谷に反響して聞こえ始めた。
「目覚めよ!そして我の怒りを受け入れるがいい!裁きの鉄の門にて!!」
某将軍様のパクリの様な呪文が聞こえ始め、朱儁の兵の恐怖心はピークに達した。
「将軍だ!悪魔のような張宝将軍が妖術を使ってきたぞ!逃げるんだ!」
朱儁の兵たちは我先にと勝手に退却を始めた。
劉備たちは彼らを引き留めるよう懸命に働いたが、無駄に終わった。
「このままでは戦にならん!全軍退却だ!!」
劉備は已む無しとばかりに退却命令を下した。
退却する彼らに矢の雨が降り注ぎ、劉備軍の兵士たちを串刺しにした。
「フハハハハ!そんなちんけな軍勢で我に喧嘩を売ろうなど10年早いわ!!」
退却間際に聞こえた嘲笑を聞いて劉備は憤慨したが、どうにもならなかった。
劉備軍は張宝の妖術の前に完敗したのであった。
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