第25話 仲間ならば助けよう

 もう盧植の檻を引き連れた官軍の姿は見えない。

 劉備は超絶うなだれており、馬に揺られて頭が左右にふらふらと揺れ動いていた。


「兄者・・・」


 義弟の関羽と張飛は兄を心配していた。


(こんな兄貴の姿を見るなら、檻をぶっ壊して盧植先生を助けるべきだったぜ。)


 張飛は舌打ちをして、過ぎ去った出来事を考えていると、突然ドラの音が聞こえてきた。


「な、なんだ!何事だ!張飛!様子を見て来てくれ!」


 うなだれていた劉備もドラの音を聞いてすぐに顔を上げ、張飛に下知をとばした。


 「心得た。」と張飛はドラの鳴る方へ馬を走らせた。

 そして、目的地に着くと張飛は驚きの表情を浮かべた。

 広宗の官軍が黄巾賊に追われていたのだ。


「助けておっかさん!」


「グヘヘヘヘ!坊やたち悪いようにはしねぇから大人しく殺られな!」


「キャー!助けてぇー!誰かー!」


 官軍は情けない悲鳴を上げて黄巾賊たちから逃げまどい、黄巾賊はグヘヘヘヘ!と笑いながら官軍を追いかけまわしていた。


 (これはマズイな・・・だが愉快だぜ。)と張飛はすぐに劉備のもとへと戻り、事の次第を説明した。


 「盧植先生がいなくなった途端この有様とは・・・。何と情けない。」


 官軍のあまりの情けなさにため息をついた劉備であったが、すぐに気を取り直して軍の指揮を取った。


「皆の者!この先で官軍が黄巾賊からの追撃を受けているとのこと!彼らを助けに向かうぞ!」


「兄貴・・・官軍の奴らを助けるんですか?」


 劉備の命令に張飛は露骨に嫌な態度を示した。

 そんな張飛を劉備が戒める。


「張飛よ。お前の言いたいこともわかる。私も本音を言えば、彼らに対して『ざまあみろ』と思っている。ただ、それでも・・・それでも彼らは共に戦う『仲間』だ。仲間である以上、面白くなくとも助けねばならない。わかってくれ。」


「・・・わかりました。」


 張飛はしぶしぶ納得した。

 劉備と張飛だけでなく、関羽も内心面白くないと思っていたが、2人のやり取りを見て気を引き締めなおした。


「では全速前進!」

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