第1章 鳥

第3話 はじめまして、そして・・・

ハナミが転送をミスしたことなどつゆ知らず。ハナミと別れ、転送させられた誠一。


現在、誠一は暗闇の中を落ちていた。


「真っ白の次は真っ黒かよ」


先程からこのままで、変化が全く無い。

無事、異世界に行けるか心配になってきた。


ついでに言えば、あの残念神が担当していたのが、誠一のネガティブな方向にへと拍車をかけていた。


もしずっと不思議空間から抜け出せなかったら、もしハプニングが起き死んでしまったら、もし―――

そんな不安ばかりが誠一の頭を駆け巡った。




「まあ、いいや。料理のこと考えよう」


駆け巡ったが、そんな不安はすぐに無くなる料理バカであった。

誠一は異世界における料理計画について思考することにした。


〜それから数時間後〜


思いにふけっていると、微かに光が見えてきた。


「お、やっと出口か。長かったなあ」


代わり映えしない黒一色の風景に変化が訪れ、誠一は少しだけほっとする。

考えを一旦止め、出口に備えていると、誠一はあることに気づいた。

自分の胸が騒いでいるのだ。

料理の事だけでなく、未知なる世界を冒険することに対し、無意識の内に興奮していたのだ。


「意外に俺も男ってことか」


口角を上げ、どこか嬉しそうに言葉をこぼした。

誠一が驚き、笑っている間にも、光が徐々に大きくなりつつ迫ってきている。

光の先に俺を待ち受けているのは、一体、何なのか。

誠一は早まる気持ちを抑えることができず、大きく踏み込み光へと飛び込んだ。



「ここから俺の時代が始まるぜ!ハハハハハ!」



テンションが最高潮に達し、調子に乗った台詞を思わず口にしていた。

誠一を包んでいた光が晴れ、目に入り込んだ光景は、



「・・・また真っ白?」



白い世界であった。

まさか戻ってしまったのかと思いながらも、とりあえず不時着しないよう足をつけて―――



ズボッ!



「へ?」



足をつけようとしていた地面が抜け、予想外なことに思わず間抜けな声が出てしまった。

そのまま重力に従い沈んでいき、白の地面に覆われた。


―――いや、違う。これは地面じゃない、微細な水滴だ。

しかも、この異常な寒さ。


突如、ある考えが誠一の頭をよぎった。


「まさか、ここは地面じゃなくて・・・!?」


言葉を口にした直後、白のベールが取り払われた。

そして、誠一の疑問に対する答えが目の前に広がっていた。



そう、誠一は上空4000mの高さに転送されたのだった。









ああ、俺の時代、短かったな

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