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貴方と私が存在する以上、私はこれから先も貴方に対して言葉を沢山吐いていくに違いない。
貴方の死によって貴方にかける言葉も、そんな言葉があるはずの未来も消えてしまうのだとすれば、最後の言葉は人の最期を意味しているのかもしれない。
貴方がいるうちに私はどんな言葉で貴方に訴えよう。どんな最後の言葉をかけようーーやはり『ありがとう』だろうか。『愛してる』だろうか。
それとも『泣き顔を隠すところとか、個性的で独特な思想を持つところとか、好きなことに没頭し過ぎて倒れることとかーー』具体例を挙げようか。結局ありがちな言葉しか浮かばないけれど、それでも精一杯の気持ちが伝わるならば十二分である。
しかしーーいま私の目の前で起きていることは現実である。
彼は酷く瞼を腫らし、隠しもせずに大粒の涙を零していた。時折堪えきれずに溢れるような嗚咽が私の聴覚に訴えてくる。目の奥か、鼻の奥か、はっきりしないけれどツーンと熱を持ち、視界が揺らいだ。
ーー彼がそんな風に涙を見せるなんて。
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