ファンシフル・ワールド
@Yuji-Nagamoto
プロローグ
真上の青い空とは対比的に暗い地面、荒野。
そこに立つ巨大なモンスター、グリーンミノタウロスは眼光を鋭くし、一人の男を見つめている。
その男の名は『レン』。
レンは、今いる危険地帯に出現するモンスターの中でもとりわけ手強いグリーンミノタウロスと一人で対峙している。
普通はパーティを組んで挑むべき場所、モンスターに一人で立ち向かっているのだ。
「後はあいつだけか。」
先程までは他にも二体の巨大なモンスターがいた。そいつらはどちらもグリーンオーガ。これもまた手強いモンスターだ。どうやらこの地帯では強いモンスターはみな緑色らしい。
レンはその二体を片手剣によっていともたやすく倒し、見事レアドロップまで手に入れて見せた。敵のドロップアイテムは早急に奪わなくてはいけない。レアドロップなら通常の数倍だ。
敵モンスターは倒すとすぐに消滅してしまう。
「グルルオオオオオオ!!!!!」
「チッ! 落ち着けよ。」
モンスターのうるさい雄叫びにレンは腹を立て、そろそろ倒すべく右手に剣を構える。
すると、背後から何者かが近づいてくるのを感じた。間違いなくモンスターだとレンは確信した。
「すぐお前のもとに行くから大人しく待ってろよ!」
背後の何かに無理なお願いをした後、レンは剣に炎を纏わせる。このくらいなら詠唱も要らないのでよく使っている。
タッとその場からジャンプする。もちろん普通のジャンプではなく、グリーンミノタウロスの背丈を超えるくらいの高さだ。
流石に敵も反応できず、手に持った巨大な斧のようなもので無理矢理レンを叩き落そうとする。
だがレンもそれほど甘くはない。一点に集中させた暴風の魔法を詠唱し、斧を押す。そして敵はあっという間にバランスを崩す。
「よしっ! もらった! ……ん?」
懐に飛び込み腹を突こうと突撃する。そして剣を突き出すが・・・
カキイイイイイイイン!
見えない壁に阻まれた。どうやら結界のようだ。
「さっきのモンスターか。」
というレンの予想はあっていたようだ。グリーンミノタウロスの横には、緑色のスライム、グリーンスライムがいる。
「だからなんで何でもかんでも緑なんだよ!」
さっき分かった通り、グリーンスライムは結界の魔法を習得している。
だが、レンにそんなことは関係ない。
レンはグリーンスライムに向かって飛びかかる。グリーンミノタウロスは転倒して起き上がれないので助けには行けない。
当然また結界が張られるが、気にせず飛びかかっていく。
キンッ!
結界が両断された音だ。そして直後、グリーンスライムの体も真っ二つになった。
レンの一振りはそれだけ強力だったのだ。
消滅しそうになり、半透明状態のグリーンスライムから、スライムの粉という錬金の素材となる粉末をとり、再度グリーンミノタウロスを見る。
もう起き上がっていたようだ。興奮しているようで、鼻息が荒い
「じゃあ次はと……。」
剣に冷気を纏わせ、今度は足元へと走る。
グリーンミノタウロスによる斧の一撃によって大地が少し崩れたが、支障が出るほどでもないし、後に修復されるので関係ない。
そして――――――
ズブッ!!
と足に剣を刺した。冷気を纏わせていたということは、体全体が凍っていくことになる。レンのような長けたものに限るのだが。
敵はみるみるうちに凍ってゆき、最終的にはピクリとも動かなくなった。体が半透明になってゆく。
ドロップアイテムは角なので、急いで跳躍して素早くとった。その後、グリーンミノタウロス完全に消滅した。
レンはこのような世界で旅をしている。ひとまずこの旅の目的を見つけようと思っているところだ。
これまでの戦闘はなかったかのように修復されていく空間を見ながら、レンはここに来た時のことを思い出した。
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