第15話

 足踏機織機が完成したので仕事を再編する。


 女達には糸を作る事、足踏機織機を使って布を作る事、布から服を作る事。この3つを新たな仕事として班を作成して任せることにする。炊事と洗濯する班もあるが、女の子達もこちらを手伝うのでなんとかなる。

 男は村の拡張工事だ。森を切り開いた場所に道を作り、モルタルを敷き詰めさせる。道が完成すれば車輪をつけたソリをブラッドウルフ達に引かせて輸送がしやすくなるからだ。

 男の子達は数匹のブラッドウルフと一緒に貝殻集めだ。ソリをつけてそこに貝殻を沢山入れさせるようにした。

 警備班はブラッドウルフとバジリスクに頼んであるので問題なし。

 各班のリーダーを決め、能力による査定を行って報酬を支払う。子供でも例外なく給金として割符を与える。

 最後にリーダーの統括者として女性や女の子達はエミリア、ステラに任せる。女はエミリアで、女の子はステラだ。

 男と男の子は俺が統括し、基本的に仕事中は別れて過ごさせる。

 フランツィスカとアナスタシアはフランツィスカが店で、診療所をアナスタシアに担当させる。どちらも同じ店舗で行わせて護衛をしっかりとつける。フランツィスカが危ない事にならないようにアナスタシアに見守らせる意味合いがある。


「という感じにする」


 現在、俺達がやっているのは大人の皆と俺の嫁達だけを集めた会議だ。全員で炎を囲んで座っており、胡坐をかいて座る俺の膝にフランツィスカことフランとステラが座っている。左右にはエミリアとアナスタシアが座っていて、位置の関係的にここが上座となる。

 そんな嫁達を侍らせた状態でほぼ決定事項を告げた。


「意見がある者はいるか?」


 一応、有用な意見があれば聞いてやるが、基本的にこのままの方針にするつもりだ。


「サボりたいです」

「エミリアの意見は却下だ。他は?」

「あの、自由時間はありますか?」

「休みの日とかも欲しいです」


 男性と女性が質問してくるので、しっかりと教えてやる。


「警備班以外は七日に一日を休息日とする。それ以外は夕食を終えてから寝るまでが自由時間とする。夜に石灰を作るために火を焚くので、その間に好みの異性に声をかけたり、娼館に行ったりは好きにしろ。俺の女達に手を出さない限り、同意があればとやかく言わん」


 俺の左右に座るアナスタシアとエミリアの肩を抱き寄せて、四人に手を出さないように告げてやる。

 フランとステラは嬉しそうにスリスリと俺の胸に頬ずりしてくるが、アナスタシアとエミリアはどこか呆れた表情をしている。


「丸一日休みがあるんですか?」

「その予定だ。当然、ローテーションを組むので全員が一度に休む事はない。その辺はリーダーが調整してくれ。

 休みを与えてくれなかった場合は訴えてくれれば嘘を喋れなくする薬を使って真実を確認し、事実なら処罰する。

 これは喧嘩などの場合も同じだ。トラブルがあれば伝えるように。女の場合は俺に相談できない事もあるだろうから、アナスタシアやエミリアに相談するように。子供達に関してはステラに伝えてくれるように通達してくれ」

「頑張る」

「私は駄目なのですか?」

「フランはお店で居ないし、お店で忙しいだろう。だから、手が空いている時にアナのお手伝いを頼む。アナと一緒なら相談に乗っても大丈夫だ」

「わかりました」


 過保護かもしれないが、これでいい。大人の女性はフランが俺にどういう事をされているかも理解しているので、子供の外見だがそっち方面の相談も普通にできる。アナに関しては彼女達は元の年齢も知っているはずなので大丈夫だ。


「私の仕事はなんですか? できれば相談受付だけがいいです」


 嫌そうな顔をしながら、上目遣いで見てくるが、心を鬼にして答えてやる。


「服のデザインとかできるか? できれば服を作って欲しいが……」

「無理です。デザインは可能ですが、そこまでの裁縫技能はありません」

「あ、あの、私はできます」

「私も服を縫う事ぐらいなら……」

「なら、エミリアはデザインを作成して彼女達に伝えるように頼む」

「なんで私が……」

「下着とか必要だろう?」


 可愛い下着や衣服を身に着けたエミリアやフラン達、嫁達はかなり可愛いはずだ。想像するだけで興奮してくる。


「あ~確かに必要ですね。それに言外に言われた言葉も理解しました。私もできれば可愛い服は着たいですしね」


 俺の一部に冷たい視線が注がれるが、エミリアも流石に同じ服をずっと着たいとは思っていないようだ。何せ、今の服は学生服だしな。

 それもボロボロになっては修復薬を使って無理矢理直しているような現状だ。この薬はかなりランクが高いので勿体ないのだが、着る物がないし、想い出の品だろうから使っている。可愛いデザインだから、学生服を廃棄するのは俺もエミリアも嫌だ。


「本も欲しいですが、まずは服や下着……衣類から解決しましょうか」

「頼む。俺は村を街にするために努力する」

「わかりました」

「私は鑑定を使って診断し、フランの店から薬を貰って治療すればいいのね?」

「相談と共に頼む」

「了解よ」


 エミリアとアナ、フラン、ステラはこれでいい。土木工事は土魔法が使えるアウリールに任せる。


「アウリールは道の作成。ポメロは男共の管理を頼む。基本的に切り倒した木を運んだりするだけだ。戦闘は護衛に任せればいい」

「かしこまりましたボス」

「よし、これでだいたい決まったな」

「先輩はどうするか具体的に聞いていませんよ?」

「俺はこの辺りを調べてくる。ステラ達が狩り出してくれているはずだから、安全だろうし護衛もつける。最低限、次の防壁を作る場所を決めないといけない。どこまでエミリアに切り倒してもらうか決めないと、作業が滞るだろう」

