終節:新たな日差し

「……くっしゅん!! うぅ――くっしゅん!!」

 高く小さな短いくしゃみを、龍麻が何度もする。

「……なんだ風邪か?」

 麻祁は振り返ることも、立ち止まることもせず、後ろにいる龍麻に声をかけた。それに対し龍麻は、鼻をすすり、濁ったような声で答えた。

「分からない……くっしゅん!」

「おいおい、私にうつさないでくれよ。苦しい思いなんてごめんだからな」

 家の窓から溢れ出る光に挟まれ、二人は歩く。

 現れる分かれ道。麻祁は迷う事無く、ブロック塀に沿うようにして右へと曲がった。

「そもそも、あんな場所で水浴びをしている人間に何かしらの問題がある。夏が近いと言えど、まともじゃない」

「だから、俺が好きで入ったんじゃないって、犬が追いかけてきて……って、見ただろ? あの灰色の男が紙に何か書いて出してだろ? あれが犬に変わって、喰われそうになったんだよ……大体、あいつは何なんだ?」

「さあな、私にも分からない。明日調べておく。ただ、一つだけ確実に分かった事があるじゃないか」

「え、何が?」

「――狙われてるって事」

「ああ、狙われて……え、誰が……?」

 ふと足音が一つ止まる。それに合わせ、麻祁も立ち止まり、振り返った。

「――君が」

 麻祁の言葉に龍麻は目を点にさせる。すぐには理解できないのか、確認するように自分を指さし聞きなおす。

「俺?」

「他に誰がいる」

 当然のような麻祁の言い方に、龍麻は納得が出来ずに食い下がった。

「いや、だって俺は何もしてない、ってより、そもそも関係ないだろ!?」

「関係ない人間が、何故その犬とやらに追いかけられて餌になりかけてるんだ? 十分関係者として認識されている。……で、どんな会話したんだ?」

 麻祁の言葉に、龍麻は目を伏せ、あの時の映像を思い出そうとした。

「えぇっと……確かサイトウユウを知ってるかって聞かれて……それから、ある方に場所を聞いて、んで……突然黒の犬が現れて……」

「サイトウユウ? それがキーなら、そいつにとっては十分関係がアリだな。なんせお前は、あの場所に居た当事者の一人なんだから、僕は何も知らないです。なんて言葉が通じると思うのか?」

「ぐっ……」

 的を得たような答えに、龍麻は何も言えず言葉を詰まらせる。しかし、どうも納得するまでには行かず、ふと浮かび上がった疑問をすぐに口にした。

「でも、どうして命まで? そいつはそこまで重要な人物だったのか……?」

「さあな、そこは調べてみないと分からない」

 麻祁が背を向け、再び歩き出す。龍麻もそれに釣られるようにして後を追った。

「そもそも、そのサイトウユウが便利屋ってだけで、深くまでは探ってないからな。まずは調べないと……後、サイトウユウとあの灰色の男の関係と身元、そして、その男に情報を与え、お前に差し向けたある方……それも調べなければいけない。あの場所で起きた出来事を目にした人物が居たということになるからな、そんな悪趣味な覗きをするような奴は成敗しないと。……まあ、とにもかくにも、お前はそいつのリストに載った。またいつ現れるか分からないぞ?」

「えっ……? ひっぃ!!」

 突然犬の声が近くで鳴った。龍麻は一瞬立ち止まり、縋りつくように麻祁の背中へと駆け寄った。

「ど、どうすればいいんだ……」

「簡単な話だ。あの灰色の男を潰せばいい。今お前の命を狙っているのは、その男だけだからな。そいつを潰せば、後は誰が狙う?」

「た、たしかに……すぐに見つかるのか?」

「それは分からない。近くに住んでいるなら住処を急襲すればいいが、居なければまずは探さないと……。場所は広いからな、そう都合よく事は進まないさ。――って、事でいま聞く」

