第8話



 フランツィスカ・ステルヴィア





 お腹の奥底から響いてくる鈍痛で目が覚めます。身体はだるくて疲れ切っていて重く、起きたくないです。それでも痛みのせいで寝ることもできないので、目を開けます。

 眠たいのを我慢して目を開けると、夫であり、ご主人様でもあるお兄ちゃんの、私よりも一メートル以上大きな身体がみえます。左を向けばお兄ちゃんの腕を枕にして寝ているエミリアお姉ちゃんがいます。右を向けば私と同じようにお兄ちゃんの上で寝ているステラの姿が見え、その向こう側にエミリアお姉ちゃんと同じようにお兄ちゃんの腕を枕にして寝ているアナの姿がみえます。

 昨日の夜伽は昼間に何度かしていたようで、地獄みたいに激しくはなく、気絶したら許してもらえたみたいです。酷い時はお兄ちゃんの身体で押し潰されながら、お兄ちゃんが眠ってしまっている時があります。その時は重すぎて私とステラでは身動きが取れず、とっても苦しいです。エミリアお姉ちゃんかアナが起きてこないとどうしようもありません。下手をしたら、死んじゃっている可能性すらあります。私達が不老不死なので大丈夫ですけど。夜伽に関しても不老不死じゃない限り、絶対に死ぬか壊れています。それぐらい体格の差があって、お兄ちゃんのはおっきくて大変です。痛み止めが切れ、痛みで跳ね起きるぐらい大変です。


「……ん……おはよ、う……」

「すてら、おはよぉ~」


 起きてきたステラも痛そうに顔を歪めています。多分、私も同じです。これでも随分とましになりました。最初はもっと酷くて、朝は泣き叫んでいました。今では薬が効いてきた夜伽の最初の方だけ泣き叫んでいます。最後の方になると気持ち良くなるのですが、その時には薬が効きすぎて意識なんて保ってられなくて凄い声をだしています。


「フラン、さむい……」

「です」


 地底湖のあるここは気温が低いのに、私達は全員が裸なのでとても寒いです。ただ、寒さよりも痛みをどうにかする方が大切なので、寝ているお兄ちゃんの筋肉の塊である身体を移動して、口付けをします。舌で唇を舐めていきます。


「ステラちゃん、てつらって~」

「ん~」


 痛いのを我慢しながら、ステラちゃんと協力してお兄ちゃんの口を開いて舌を入れて口内を舐めまわします。ぬるぬるの舌と舌を絡めるのは気持ちがいいので、唾液をたっぷりと送り込みます。

 そのままキスを続けてお兄ちゃんの唾液がでてきたら今度はそれを飲み込んでいきます。するとお腹の中から響くとっても痛い鈍痛が結構収まってきます。お兄ちゃんの体液は痛み止めと体力を回復する薬になるように常にしてもらっています。これがないと辛いです。

 ベッドから少し離れたところに薬が置いてありますが、それを取りに行くだけでも辛いのです。ちなみにもう一つ、最終手段があるのですが、それは苦くて疲れるし、苦しいのでお兄ちゃんに頼まれない限りはやりたくないです。


「ステラちゃん、おすそわけれす~」

「ん~」


 二人でキスをしてお兄ちゃんの唾液をステラにもあげます。二人でペロペロしていると、アナも起きてきました。アナは私達をみるなり、呆れたような表情になってからすぐにお兄ちゃんにキスをして唾液を飲んでいきます。

 私とステラは凄く大きなベッドから出て、用意してあるコップに注がれたお薬を飲みます。これで完全に痛みの原因が治療されて痛みが引きます。それに目が覚めて、身体のだるさがなくなって朝から元気一杯になります。

