第13話 恩はすぐに返そう

 義勇軍を立ち上げた劉備は立て看板を出した幽州ゆうしゅうの太守『劉焉りゅうえん』のもとへ向かった。

 幽州は北の国境にある州で昔から北方民族の侵害に悩まされていた州である。


「太守様。劉備玄徳という若者が義勇軍を立ち上げて出頭してきておりますが、如何いかがなさいましょう。」


「劉備玄徳?聞いたこと無いな・・・しかし、黄巾賊討伐のための義勇軍を立ち上げてきたとあらば会わぬわけにはいかぬな。通すがよい。」


「かしこまりました。」


 そう言って劉焉の側近は訪れた劉備のもとへ向かった。


「劉備殿。太守の劉焉様が面会して下さるそうです。こちらへどうぞ。」


「感謝いたします。では、関羽、張飛、行くぞ。」


「「はっ!!」」


 劉備、関羽、張飛の3人は側近に連れられ、劉焉と面会した。


 劉焉は劉備の凛々しい姿と関羽、張飛の服の上からでもわかる筋肉モリモリマッチョマンな姿を見て彼らを只者ではないと判断した。

 そして、劉備が自分の家系のことと大義を述べると劉焉は大いに喜んだ。

 気分を良くした劉焉は劉備たちのために宴会を開き、彼らをもてなした。



 劉備が劉焉からもてなしを受けてから数日が経過した・・・

 ついにこの時がやってきた。

 劉備の初陣の時。それは早馬に乗った1人の兵からの伝令であった。


「大変です!大変であります!大興山たいこうざんに黄巾賊が現れました!その数5万!!」


「なにぃ!5万だと!えらいこっちゃ!!」


 劉焉を含め幹部一同が驚きの声をあげた。


「劉焉様!このままではこの地が占領されてしまいます!一刻も早く軍を動かすべきです!」


 声を出したのは鄒靖すうせい将軍であった。


「うむ!鄒靖将軍よ!ただちに軍を率いて大興山に出陣せよ!黄巾賊を血祭りに上げるのだ!」


「御意!」


 鄒靖将軍が出陣のためにその場を立ち去ろうとしたその時、劉備が手を上げこう叫んだ。


「太守殿!われらも参加させて頂きとうございます!」


「おおっ!劉備殿!お主たちも参加してくれるのか!」


「もちろんです。そのために義勇軍を立ち上げたのですから。」


 劉備は営業スマイル全開で劉焉に自分たちの存在意義を告げた。


 劉備が即座に出陣を決めたのは、今後のことを考えてのことであった。

 宴会してもらったのに、危急のときに出陣の意思を示さないなど情けないことこの上ない。

 そんな劉備たちを城内の人間は役立たずだと罵るだろう。

 それを避けるために劉備は即座に出陣の意思を示したのだ。


「うむ。その心意気、超嬉しいことこの上なし!劉備軍が先陣となり鄒靖将軍と共に出陣せよ!」


「はっ!!」


 こうして百姓混じりの劉備軍と劉焉の鄒靖軍は大興山へ出陣した。

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