現世の僕と異世界の私。
@NAO_2577
プロローグ
「あの......
下校中、横断歩道橋を渡っていた僕を、突然誰かが呼び止める。
背後を向くと、そこには一人の少女が立っていた。
「君は.....?」
「に、2年1組の、
「____それで.....僕に何か....?」
「あの....その....せ、先輩!」
「ん?」
「その....あの....」
一体なんなんだ?この子は。
僕は早く家に帰って読書でもしたいというのに.....
そう考えていると、その少女の口から、信じられない言葉が出てきた。
「先輩、私、あなたのことが好きです!」
「......は?」
三葛 蓼。
中学3年の夏、僕は____告られました。
◇ ◇ ◇
「ほぅ、それで?なんて返したんだ?」
翌日、パンを片手にそう訊くのは同じクラスの
「_____了承....しちゃった......」
その問いに、僕はそう答えた。
そう、僕は了承してしまったのだ。
1日悩んだ挙句、さっき。
様々な可能性を考えた。
接点の無いことから考えられたのは99%嘘。
しかし、地味に頭の良い僕はこの1%をどうしても無視出来なかった。
馬鹿か天才なら無視出来ただろう。
だが.....彼女は、可愛かったんだ.....
「まあそりゃあするだろうなぁ.....新田 雪と言えば、2年で一番人気のある女子だぞ?」
「そうなのか?」
「ああ、2年の後輩が言ってた。2年男子の8割は新田の事が好きなんだとさ。」
津田はバスケ部のキャプテンだ。
この中学校はバスケ部が一番人数が多い。
故に彼の人脈は帰宅部の僕とは比にならないくらい広い。
「にしても、お前が告られるねぇ......ハァ.....」
そう言い、津田は深い溜息を吐く。
「おい、津田?」
「とうとうこのクラスで彼女いないの俺だけになったな.....」
「____頑張れ。」
「なんで.....どうしてだよぉ三葛ぁ.....お前だけは俺の親友にして唯一の非リア充仲間だったじゃねえかぁ.....俺達ずっともだろぉ?」
「お前は女子高生か......まぁ、でも逆の立場ならお前だってry_「即了承しますけどなにか?」
僕の言葉を遮って津田がそう言う。
「お前......」
「ハァ.....俺、そんなに不細工かな.....」
「____いや、そんなこと無いと思うぞ?」
実際、津田は別に不細工という訳ではない。
高身長で細マッチョ。
そしてバスケ部キャプテンときた。
顔も平均以上だろう。
何故彼がモテないのか、僕が聞きたい。
「お世辞はいいんだよ....」
そう言い、津田は僕の顔を見つめる。
「やっぱり、お前みたいに女の子見たいな顔の方がモテるのかなぁ.....」
「よせよ.....」
そう、僕は比較的中性的な顔立ちだ。
文化祭では必ずと言っていいレベルに女装させられる。
あと、津田曰く女装した僕はそこらの女子より人気が高いそうだ。
しかし僕はこの顔を好かない.....
もっとこう、津田みたいにTHE・漢って感じの顔が良かった.....
まぁ、そんな事を言ってても仕方ない。
親がくれた顔だ。
成型等で治す気もない。
「で?デートとかしたの?」
「さっき了承したばかりだぞ.....まだにきまってるだろ?」
「へぇ.......まあ、頑張れよ。」
「___ああ。」
もう直ぐで夏休みに入る。
僕達が何処まで行くのかなんて、全くわからない。
でも、僕を好きと言ってくれた彼女を、僕は____大事にしたいと思う。
◇ ◇ ◇
僕は、夏休み中ほとんど新田と一緒に居た。
海、ゲームセンター、喫茶店、プール、遊園地......
遊んで遊んで遊びまわった。
今日は祭りに行く。
今、彼女は試着室で浴衣を着ている最中だ。
彼女の浴衣姿を見るとなるとかなり緊張する。
何故緊張するのかは謎だ。
「お待たせしました。」
「!」
新田の姿に、一瞬僕の思考が停止する。
「あの.....似合ってますか?」
「・・・」
「せ、先輩?」
「あ、ああ.....」
真白な花柄の浴衣は、新田にとても似合っている。
まるで僕の彼女では無く、別世界の住民のような.....
