第23話 正式でなければ認められない
大勝をおさめた劉備は朱儁からお叱りを受けていた。
「お主たちが潁川の黄布賊をおっぱらってしまったので、残党共は広宗の黄布賊と合流してしまう。そうすれば盧植将軍がますます苦戦してしまうことになる。そんなこともわからんのか。」
朱儁は劉備たちの活躍をねたみ、そして、自分の無能さをごまかそうとそれらしい言い訳の言葉を述べた。
「全く、これだから田舎の私兵などと協力したくないのだ。お主たちは明日にでも此処を立ち盧植将軍を助けに行くがよい!」
そう言って朱儁は自軍の本営へと帰って行った。
朱儁のこの態度に短気な張飛が激昂した。
「あの野郎!」
張飛は朱儁を殴り飛ばすべく朱儁の本営に単身突撃しようとした。しかし、義兄2人がそれを抑えた。
朱儁の言うとおり劉備軍は私兵である。
正式な官軍ではない以上ボランティア軍扱いなのだ。
いかに高潔であろうとも、いかに崇高であろうとも、正式でなければ認められない。
劉備もそれは十分理解していた。
(我らは私兵。渡り歩くのみ。)
劉備軍は潁川で一夜を過ごした後、早朝に潁川を後にした。
「どうだ張飛?一晩寝たら怒りはおさまったか?」
「たった一晩じゃダメだ。旨い酒でも飲んで暴れねぇと怒りが収まらねぇ。」
「そう怒るな張飛。怒ってもどうにもならんぞ。」
張飛をなだめる関羽であったが、彼もまた内心では張飛同様怒っていた
「しかし、官軍のあの態度には呆れるな。洛陽にはああいう連中が沢山いると考えると漢王朝の衰退も頷ける。」
劉備は2人の会話を背中越しで聞きながら同意していた。
(先日の曹操殿のような立派な人物もいるにはいる。ただ、彼のような人物が洛陽には少数しかいないのだろう。ということは無能な輩共が中心となって官軍を動かしていることになる。・・・これではもう・・・)
劉備が国の行く末を考えていると、遠くに官軍の旗があるのが見えた。
官軍はこちらに近づいてきており、このままいくと劉備軍とすれ違う形となりそうであった。
「なんだあれは?
官軍の様子がはっきりと見え始めた時、張飛が疑問の声を上げた。
「お前たち止まれ!お前たちはどこの軍の者であろうか!」
檻車を引きいた官軍が劉備軍の前に来た時に官軍の兵の1人が止まるよう咎めた。
礼儀知らずな官軍の言葉にストレスが溜まっている張飛が大声で言い返した。
「調子に乗るなよ虫けら!てめぇらこそ何者だ!」
「貴様官軍に対し『虫けら』とは無礼であろう!」
「先に無礼を働いたのはお前たちの方だぜ!俺たちは官軍ではないが、国を思う立派な軍だ!その軍に対する礼儀が怒鳴りつけることか!」
「っ!・・・それは申し訳なかった。失礼した。」
張飛の言い分に官軍の兵が頭を下げた。
そして、官軍の兵は丁寧に自分達の事を述べた。
「我々は広宗で官軍の指揮をとっていた盧植将軍を罪人として都まで護送しているところである。」
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