超人格闘大会 組み合わせ抽選っ!! の巻

 テロリストの乱入は超人達の活躍でたった数分で解決した。結局テロリストの目的はなんだったのだろうか。突然現れて直ぐにやられてしまったのでそれを理解する術はない。


 会場は何事もなかったかのように組み合わせ抽選に入り、ついに第一回戦の組み合わせが決定した。

 では、会長のアナウンスと合わせて紹介していこうと思う。


「第一試合! ジュリアVSセルフィー!」


 会場からどよめきが沸き起こる。一回戦から地球人は出ない。ロボットと宇宙人の戦いだ。


「セルフィーさん。よろしくお願い申し上げます」


 丁寧にお辞儀をするヒューマノイド、ジュリア。


「よろしくぅ! 手加減しないからねぇ!」


 屈託無く笑う金髪宇宙人セルフィー。立派な八重歯が口元から覗く。


「続いて第二試合! 一文字剛毅VS高山まこ! 」


 あの突如現れた女子高生力士も参加するようだ。


「女だからって手は抜かねえぞ!」


 拳を向けて睨みつける一文字。

 高山まこはといえば、怖気づいたように身を縮こませている。


「えーっと、極竜山! 私こんな大会出たくないんだけど……ってちょっと!!」


 ブツブツと独り言のような事をのたまっていたが、突然ビクッと身を反らせると、脱力したようにだらりと首ももたげた。

 そして、その俯いたままの姿勢で肩を震わせて笑い出した。


「ふふふ、マコや。優勝すればなんでも願いが叶うのじゃ。ワシを成仏させればよかろう。ワシも強い相手と戦えればそれで満足じゃ」


 つい先ほど怖気づいていた娘と同一人物とは思えないほど、自信に満ち溢れた顔で一文字を睨む高山まこ。話し方も古臭い。

 そうか、江戸時代の力士が取り憑いている、とか言ってたな。


「そして、第三試合、王城スバルVS藻部野 凡人!」


 まじか! 俺は一人ショックを受けた。だってあの魔族と糞野郎が戦うのだ。絶対に魔族のスバルが勝つだろうし、凡人は赤子の手を捻るように簡単に殺される気がするぞ。


「貴様が最初の相手か。ふん」


 吊り上がった瞳で一瞥しただけで控え室へ戻っていくスバル。

 藻部野は異世界に転生した時は最強だったらしいが、元の世界に戻ってしまえばその能力は使えない。つまり、この世界では俺と同様のただの凡人なのだ。

 あわあわと情けなく立ち尽くす藻部野の表情に生気はない。


「おい!藻部野!逃げるなら今のうちだぞ!」


 俺が冷やかしてやると藻部野は急に思い出したように表情を取り繕って、わざとらしい大声で笑い始めた。


「がっはっは。肩慣らしには丁度いい相手だぜ!」


 引きつった笑顔のまま、藻部野も控え室へ戻る。


「第4試合、箇条明日菜VS高木道弘!」


 お、俺だ! マジかぁ。魔法少女と対決か。先日、箇条明日菜が放った魔法を思い出す。

 メテオサンダー。カミナリ系の攻撃魔法。屋上のフェンスを一瞬でぐしゃぐしゃにするような殺人魔法。

 超人的凡人の俺に勝てる手などあるだろうか。


「高木先輩、よろしくお願いします!負けませんよ!」


 決意を大きな瞳に宿して箇条明日菜が頭を下げる。

 買い被らないでほしいな。俺が君に勝つ可能性など、1パーセントもないのだから。

 なんだか、戦いの事を考えていたら、お腹も痛くなってきた気がするよ。

 よし、決めた。藻部野の野郎が魔族に敗北した時点で棄権しよう。

 もし、万が一、藻部野が魔族に勝つというのならば、命をかけて俺も魔法少女と戦おう。



「第5試合! 影野翼VS草薙さくら!」


 あの殺し屋だ!

 さっきテロリストをバッタバッタ倒したあの高校生殺し屋の影野が抜刀少女の草薙さくらと対決するのか。

 銃対剣。こりゃ見る分には一番地味そうだけど、面白い対決になりそうだ。

 でも、どっちか死ぬんじゃないか?


「もう、殺し屋家業も飽きてきた所なんでね、優勝して、足を洗わせてもらうよ」


 つまらなさそうに影野が呟いた。


「刀龍会館の再興のため、負けられないわ!」


 腕を組み、宣言するさくらも、負ける気は更々ないようだ。


「さあ!以上が一回戦の組み合わせでございます! それと、今回のヒーラー(救護班)の紹介も致しましょう!」


 救護班? 初耳だ。


「天使の佐々木さんです!」


「あ、あのぅ。駆け出し天使の佐々木ですぅ。よろしくお願いしますぅ。みなさんが怪我したり、死んじゃったりしたら、応急処置ってことで回復させていただきますぅ。まだまだ駆け出しなので、多少の後遺症は残るかもしれませんが、死ぬよりマシだと思うんで、文句とかは言わないでくださぁい」


 水色のショートカットに、白いノースリーブのワンピの背中からは純白の翼。テヘッと舌を出して笑う様はかなりの美少女ではあるが、責任感とかが気薄な雰囲気がして、少々不安になる。

 てか、もう天使とかが出てきても大騒ぎしないくらいに、この学校に関わる変人共に慣れてしまった俺である。それはそれで嫌だなぁ。



「さぁ!いよいよ!第一試合から、スタートです!!」


 会長の叫びにも似た開会宣言と共に場内からは地鳴りのような雄叫びが上がる。


 始まる!

 超人格闘大会が、始まるのだ!

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