七節:逆転
息を荒げ、三島が階段を駆け上がる。
ふと立ち止まる足。目の前に現れた階段の先を、三島が見上げる。
そこには、ダンボールに埋もれたドアがあった。
閉まっているはずのドアが少しだけ開かれ、外の景色が僅かにそこから覗き見える。
三島はツバを飲み込み、階段へと足を踏み入れた。
両端に退けられたダンボールの間を抜け、ドアの前に着く。
鼻から大きく息を吸った後、ドアを叩くようにして一気に開いた。
金属が反響する音が響き、オレンジ色の光が注ぐ。広がる景色、そこには――何もなかった。
コンクリートで埋め尽くされた足元に、その周りを取り囲む返しの付いた緑のフェンス。三島の目にはそれ以外は何も入ってこない。
視線だけを動かし、辺りを見渡す。そして一歩、二歩、三歩、誰もいない広場を注意深く見渡しながら、ゆっくりと足を進め――。
「グッ……!?」
突如後ろから、何かが飛び乗ってきた。
三島の首に掛かる腕。振りほどこうと、腰を屈め、もがく。しかし、絡みつく腕は解けない。
三島はもがくのを止め、右手で首を絞める腕を抓った。
音もなく緩む首元。離れた腕がするりと抜け、後ろへと落ちる。
すぐさまは体を翻し、三島が後ろに居たそいつの襟元を両手で掴んだ。
交じ合う視線。見下ろす三島に、見上げる麻祁。睨むような表情を浮かべ、どちらも目を逸らさない。
麻祁が右足を上げ、三島の左足へと向かい、勢いよく下ろす。
カッとコンクリートを蹴る音が響く。下ろした足、そこに左足は無かった。――三島がすでに引いていた。
すぐさま三島が、自身の右足を後ろへと一歩下げ、麻祁の体を引き寄せる。
引っ張られるような形で、麻祁の体が寄せられた、その瞬間――宙に浮いた。
体を引くと同時に、前へと出ていた麻祁の右足を三島は左足を使い、払った。
それは柔道の技の一つ、大内刈の動きだった。
三島は、麻祁の体、伸びていた足、力の動きを利用するため、まずは自身の右足を後ろへと下げ、麻祁の体を引き寄せた。
こうする事により、二人の間には少しの間が生まれ、引き寄せられた体を支える為に、麻祁は更に足を一歩前へと踏み出す事になる。
バランスを取る為に無意識に出された右足は、少しばかり浮き上がり、そして当然ながら力も抜けきっていた。
三島はその瞬間を狙い、麻祁の足の内側から入れ込ませていた左足をアキレス腱辺りに掛け、そのまま払うようにして力を入れたのだった。
片方の支えをなくし、バランスを崩した体は力もなく、流れるようにして宙を浮き、そして背中から地面へと倒れる。
どしん、っと鈍い音を上げ沈む麻祁の体。
三島から見れば左側の方へと仰向けの状態で倒れた。
ぐっと眉間にシワを寄せ、痛むような表情を浮かべる。
その表情に、三島は見下ろしたまま自身の襟を直し、そして麻祁の元へと近づいていった。
無言のまま横に立ち、静かに見下ろす中、苦痛の表情を浮かべていた麻祁が、ゆっくりと右ポケットへと手を入れた。
――瞬間、握り絞めていたスタンガンを三島の左足首へと突き立てた。
「グアアアッ!!!」
バチバチという音を掻き消すように、三島が大声を上げてその場に崩れ、倒れた。
「グググ……クソ……!!」
喉奥から振り絞るような声を出し、三島が痛みの走る部分をズボンの上から手で押さえる。
巨体がごろごろと転がる足元で、立ち上がる麻祁の姿。落ちていたメガネを拾い、掛け直す。
メガネの中央――ブリッジの部分を押し、そして、右手に握っていたスタンガンをバチバチと鳴らした。
見下ろす麻祁に見上げる三島。形勢の逆転した中、麻祁はスタンガンをポケットにしまい、ドアへと向かい歩き出した。
「クソッ! 待て! 待てぇー!!」
