To→蛇@巨人によろしく。

サンジ関数

第1話 告白の裏側

 バルトニアの暖かい陽射しが草を照らし、風がそれを揺らす。そんな中、僕はただ嗚咽を挙げて彼女の告白を聞いている。

「…私はもう15歳になりました。そして、『カタリアの血』をもって『巨人の巫女』としての使命を果たします。…そんな顔しないでフィー」

柔い手のひらが両の頬に当てられるが涙が止めどなく溢れてくる。心なしか風が強くなった気もする。

「しかし、…しかし何故イデア様が『儀式』を行わなければならないのですか!!!」

自分より一つ小さい少女にみっともない。そんなの僕が一番分かっている。

「兄弟の居ない私にとって貴方は幼い頃から、私にとって…私にとっての『兄』の様な存在でした。貴方を一人にするのは心苦しいけど、『儀式』は『カタリアの血』に選ばれた者の定め、私も叔母と同じ『巨人の巫女』としての道を行きます」

「ですがっ!!!ですが…そんなの酷過ぎますよ」

頬に当てられていた手を、強く握る。昔のままの小さい手を。

「今日は風が強いですねフィー。昔を思い出します、あの嵐の日を…」

イデア様の瞳が遠くを見つめている。

嵐の日、あの狂人『血飲みの鎧』にイデア様が『血の保有者』として選ばれた日。あの日から自分の力の無さを呪って10年過ごした。

思えばあの日から、イデア様の苦悩は始まった。

唇から『熱』が湧き、血が流れる、醜い醜い『毒の血』が。

「ほら、言ったそばから怖い顔して。ほらぁ、にこってしてみて、いつもみたいに笑顔で。」

「こ、こうですか?」

「まだまだ怖い顔してる。貴方は笑顔が一番よ…ほぉら、にこって。」

どうして笑顔一つで僕の内をこんなにも暖かく出来るんだろう、この人は。何て答えはとっくのとうに出ている…でも、これは抱いてはいけない感情だってこともとっくのとうに出た答えだ。

『貴族』とそれに従える『騎士』、だから僕は「行かないで」の言葉を飲み込んだ。

「どうか貴女に神のご加護がありますように」

「えぇ、貴方にも神のご加護を。『バルトニアの英雄』の名を継ぐ者よ」

 彼女の望んだ笑顔の裏に『復讐』の二文字を浮かべ、3日後の『嵐の日』に現れる薄汚い鎧を涙で歪めた。


 「命に変えても、彼女に禁忌は犯させない。

呪われた行いは、呪われた僕が…」

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