 麻祁が立ち止まり、振り返っては龍麻の目を見る。

「どうするんだ? 記憶を消して戻るか? それとも私に付くか?」

「え、ええ……っと」

 突然の言葉に一瞬目を点にさせるも、その言葉の意味を理解していた龍麻はわざとらしく何度も目を逸らしていた。だが、麻祁は逸らさない。

「今決めないとダメなのか?」

「いや、決めなくていい。だが、今ここで言わないなら、どうなっても私は知らない。このまま送り届けて、明日を待つ」

「あの男を見つけるのは?」

「何故見つける必要がある? 記憶を消せばそれで終わり。記憶を消さないなら、野放しにしておく。ちょうど良かった、おかげで私の手間が省けるってもんだ」

「ちょっ、ちょっと待て!! それってつまり、選択は一つしかないって事じゃないか!?」

「今頃気付いたのか? そうだ、お前に有益になりそうなのは一つしかない。聞かなくてもいいんじゃ? と思ってるだろうが、私は慈悲深い人間だ。一応お前の選択を尊重してやろうと思ってな――お前自身がその口で決めるんだよ」

 切羽詰まる言葉に龍麻はたじらう。そして、小声ながらも口にする。

「たのむ……」

「何?」

「頼むって言ったんだよ! 俺だって死にたくない、お願いするしかないじゃないか!」

 張り上げた声が辺りに響く。その言葉に麻祁は、ジッと龍麻の瞳を見た後、振り返り歩き出した。

「それじゃ帰ろうか」

 決意の言葉とは裏腹の短い一言。

 さらっとしたその言葉と、何事も無かったかのように離れていく背中に龍麻は唖然とした。

 声を掛けて足を止めようと考えるも、その背中を振り向かせる言葉が見つからない。

「――くっしゅん!」

 幾度も出たくしゃみを号令に、龍麻も歩き出す。

 街灯に照らされる分かれ道。麻祁は迷わず真っ直ぐ進む。

「この先を進めば、もうすぐ部屋につくな。さっさと着替えた方がいい」

「ああ、……でも、もう乾いてきてるし……このままでもいい気がするけど――って……なんで俺の家知ってるんだよ!?」

「え? あの部屋でした会話をもう忘れたのか? お前の住んでる場所の調べはついてるって言っただろ?」

「な、なんだよそれ……どうやって調べたんだよ」

「電話で聞いた。ほら、担任の山田先生って人。その人から聞いた。緊急の事情って事でな、学校で教えてもらったんだ」

「山田先生……なんで、よりにもよって……」

 思わず龍麻が深い溜め息を吐く。

 道を真っ直ぐと進むこと数メートル。住宅に挟まれる中、左側に一棟のアパートが現れた。

 一階にはドアが四つ、そして二階には五つのドアが等間隔でそれぞれ一列に並んでいた。

 建物自体は結構大きいものの、それを包み込む外壁の塗装は所々が剥げている。

 麻祁は立ち止まり、それを目にした瞬間、感想を呟いた。

「ボロ屋だな」

「まだ新しいって!」

「……で、どこがそうなんんだ?」

「えっ? ほら、二階の真ん中の……」

 龍麻が二階の中央にあるドアを指さす。

 麻祁は、そうか、と一言呟き、外に付けられた階段へと足を進めた。

 月明かりと小さな豆電球が照らすその場所を、二人の会話と金属を踏む足音が響く。

「階段なんて面倒な……一階でもよかったんじゃないか?」

「俺も一階が良かったんだけど、なんか二階のほうが家賃が安かったんだよ。……この場所、結構変わってるんだよな……」

 二階、中央のドア前に辿り着く。

 二人は立ち止まった瞬間、麻祁が先に手を出した。その手の意味を龍麻が考える。

「鍵、鍵だよ鍵、どうやって入るんだ?」

「か、ああ、鍵……あれ……?」

 龍麻がズボンのポケットを探り始める。しかし、何度手を入れても、それは出てこない。

