第二章 黄巾の乱
第12話 調子には乗らないこと
劉備が義勇軍を立ち上げる10年ほど前、
その男は稀代の秀才として知られ将来を有望視されていた。
しかし、男は就職活動に失敗した。役人になるための地方試験に失敗したのだ。
夢破れ、不貞腐れた男はニートとなって家に引きこもっていた。
そんなある日、男は気分転換に山に薬草を取りに行った。
薬草を摘んでいると、突如大きな風が吹いた。男は思わず目を瞑り、そして目を開けると目の前に1人の老人が立っていた。
「糞ニートよ。お前が山に来るのをずっと待っておった。お前に渡したいものがあるから、わしについて来い。・・・早くせんか!!」
怒鳴られたニート男は舌打ちしながら老人の後をついて行った。
老人と男は洞窟に入り奥へと進むと、そこには長机があり、その上に本が3冊置いてあるだけで他には何もなかった。
老人は3冊の本を手に取ると男に向かってこう言った。
「これは『
「・・・っていうかあんた誰だよ?こんな胡散臭い本を俺に渡すなよ。」
「よいか。乱れた世を正すためだけにこの書を使うのじゃぞ。悪用すれば天罰が下るからな。」
「おいこら!無視すんな!名を名乗れって言ってんだろ!!このジジイ!!」
「わしは
そう言うとあたりから煙が吹き出し、洞窟内が煙で充満された。
男がゴホゴホとせき込みながら、その場で
男は顔を上げて周りを見渡したが、そこには南華仙人の姿はなく、男が1人いるだけであった。
男はグチグチと文句を言いながら帰宅し、家でゴロゴロしながら南華仙人から渡された太平要術の書を読んだ。
(何だこの書物・・・意外と面白いじゃないか。)
男は書物にはまり、毎日毎日飽きることなく太平要術を読み漁った。
男が南華仙人から太平要術の書を渡されてから数年の月日が流れ、男が太平要術をマスターしたその年、国中に疫病が蔓延した。
男の住む村にも病気が蔓延しており、多数の死者がでていた。
村の人々が病気で苦しんでいるその時、男の住んでいる家の扉が開いた。
男は髪を黄色い布で整えており、数年前の死んだ目をしていた顔つきとは打って変わって、目に生気が宿った凛々しい顔つきになっていた。
男は病人の家を周り、
まあ、なんということでしょう!符水と呼ばれる薬水を飲んだ病人が元気になったではありませんか!ってな具合に男の煎じた符水の効果と
男は国を救った救世主となり、男の評判は国中に知れ渡り、ありとあらゆる階級の人が彼の弟子になろうと詰めかけた。
弟子の数は膨大となり、国の軍隊を
弟子たちは仲間のしるしとして、髪を黄色い布でゆった。
この黄色の布がトレードマークとなり、人は彼らを『黄巾党』と呼ぶようになった。
調子に乗った元ニート男は弟子たちに階級を与え、軍を作った。
そして自身は『
そして、最高潮に調子に乗った元ニート男はこう宣言した。
「蒼天已死 黄天當立 歳在甲子 天下大吉(蒼天すでに死す。黄天まさに立つべし。歳は甲子に在りて。天下大吉。)」
簡単に言うと「漢王朝の時代はもう終わり!今からは我ら黄巾党の時代だ!立ち上がれ黄巾の男たちよ!」という宣言をしたのである。
黄巾党は天下泰平のために立ち上がり、腐れきった政治を行う漢王朝を打倒しようとした。
しかし、そう上手くはことが運ばなかった。
人数が増えすぎたこと、そして、何も考えずに犯罪者などの凶悪な人たちを軍に取り入れてしまったこと。
この2つが要因となり、黄巾党は暴徒化してしまい、各地で略奪や強盗を繰り返す犯罪組織となってしまった。
男は暴徒化した彼らを制することなく自由にやらせた。男は自分がこの世を統べる神だと信じ込んでしまったのだ。神である自分は何をやっても許される。そう思ってしまったのだ。
分不相応の力を手に入れた男の情けない末路であった。
漢王朝はこの男が率いる黄巾党を撲滅するよう各地の英雄に檄を飛ばした。
「この男および、黄巾党を撲滅せよ!これは帝の意志である!」
劉備もこの激に応え、義勇軍を結成し、打倒黄巾党を大義に軍を進めた。
倒すべき男の名は『張角』。この国に混乱をもたらした黄巾党の首領である。
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