 普段から痛み止めと媚薬の常用は駄目だって言われているので、こんなふうに辛い思いをしないといけません。でも、これは罰だから仕方ないです。

 ステルヴィアのエリザベートお姉ちゃんがお兄ちゃんやアナ達に酷いことをしていたのは知っています。鞭で身体を叩いたり、肌を焼いたり、爪を……思いだすだけでも恐怖で身体が震えてくるようなことをしていたのです。なので、お兄ちゃんが恨むのは当然です。それに私は自分が拷問されることを知りながら、アナとステラを助けるために奴隷になることを受け入れたのです。エリザベートお姉ちゃんからお兄ちゃんは二人を助けてくれました。その後で私達に妻になるか、奴隷になるか、または死ぬかを聞かれたので、妻になることを選んで今は前よりも自由にやりたいことをやっています。

 夜伽の時以外は優しく、本当に可愛がって愛してくれているのがわかります。あのままだと死ぬしかなかった私達にとっては、お兄ちゃんとの出会いは幸運でした。

 それにアナちゃんも言っていましたが、凶悪なモンスターが住んでいる無人島に漂着した私達にとって守ってくれる人が絶対に必要とのことです。

 その点、お兄ちゃんは優良物件らしいです。不老不死のお薬がなくても、すぐに死に直結する毒や病を防いだり、治療するお薬を作れるからです。そのお薬を使えば水分や栄養だって補充できます。無人島で生活する上で必要な物を全て持っていると、語っていました。

 続けてアナちゃんに絶対に逃がしたり飽きられたりしたら駄目だと言われました。例え、どんなに犯され、痛くても耐えるようにとも、泣きながらお願いされました。

 例え船が手に入って逃げられたとしても、私達は不老不死になっていて、追ってこられて暴れられたら軽く街や国が滅ぼされるそうです。どんな方法かはわからないけれど、他の人に迷惑もかけられないので、このままでいいと思います。私はお兄ちゃんのことが嫌いじゃないです。ステラちゃんやアナちゃんにひどいことをするするのは止めてほしいですけど。

 そう話すと、アナちゃんは安心したようです。それにこうも言っていました。

 不老不死になった私達は他の人からしたら、異物で捕まれば実験動物とか色々と悲惨なめに合わされることが確定しているとのことです。実際、呪術を使うアナちゃんはそれで奴隷にされたそうなので、すごく実感が籠っています。

 どちらにせよ、エリザベートお姉ちゃんの結婚の時に私達はメイドとなるか、政略結婚の道具や夜の玩具として売られる予定だったのでお兄ちゃんの物になるのとかわりません。むしろ、ある程度の自由があって、やりたいことをやらせてくれるので嬉しいです。理不尽に叩かれたりもしないですし。


「フラン、お風呂に行くぞ」

「ふにゃっ!?」


 身体を持ち上げられて、上を向くとお兄ちゃんが起きてきていました。どうやら、考えている間に起きたみたいです。反対側をみると、エミリアお姉ちゃんが抱えられています。上を向くとステラちゃんがお兄ちゃんに肩車をしてもらっています。アナちゃんは着替えを持っていて、私達の前を歩いていきます。

 そのまま露天風呂に運ばれた私達は洗い場で薬用シャンプーやリンス、ボディーシャンプーという物を身体に塗りたくってお兄ちゃんの身体と擦り合わせて洗っていきます。お兄ちゃんは寝ぼけているエミリアお姉ちゃんを洗います。皆で楽しく洗いっこをしてから、滝みたいに流しっぱなしになっている水路から落ちてくる水をかぶって洗い流します。


「ん、おトイレ。ステラ、手伝って」

「うん。私もお願い」

「ん、任せる」


 二人で端っこにある小屋に入ります。そこは穴の掘った排泄する場所です。そこで互いに大事な場所を手で水をすくって綺麗にします。それが終わってから毛皮で水滴を拭っていきます。手で処理するのは汚いけれど、毛皮が汚れて使えなくなる方が困ります。水を拭いただけだったり、多少汚れただけだったなら、水洗いで干せばいいだけです。

 排泄物した場所はしばらくしたら移動させ、何かのお薬と細菌とかいうのを使って分解して肥料に変えるらしいです。私にはよくわかりませんが、お兄ちゃんとエミリアお姉ちゃんに任せておけばいいと思います。