「え、それも私がやるんですか?」

「俺がやると腐り落ちてしまうからな。鉄の斧でもあれば別なんだが……」

「仕方ありませんね。気晴らしにはなるでしょうし、やってあげます」

「助かる」


 聖剣による伐採が一番効率がいいから、仕方がない。後でお酒をやろう。


「あ、お兄ちゃんの護衛はどうしますか?」

「要らんだろう」

「駄目です! お兄ちゃんにもしもの事があったら困ります!」

「ん。とっても困る」

「確かに護衛は必要ですね」


 フランやステラ、エミリアも護衛が必要だと訴えかけてくる。それに村人達も同じだ。彼等からしたら生命線である俺に死なれたらかなり不味い事になる。薬を握っているというのはそれだけに重要だ。


「だが、ブラッドウルフ達の数はそこまで居ないからな……」


 ブラッドウルフ達は色々な面で活躍してくれているので、これ以上引き抜く事は不可能だ。

 そもそも不老不死であり、菌を操る俺にとって護衛は必要ない。居なくなる事は……あり得るか。殺される事はなくてもm攫われる場合もあるか。こう考えると確かに護衛は必要だ。


「居るじゃないですか。ピッタリの護衛が」

「誰だ?」

「バジリスクですよ、バジリスク」

「アイツはでかすぎるだろ」

「人化させればいいんですよ。即死と石化の魔眼を持っていますから、とても使えるはずです」

「確かにそうね。見ただけで相手を殺すか無効化できるのだし、護衛としては最適よ。どうせこの島に敵しか居ないでしょうし、殺してしまうのもありよ」

「味方になってくれる存在も居る可能性はあるぞ。まあ、バジリスクは蛇だからピット器官もあるはずだ。目を隠しても大丈夫だろう」

「じゃあ、バジリスクは人化させるという事でいいわよね? 正直、大きすぎて物を運ぶ時は迂回しないといけないから、寝る時だけでも人化してくれていると助かるの」


 大きすぎて道を塞ぐから邪魔になるな。夜の警備を頼んでいるから、昼は眠っている場合も多い。そうなると迂回しないといけないし、寝返りに巻き込まれるとそれだけで骨折したり、死んだりする場合がある。


「本人の意思を確認してからだな。とりあえず、聞いてから護衛にするかどうかだな」

「先輩に絶対服従していますから大丈夫でしょう」

「アレよ。女の子なら手籠めにしてしまいなさい」

「何を言っているんだ」

「正直、私達だけじゃ、ご主人様の相手は大変なのよ。体力はご主人様の方が多いし、体格の違いが凄いから」

「確かに私達が楽をする為にも少し増やしますか」

「二人共……」

「家族が増えるのは賛成です」

「ステラはどっちでもいい」


 どうやら、ステラとフランも賛成のようだ。二人共……いや、四人共にかなり負担をかけているのは事実だし、仕方がないか。

 しかし、村人の女性からは立候補者は居ない。かなり優遇されているのだが、やはり体格差がかなりのネックなのだろう。それに四人の叫び声は聞いているだろうしな。


「どちらにせよ、本人の意思確認だ。そもそも女かどうかもわからないしな」

「大丈夫よ。性転換薬とかあるでしょ」

「女にしてしまえば問題はありませんね」

「鬼か!」

「バジリスクさんは女性で間違いないですよ?」

「フランは知ってるの?」

「名前をつける時に聞いていますから」

「名前あったんだ。知ってた?」

「知りません」

「知らないな」


 どうやら、フランが勝手に名付けをしていたようだ。別に彼女に管理を任せていたので構わないが。


「なんて名前なんだ?」

「リクちゃんです」

「リクか」


 バジリスクから取ったのだろうな。


「バジリスクだから……?」

「それもありますが、陸の王様みたいに大きくて強いからです!」

「なるほど、納得できるな」

「確かに即死攻撃持ちで巨大となると、陸で王様といえます」

「バジリスクって蛇の王様だから間違いじゃないわ」

「受け入れてくれて良かったです」


 バジリスク改め、リクは不老不死で石化などを無効化した状態で考えると、単体戦力としてはステラと同じか上だろう。アナは呪術を防がれたら勝てないから微妙。エミリアと俺は勝てる。

 こう考えるとだいたい三番目の強さだな。前提条件がおかしすぎるんだが、それでも三番目となるとかなりの強さだ。何せ上は聖剣二本や薬と菌を扱うチーターだからな。


「とりあえず、話をしてくる。フラン、ついてきてくれ」

「わかりました」


 夜なので活動しているはずだ。今から行っても問題は無いだろう。


「あ、行く前にお酒をお願いします」

「そうよ。皆、楽しみにしているんだから」


 全員が期待に満ちた目をしている。今日は宴会をする予定でもあったので、子供を寝かしつけてからこうして大人だけで集っているわけだ。


「飲み過ぎて明日に響かないように。もし二日酔いとかになったら、次の宴会は欠席だと思え」


 全員がこくこくと必死に頷きながら、器を掲げてくる。それを無視して大きな樽にたっぷりのお酒を入れてエミリアとアナに配らせる。ステラは一応、甘いジュースの薬だ。薬効は栄養剤や免疫力を上げる物なので飲んでも大丈夫だ。







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異世界で満喫するために必須なチートは薬だと思われる。 ヴィヴィ @228177

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