第8話 祖母の話 癌
祖母の七回忌は、近所の寺で行われた。
祖母は、私が高校生の頃に、95歳で亡くなった。
ガンだった。もう歳が歳だったので、手術もできず、余命三か月と言われて三か月後に亡くなった。
部活の大会の後、帰宅すると祖母は冷たくなっていた。
しかし涙は出なかった。
余命三か月と聞いた時はボロボロ泣いたのだが、自分の中で覚悟ができていたのか、その時は泣かなかった。葬式でも泣かなかった。
三年ほど前から、祖母が夢に出てくるようになった。
内容はいつも同じで、祖母の食事介護をする夢。
現実にも何度かしたことがある。母が「悔いが残らないように」と私と弟にさせたのだ。
しかし、どうやら悔いは残っていたらしい。
夢の中で、祖母の食事介護をしながら、毎回私は「ばあちゃんはもうすぐ死ぬんだから、それまでいっぱい仲良くしよう」と決意する。
そして、決意した瞬間目を覚まして、祖母がとっくに亡くなっていることを思い出して虚無感に苛まれる。
寺には、たくさんの人が集まった。
父の看病の時にお世話になった人もいる。
お坊さんの声に合わせて読経する。
お経って、本当に意味があるのだろうか。
だって、もし私が読経される側だったら、どんよりと読経されるよりも、歌でも歌ってくれた方がいい。
しかし、それは私が生きているからそう思うのであって、死んでしまったら違うのかもしれない。
位牌に向かって、読経する。祖母はもう人間なんかよりずっと尊い存在になってしまったんだな、もう手の届かないところにいってしまったんだな。今更ながらそう思って、少しだけ視界が滲んだ。
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