叫ぶ三島は、左足に力を入れようとする。だが、痺れた足は今だに動かせない。
両手を這うようにして、力を入れ、麻祁の方へ体を振り動かす。
麻祁は三島のその声と動きを気にする様子もなく、結んでいた髪を解いた。
一気に放たれた長髪は吹く風により、揺らぐ。
麻祁は横目だけを寝転ぶ三島に覗かせた後、ドアを閉めた。
金属のドアの向こうでは、一人叫び悪態を付く男の声が喧しく響いている。
麻祁は鍵を閉めた後、近くに置いてあったダンボールの一つの中にそれを入れ、小さい階段を降りると、左側の廊下を曲がった。
オレンジ色に染まる廊下を灰色のスーツ姿の麻祁が一人歩く。
背中から聞こえる音。麻祁が奥の階段へと姿を消したちょうど時間、先ほどいた場所に、二人の警察が階段から駆け足で掛け上がってきた。
警察が目の前のドアに気付き、狭い小さな階段を窮屈そうに駆け上り、ドアの前へと押しかける。
ドアの向こうから聞こえる叫び声と、ノブを激しく回す音。
「警察です! 動かないで!」
その言葉に音と声が止まった。
急ぎノブへと手を回す。しかし、何度回してもドアは開かない。
「鍵が掛かっている! 職員室にいって鍵が返却されているか、無ければ予備があるかを聞いて!」
その言葉に、一人が返事をし、その場から急ぎ立ち去る。
ドアノブを握っていた一人は手を離し、階段を下りるなり、腰に付けていた無線機で呼び掛けた。
「至急至急、屋上のドア前にて、丸被の可能性と思われる声を確認、応援を要請。尚、ドアは施錠されおり、現在、鍵を確認中であり……」
通信を終えた後、無線機を再び腰へと仕舞う。
静まり返る空間の中、男がドアへと視線を向けた。金属のドアからは、何も聞こえてはこなかった。
――――――――――――
龍麻と栞が談笑する中、それを裂くようにして、弓道部のドアが突然開かれた。
そこから現れたのは、ジャージ姿の一人の女性。慌てた様子のその姿に、近くにいた田辺先生が駆け寄った。
「どうかしましたか?」
「その……」
ジャージ姿の女性が、田辺先生へと耳打ちをする。
その言葉を聞いた後、田辺先生は表情を変えずに、言葉を返し、しばらく話し合った後、小さくうなずいた。
女性が部屋を出ると同時に、田辺先生が弓道部の練習場へと入る。
「今日は早いけど練習はこれで終わり、すぐに帰宅の準備に入って!」
声に合わせ、それぞれの生徒が動きを止めて、田辺の方へと顔を振り向かせる。
「何かあったんですか?」
一人の女子生徒の言葉に、田辺先生は表情を変えずに説明を始めた。
「どうやら、また誰かが入ったみたい」
その言葉に、集まっていた女子生徒が一斉に声を上げ、不安な表情を浮かべた。
「またですか?」
「ええ、でも三島先生が追いかけているらしく、警察の方も来たから、今日は練習を終わらせて、早めの帰宅よ。それじゃ一年生から着替えて!」
田辺先生が急かすように両手を叩いた。それに合わせ、それぞれ話し合っていた生徒達が動き、入り口の横にある部室へと入っていった。
その慌しく始まった光景を、困惑した表情で見ていた龍麻は近くに置いてあったザックを背負い、立ち上がるや否や、すぐさま田辺先生の元へと駆け寄った。
「あ、あのすみません……もしかしてそれって俺の事じゃ……」
「ああ、君の事じゃないわよ。三島先生が追いかけてるって聞いたし……確かスーツ姿の女性らしいわよ」
「スーツの女性……」
その言葉に、覚えのある龍麻は顔をひきつらせた。でこから始まり、背中へとあらゆる所から冷えた汗が湧きあがってくる。