「いつもならズボンに……あれ、……そうだ、俺急いでいて、鞄に……ああ、学校、学校に忘れて……」

 思いつく限りの物が言葉として漏れ出す。だが、ある音がそれを全て消し飛ばした。それは、ガチャガチャと聞こえる、鍵を開ける音。

「え? なんで持ってるんだよ!?」

 驚く龍麻を尻目に、麻祁が横で鍵を抜き、ドアを開けた。

「もろいセキュリティーだ。ほら、返す」

「え、っとと!!」

 投げられる鍵、宙を舞うそれを龍麻は受け取る事が出来ず、地面に金属の跳ねる音を響かせた。

 落ちた鍵をすぐに拾い、顔を戻す。――そこにはすでに誰も居なかった。

「おい、なんで勝手に入ってるんだよ!?」

 玄関へと足を踏み入れている麻祁を追い、龍麻も部屋の中へと入った。

 暗闇の中で麻祁が、何かを探すように首を左右に動かしている。

「……電気はないのか? ろうそく?」

「違うよ、なんでそんなのだけで生活出来るんだよ」

 龍麻がドア近くの電気をつける。

 灯される明かり、二人の目の前に、フローリングの小さめの空間が現れた。

 右側には台所がある。

「ほら、これで明るく……って、靴! 靴脱げよ!」

 龍麻が前に居る麻祁の足下を指さす。そこには、床を踏みしめる一足の靴がいた。

「ああ、ごめんごめん。アメリカンスタイルかと思って」

 悪気も無さそうに麻祁は一段下がり、靴を脱ぎ始める。

「ここの外装を見てどうしてそんな発想になるんだよ!? わざとだろわざと!?」

 吠える龍麻を気にする様子も見せず、麻祁は靴下で玄関から上がり、左側の奥にあるドアを開けた。

「ここがお前の寝床っぽい……当たりか」

 中を開けた後、閉める。

「当たりじゃない、そこは風呂!」

「なら、左?」

 風呂場のドアから左にあるドアノブへと麻祁が手を伸ばす。

「そこはトイレ! ――って、大体場所分かるだろ!?」

 その言葉と同時に麻祁は正面にある引き戸を開けた。玄関の明かりにより、うっすらと部屋の様子が見える。

 薄闇の中でじっと立つ麻祁に対し、龍麻はすぐに玄関のドアを閉め、中へとあがり、そして部屋の電気を点けた。

 一瞬にして辺りが明るくなり、部屋の中を現す。

「狭い部屋だな……」

 麻祁の言葉の通り、その場所は狭かった。

 部屋の右側にはベッドがあり、すぐに壁。左側は襖が仕切られ、正面にある窓とその横の角には窮屈そうにテレビが置かれていた。

 唯一体を伸ばせるであろう、部屋の中心には白い机が置かれている為、さらにその空間を窮屈なものへと変えていた。

「この間取りだと……他の部屋の方が広くないか?」

 辺りをキョロキョロと見渡していた麻祁が、そう口にする。

「ああ、そうだよ。他の部屋だともう一つ横に部屋があって二部屋になるんだけど、ここだけ一部屋なんだよ。だから安いんだ」

「……それって、ここがただの物置だったんじゃないか?」

「ぐっ……」

 薄っすらと思っていた事をはっきりと突かれたのか、龍麻が表情を濁らせた。

「そ、それよりどうして中に入ってんだよ、ここはお前の家じゃないだろ!? 自分の所に帰れよ!」

 龍麻の言葉に、突然麻祁は顔を伏せ、両手で目を覆った。

 聞こえ始める、すすり泣く声。その様子に龍麻の勢いは削がれ、その場の空気が一瞬にして変わった。

 戸惑う龍麻に、麻祁は声を震わせる。

「いないんだ……誰も……」

「えっ? いないって……?」

「あたし、ひとりなんだ……だから今ここにいるの……」

「それって……」

 麻祁の言葉に、龍麻も表情を曇らせ、目を行き所を迷わす。

「親は遠くの方で二人仲良く一緒に暮らしているから、今、私の近くには居ないし……だから…だから……」