 トイレから出る時には消毒液で綺麗にしてから外に出て、その後はお湯を浴びて湯船に浸かります。


 お兄ちゃんと起きたエミリアお姉ちゃん、アナちゃんはお酒を飲みながらゆっくりとしていました。私とステラちゃんはお兄ちゃんの膝の上に湯に浸かります。そうじゃないと沈んじゃいます。

 この時、甘い飲み物を飲ませてもらいながら、今日の予定を話し合います。私達は基本的にお昼前まで決めたことをやって、お昼からは自由時間です。


「フランはわんこ達の世話を頼む」

「はい。その後はお店の準備をしますね」

「ああ、それでいい。アナはコカトリスから卵の回収だ」

「了解。無精卵だけでいいわよね?」

「有精卵は増やすのに必要だからな」


 ワンちゃん達のお世話は私がやっています。私の護衛でもあるので、これでいいです。逆にコカトリスは私では危ないということで、アナちゃんの担当です。アナちゃんなら石化や動きを呪術で封じられるので、安全に卵を回収できます。


「ステラは海で魚を取ってくれ」

「ん。いっぱい取る」

「エミリアはどうする?」

「そうですね……私は森を見てきます。服にできそうな素材と豆を探してきます」

「わかった。ついでに土も頼む。粘り気がある奴が良い」

「何を作るのですか?」

「まだ早いと思うが、漆喰や窯を作るのもいいだろう」

「探すだけ探しておきましょう。まずは服をどうにかすることを考えます。毛皮だけで作るのは可愛くありませんし」

「それでいい。蚕でもいてくれれば素晴らしいんだが……」

「麻があればそれだけでもうけものですよ」

「違いない」


 何の内容か、私にはわからないけれどやることが決まったのでお湯から出て身体を乾かします。今回はエミリアお姉ちゃんがいるので、聖剣から発する熱で水滴を瞬時に飛ばしてもらいました。普段は毛皮で拭いています。



 今日の朝食はタマネギという物をスライスした奴とキノコのスープ、それに焼いたお魚。このお魚は昨日捕まえて焼いておいた奴で、焼き直しています。全部味は塩だけになります。

 朝食を食べたら、ワンちゃん達の餌を持って洞窟の、家の前にあるお庭に出ます。そこにはワンちゃん達のお家と畑があります。お兄ちゃんは畑に向かうので、私はワンちゃん達のお家に入ります。


「わふっ!」

「はふっ!」


 すぐにワンちゃん達が私によってくるので、皆でご飯をあげてから壁にかけてあるブラシを使ってブラッシングしていきます。このブラシは木を彫って作りました。小さな穴を開けるのが大変でしたが、頑張りました。

 ここにいるワンちゃん達は昨日洗った子達なので、綺麗です。今、護衛として周りを周回している子達は汚れているので後で洗ってあげます。


「この子達は大丈夫ですか……?」


 奥に向かっていき、そこで寝ているワンちゃんに回復のお薬を飲ませてあげます。そのワンちゃんのお腹の方には可愛い小さな子達がいます。赤ちゃんが生まれているのです。

 この子達にとってもここは安全なので、番の子とやっている子達が多いです。私も毎日やっているのですぐにできるかもしれません。それはちょっと不安です。でも、頑張りたいです。



 ワンちゃん達の小屋の掃除や餌やりなどを終えて、もふもふしてから3匹の子と一緒にお店に向かいます。clauseと書かれた木の看板が置かれています。

 二匹は玄関で待機するためにお座りや伏せした状態になります。1匹は中まで一緒です。部屋の中をお掃除してからお薬が入った大きな石でできた入れ物を確認します。これはエミリアお姉ちゃんが作ってくれました。この中から小分けにしていくのです。なくなればお兄ちゃんにお願いすればもらえます。

 準備ができたら店の前に置いてある木の看板をopenに変えて中に入ります。カウンターの奥の席に座りながら、木を彫って器を作っていきます。



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