こんな子が僕になぜ.....
新田は朴を赤らめ、俯く。
そして数秒後、顔を上げ満面の笑みで彼女は僕に告げた。
「先輩、行きましょう!」
「えちょッ」
そう言い新田は僕の腕を掴み、そのまま祭りの会場まで走って行った。
◇ ◇ ◇
僕らは祭りを楽しんだ。
金魚掬いでとった金魚を腕から下げ、たこ焼きを食べる彼女はまるで子供みたいだ。
「うおっ!?」
すると、突然僕は誰かにヘッドロックをされる。
「先輩ッ!?」
「くッ、離せって.....!」
頭を引っこ抜くと、そこには津田が笑顔で立っていた。
「津田か.....SAN値の関係で祭りには来ないと思っていたが....」
「バーカ、ここが勝負所だ。俺と同じようにしている女子に片っ端から声かけていく。」
「つまりナンパか.....」
「まあ、そうとも言うかもな。」
「あの.....知り合いですか?」
新田が入りにくそうに僕にそう訊く。
「ああ、クラスメイトの津田 勇輝だ。」
「よ、君が雪ちゃんか。はじめましてだな。」
「こ、こんばんは.....新田 雪です....」
「で?三葛」
「ん?」
「どうなったんだ?」
「どうなったって?」
僕が津田の問にキョトンとしていると、腕を掴んで向こう側に寄せられる。
「って....何するんだ!」
「だから、何処まで行ったのかって聞いてんだよ。」
小声で津田がそう訊く。
「......何処までって.....そりゃあ.....」
「______キスはしたのか?」
僕は無言で首を横に振る。
「まだそこまで行ってないのかよ......」
「それどころか.....手すら繋いでない......」
「ハァ!?」
「!?」
突然大きな声を出したせいで、周りの人が此方に注目する。
「あ、えっと何にもないです。」
そう言うと、再び僕に向き直り、
「いいか、今日中に絶対進展しろ。絶対だぞ。もう少しで花火が上がる。そこがチャンスだ。いいな?」
「あ、ああ....」
僕は新田の元へ戻った。
「何を話していたんです?」
「いや、宿題の話だ。それより、良い所を知っているんだ。そこまでいかないか?」
「行ってみたいです!」
「じゃあ、行こう。」
いいか、三葛 蓼。
津田が言うように此処がチャンスだ絶対に失敗するんじゃないぞ。
あの場所で、花火をバックにキ、キ、キスを.....する......
そ、そしてそこへ向かうまでに手を繋げば完璧だ。
絶対に成功させるんだ、いいな?
◇ ◇ ◇
石段を上がり、鳥居を潜るとそこは神社だった。
「神社....ですか?」
「ああ、もう少しで.....」
ピュ〜
その音の後に、炸裂音が響き、綺麗な花火が姿を見せる。
「綺麗.....」
「___少し遠いけど、人が全くいない。絶好の場所だろう?」
「はい!」
目を輝かせて花火を見つめる彼女を見て、僕は唾を飲み込む。
よ、よし。
確かに、確かに僕はヘタレが故に手を繋げなかった....
しかし!!これは、これだけは成功させるんだ!
よし、気を引き締めろ、三葛 蓼!
僕は深呼吸をし、新田に歩み寄る。
「新田。」
「?」
「そ、その.....」
「先輩。」
「ん?」
「少し、付き合ってもらえますか?」
「え?あ、ああ。」
僕は新田について行った。
◇ ◇ ◇
来たのは公園だ。
僕ら以外には誰もいない。
「先輩......一つ、聞きたいことがあります。」
「___なんだ?」
なにか新田の様子がおかしい....
「先輩は、私の事が好きですか?」
「ああ、もちろんだ。」
「命を捧げられるくらいに?」
「え.....?」
今、彼女はなんと言った?