「……でも、一応、君もここの生徒じゃないし、早めに帰った方がいいわね。今なら他の部活の生徒も一緒に帰宅に入るはずだから、紛れれば分からなくていいわ。もし、警察や他の先生に声掛けられたら、田辺先生って私を呼びなさい」
「わかりました……」
龍麻が小さく頭を下げると、田辺先生は振り返り、靴を履き始める。
「栞、一年生が着替え終わったら、次は二年生で呼びかけお願いね。私は遠藤先生と話をしてくるから」
「はい、わかりました」
栞が返事をすると、田辺先生は笑顔を返し、そのまま外へと出ていった。
「遠藤先生って?」
「男子弓道部を指導する担任の先生です。それより兄さん……」
不安そうに見つめる栞に、龍麻は、ああ、と頷いた。
「大丈夫だよ。俺もすぐに出るから」
「気をつけてください……」
靴を履き、外へと出ようとした瞬間、
「あ、あの……!」
栞に呼び止められた。
靴の敷き詰められた狭い足場の中で、龍麻は顔だけを振り向かせる。
「ん? なに?」
「あ、あの……こんな時に言うのもあれなんですが……、その、一緒に帰りませんか?」
「一緒に? ……ああ、別に構わないけど……でも……」
「紗希も一緒に帰ると思いますから、見つかっても大丈夫だと思います。二人で挟めば気付かれないでしょうし……」
龍麻は少しの間だけ考え……、そして、首を横に振った。
「ここから一緒に帰ると遅くなるから、先に学校を出るよ」
「……そうですか」
少し残念そうな表情で目を伏せる栞に、龍麻が慌てた様子で声を掛ける。
「ああ、でも、待つよ。校門前……じゃなくて、駅前で待ち合わせってのはどう? それなら都合もいいし」
「都合?」
「ああいやいや、こっちの話! 駅前で待つよ。ほら、近くにコーヒー屋もあるし、その近くで」
「……分かりました。紗希と一緒に向かいますね」
栞の言葉を最後に、龍麻は軽く返事をし、外へと出た。
辺りを見渡すと、最初入ってきた時とは違い、少し緊迫したような雰囲気になっていた。
聞こえてくる声も、部活で勤しむ生徒の声は聞こえず、ただ会話をしているだけの声があちらこちらで聞こえてくる。
道の途中途中には、先生や警察の姿が点々としており、辺りを見回していた。
龍麻は出来るだけ声を掛けられないように、腰を屈め、顔を少しだけ伏せて歩く。
校舎の外にあるトイレを通り過ぎた時、
「なっ!?」
突然、ザックの天辺を引っ張られた。
体が無理矢理に後ろへと下げられ、トイレの方へと近づけられる。
「な、なんだよ急に!」
慌てた様子で、龍麻が急ぎ振り返る。そこには麻祁がいた。
灰色のスーツに黒のメガネ。その姿は別れる前に見た変わりの姿だった。唯一違う場所と言えば、結んでいた髪は解け、長髪として揺れている。
「遅かったじゃないか、待ってたよ」
腕を胸元で組み、堂々としているその姿に、龍麻が言葉を返す。
「待ってたじゃないだろ! 何やってんだよこんな所で!」
「だから、待っていたと言っただろ? 早くザックを」
急かす様に龍麻の肩を押し、振り返らせる。その対応に、龍麻は更に声を上げた。
「早くじゃないだろ! 聞いたぞ、スーツ姿の女を追いかけてるって! お前の事だろ!?」
左腕から、右腕へとザックは外され、そしてそれを受け取った麻祁は、そのままトイレへと入って行った。
「他には? 他に情報は何か聞いてないのか?」
トイレから響く声に、その前でただ立つ龍麻は両手を胸元で組み、考え始める。
「ええ? 後は……後は……」
「無いならいい。それだけの情報なら私だとは分からないだろ?」
「お前しかいないだろ!? スーツ姿って! 一体何したんだよ!?」
「ただ見回っていただけだ。それ以外には何もする事がない。だが、相手が先に手を出してきたんだ。私の方こそ被害者だよ」