「ねえ、せんぱぁい.....」
そう言い、新田は僕に歩み寄る。
しかし、明らかに様子がおかしい。
「に、新田?どうしたんだ....?
「どうしたって....私は正常ですよぉ?」
「違う.....新田はそんな子じゃない......君は、一体誰だ.....?」
「誰だ?って酷いですねぇ、私は新田 雪。あなたの彼女ですよぉ〜?なんてねー」
心臓がバクバクと鳴り始める。
「君は新田じゃない.....誰なんだ.....?」
「ふふふ.....さあ?誰でしょう?」
不気味だ。
なにがおこって.....
「!?」
突然、新田の肌が青紫色に変色し始め、髪も黒から朱色に変わり始める。
そして爪がのび、腰からは尻尾のようなものが生え始めた。
服は破け、真っ黒何かがその代品のように身体中を覆っている。
「嘘.....だろ.....?」
異常だ異常だ異常だ。
こんなことがあるはずない.....
なんだ?どうした?なにが起きている?
目の前の光景に疑問しか湧かない。
「あーあ、面白かったぁ〜。」
「ッ.....」
「あなたとってもメロメロだったね?滅茶苦茶面白かったよ。ホント、なんでバカってこう言うのに引っかかりやすいんだろう?」
「お前は....一体.....」
「う〜ん、そうねぇ......まあ、妖精さんということにでもしときましょうか?アハハ。」
ヤバい。これは絶対にヤバい。
「もうちょっと遊んでたいけど、人に見られると私もマズいからぁ.....もう終わらせるね?」
そういうと、尻尾が巨大な口のように開く。
「それじゃ、生きてればまた会えるかもね。じゃあまたね、先輩。」
僕は腕で自分を庇うようにしてそれを耐えようとし、瞼を強く閉じた。
◇ ◇ ◇
「ぐ.....」
恐る恐る目を開くと、そこは全く別の場所だった。
「なんだ.....ここ.....これは.....車?」
僕は一台の車....いや、廃車という表現がただしいか....
取り敢えずその上で自分を庇うようにして腰をついていた。
しかし、その廃車は僕が乗っている一台だけじゃない。
視界の全てを大量の廃車達が覆い尽くしている。
「うッ寒ッ!」
急に寒気がし、僕は肩を抱く。
すると、自分の息が凍り、白くなっている事に気が付いた。
「冬.....?」
辺りを見回すと、視界一杯に広がる廃車たちが囲むようにして建っているもにがある。
中規模の廃工場だ。
辺りをもう一度見回すが、あるのはそれだけしかない。
「____行くしか....ないか。」
僕はそこへ向かった。
◇ ◇ ◇
「____寒い。」
ここも中々に冷える。
「おーい!誰かいませんか!?」
返事は無い。
____参ったな。
それにしてもここは一体......?
いや、まず何故僕はこんな所にいる?
どうしてこんな所に来た....?
____思い出せない.....
一体何がどうなっているんだ?
わからない.....
そう考えながら、一歩踏み出した次の瞬間____
「ぐあッ!?」
いきなり何者かに後ろからのしかかられ、マウントを取られる。
「誰だッ!?」
上に乗った者は低い声でそう訊く。
「こっちの台詞だ!どけって....!」
「ふざけるな!」
そう言い、僕の腕を行けない方向に押し、抑え込む。
「どうやってここに来た?どうやってここを見つけた?お前は誰だ?何処からの回し者だ?何が目的だ?言え!」
「くッ!だから何の話だ!」
「話さないのなら....!」
そいつは僕を仰向けにし、腰から短剣のようなものを取り出して振り上げる。
僕は目を強く閉じる。
しかし、何も起こらない。
恐る恐る目を開けると、振り下ろされた短剣は、僕の顔の真ん前で止まっていた。
乗っていた者を見ると、とても驚いた表情をしている。
それは僕も同じだった。
僕の上に乗っていたのは、一人の少女だった。
だが、フードを被っていても彼女の顔がハッキリと分かる。
そこには、最も見慣れた顔があった。
その少女は、僕と瓜二つ。
全く同じ顔をしていたのだ。
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