「被害者って……それじゃ何で警察が来てんだよ……」
呆れ返す言葉も無くした龍麻が、ふとため息を吐いた。
それを払うようにして、トイレからは白の半袖シャツとスカート姿の麻祁が出てきた。目元には当然、メガネなどは掛かっていない。
「着替えたのか?」
龍麻の言葉に、麻祁が手にしていたザックを髪の上から背負う。
「持ってきていたからな。だから待っていた。さあ帰ろう」
そう言って歩き出す麻祁。その後ろ姿に、龍麻は不安そうな表情を浮かべたまま、追いかけ、横へと並んだ。
「大丈夫なのか、そのまま出ても。追いかけられてるんじゃないのかよ?」
「問題はない。奴らが追いかけているのは、灰色のスーツ姿のメガネを掛けたポニーテールの女だ。長髪の制服姿の女子生徒ではない」
「……それはそうかもしれないけど、それでも髪の色とかで分かるだろ?」
「ザックで後ろ髪を隠せばいいし、今日は陽が強いから色も誤魔化せる。それに、何より髪色なんて情報の優先度から言えば、最も優先される部分ではない。大事なのは見た目、人が最初に目にし、記憶に残る場所と言えば、姿だけだ。後は、勝手に脳みそがその状況に合わせて色づけしてくれる。当事者以外にはそれほど残らないよ」
「……本当に大丈夫なのかよ」
「もし見つかった時は見つかった時だ。むしろ、何もないのにそんなにビクビクしている方が、怪しくて仕方ない。私に近づかないでくれる?」
「嫌だよ。俺が怪しまれるだろ、そのザックをくれよ」
「これは私の。誰かに話しかけられたくないなら、堂々としていればいい」
二人は話しながら校門へと目指していく。
東の広場から、校舎の近くへと。その辺りまで来ると、校門へと目指す他の生徒が複数人いた。二人は紛れるようにしてその中へと入る。
校門前には、先生と警察が一人ずつ立ち、出て行く生徒達に向けて視線を散らせている。
麻祁と龍麻はいつものように談笑しながら、二人の視線を抜け、そのまま外へと出た。
学校前の道路には警察の車が複数台止まっている。
道を左へと曲がり、そのまま塀に沿って駅に向かい、真っ直ぐ歩く。そして、塀が左へと曲がる、角の辺りで二人は立ち止まった。
「はぁ、はぁ……ば、ばれると思った……」
「バレるわけないだろ?」
「あの警察と先生、俺の方見てたぞ……一瞬ひやっとしたけど……」
「気のせいだよ。大体、追いかけているのはスーツを着た女の姿だ。それ以外には眼中にもないよ。それに、その女は今、屋上にいる事になっていて、警察もそれの対処で急いているはずだ」
「屋上?」
「ああ、私が誘導しておいた。ついでに熊も檻の中。余計に目がそっちにいってる」
「熊? よく分からないが……」
「それよりも、栞にはちゃんと渡せたのか?」
「ああ、それならもう既に……」
「私の話は?」
「それはまだなんだ、説明しようにも中々出来なくて……でも、一応待ち合わせみたいなのはしているから……それで話そうかと……」
「それならここで待とう。帰り道も電車なんだろ?」
「ああ、駅前でってて話はしたよ。大体、最初の待ち合わせを選んだのも、お前だっただろ? 一人で出たときはそこで待とうと思っていたし……」
「私と一緒に出れて良かったじゃないか、一人であんなに不自然にビクビクして歩いて出ていたら、今頃呼び止められていたかもしれないぞ?」
「俺は別に大丈夫だよ……。それより、まだかな……」
龍麻が覗くようにして、体を左へと逸らし、道路の先にある校門へと目を向けた。溢れるようにして出てくる生徒達の中から栞達の姿を探す。
しばらくし、最初と比べ、人の数が減っていく中、二人の女子生徒が現れた。
横並びで話しながら、龍麻の方へと歩き、そしてその存在に気付くと、駆け足で近づいてきた。
長髪をなびかせる栞、そしてその横にはポニーテール姿の紗希の姿があった。
「お待たせしました」
「……あれ?」
目を細め、睨むようにして龍麻に視線を送っていた紗希の目が見開いた。
まるで何かを思い出そうかとするかのように、龍麻の横にいる麻祁を指差す。
「あれ……確か…」
うーんと、悩む紗希に栞が割り込むようにして声を掛ける。
「あの、その方は……」
龍麻が急ぎ、言葉を返す。
「ああ、あの、それに関しての話が実はあって……」
「麻祁式です。よろしく」
笑顔を浮かべ、伸ばす右手。
「あ、は、はい」
理解も出来ぬままに、流されるようにして栞はその手を握った。
数回振った後、今度は紗希の方へと手を向ける。
「よろしく」
その言葉に、紗希は目を細めたまま、
「……よろしく」
手を握った。
握手を終えた後、龍麻が口を開く。
「あの、この人は麻祁って言って、俺の高校の同級生で、その……今は一緒にいてさ、あの……」
「栞さんとはすでに会ってますよね?」
龍麻の言葉を遮り、麻祁が栞に問い掛ける。
「えっ? あの……もしかして、あの昨日の朝の時に……」
「そうですそうです。あの時に一度……その時私も龍麻君からは話を聞いてなかったのですが、後で聞いたらどうやらお姉さんらしくって、それなら一度はお話しようかと思って、今日一緒に来させていただいたんです。……初対面であれですが、どうですか? これから喫茶店でも、駅前にあったと思うので、そこでお話でも……」
麻祁がじっと栞の目を見つめる。その視線に対し、栞も軽く頷いて返事をした。
「わ、私はいいですけど……」
今度は栞が、横にいた紗希へと目を向ける。
「私も構わないわ」
その言葉に、麻祁は笑顔を浮かべた。
「それじゃ行きましょ。あ、そうだ栞さん龍麻からお話窺いました。確か弓道やってるって」
「はい、弓道部に入ってますよ」
「家の方でも弓道の――」
二人が横に並び、まるで友人のように話を始めながら、駅へと向かい歩き始めた。
その後ろ姿を見ていた龍麻と紗希。
ふと安堵したかのように息を吐く龍麻の横で、まるで怪しむように紗希は麻祁の背を見続けていた。
「どうしたんだよ? 何かあるのか?」
「あの髪色と顔……どこかで見たんだけどな……」
「えっ!?」
思わぬ言葉に、龍麻の心臓が飛び上がる。でこから再び汗が吹き上がる中、龍麻は逸らすように話し始めた。
「き、気のせいだよ、今日始めて会ったのに、見ているわけがないだろ?」
「……それもそうよね。……で」
今度はその視線を龍麻へと向けた。
押される気迫に、龍麻が一歩下がる。
「な、なんだよ」
「あの人は何なの? まさか彼女?」
「か、彼女なわけあるかよ! あれは俺の学校に来た転校生なんだよ」
「転校生? 転校生がなんであんたと一緒に暮らしてるのよ? おかしい話でしょ?」
「そ、それは……い、色々と理由があるんだよ! それを今から話すって!」
「ふん、納得できる理由ならいいんだけどね。彼女なら、ちゃんとそう言ってよね? 母さんも父さんも、何より栞ねえの方が心配するんだから」
「もし彼女なら真っ先に言うって、それに心配って……」
何も知らないような表情を見せる龍麻に、紗希は再び、ふんと息を荒げて正面に顔を向けた。
「気楽でいいわね……」
一言だけそう言い残し、歩き出す。
一人、夕焼けの道路に残された龍麻。
「なんなんだよ、一体……」
訳も分からぬまま、その後を追った。
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