「親は遠くで……って、ただの一人暮らしじゃないか! 俺と一緒だろ、それ!?」

「ああ、そうだよ」

 振るえる声からいつもの素っ気ないものへと麻祁の口調が戻る。そして、何事も無かったような表情で龍麻の後ろに向かい、人差し指をさした。

「それより、いいのか?」

「……何が?」

「玄関、鍵閉めた? 来るよ?」

「来るって……誰が……ッ!!」

 ハッと思い出したかのように表情を変え、龍麻はすぐに振り返った。

 玄関の鍵を閉めた後、すぐ横の台所にある窓の鍵を確認し、部屋に戻っては、今度はカーテンを開け、窓の外と鍵を確認した。

 再びカーテンを閉めた後、龍麻は顔を、麻祁の方へと向けた。

「――そういう事だ。今日から特別に警護をしてやる。私のお手伝い兼荷物持ちになったんだ。何かあったら困るだろ? あいつの正体が掴めるまでは一緒だ。ああ、こんな美少女と一緒に過ごせるからって、気も使わなくていいし、何よりそんなに口元を釣り上げて、喜ばなくていいよ」

「誰が喜ぶんだよ……。あんな目にあって……お前と一緒にいたら余計危険じゃないのか……?」

「そ――じゃ今死ね」

 即座に手がスカートに伸ばされる。龍麻は咄嗟に両腕を前に出して身構えた。

 銃を向けられると同時に構える腕。乾いた龍麻の顔に汗が伝う。

 「まあ、弾は入ってなんだけどね」

 麻祁は銃を握ったまま、左にある襖に近づいた。

「とりあえず、私の寝床は確保しないと……ここがいいな」

 襖を開ける。中は上下区切られており、上には布団が数枚あった。それを下の着替えなどのケースがある場所にいくつか放り投げる。

「狭いがここでいい。ここならもし夜中入ってきても、背中をバーンだ」

 向かいのベッドに銃を向け、声と共に銃口を上げる。

「というわけだ、夜も遅いから、私はもう寝るわ」

 まるでこの部屋に長年暮らす主人のように、龍麻にそう言いながら銃と腰に巻いていた二つのポーチを押入れに入れ、自分もそこに入った。

 閉められる襖。机に置かれた時計の針だけが刻々と鳴る。

 突然、一人だけ取り残された龍麻は未だ呆然と立ち尽くす、そんな時、再び襖が開かれた。

「何をしてる? 寝ないの?」

 飽きれたような麻祁の言葉に、龍麻は目だけを動かせ、そして今だ構えていた手を解いた。

「……寝る」

 全てを諦めたような龍麻の言葉に、麻祁は返事をするように襖を閉めた。

―――――――――――――――

 ぼんやりと薄オレンジに染まる天井。机から聞こえてくる針の音だけが耳に入る。

「はぁ……」

 自然と口から漏れるため息。ベッドの中、今、頭の中では色々な考えで滅茶苦茶になっていた。

 麻祁が押入れに入った後、取り残された俺はそのまま寝ることにした。普段なら風呂に入るが、今日はそういう気分じゃなかった。

 服を脱ぎ、着替えを探す。しかし、その着替えは押入れの下。開けるは気まずいと思い、下着のまま寝ることにした。が、目は閉じなかった。

 あまりにも突然すぎる出来事が、今日一日だけで雪崩のように一気に押し寄せ為、頭の中がそれ一面になり、瞼が締まらなかった。

 今の状況、簡単に言えば漫画やアニメのようなだった。

 とある主人公が悪魔や魔物に襲われて、それでヒロインの女の子に助けられ、そして、その先には壮大な物語が待っている……それに似ている。

 俺が主人公? 俺がアニメや漫画のようにこれから壮大な冒険に?

 そう考えてみるも、なんだかしっくりと来なかった。俺には何の力も無いし、そういった特殊な変わった過去も無い。今は一人暮らしだが、家族は少し離れた場所に居る。中学から高校へと、まだ数ヶ月しか経ってないが、友達も居て何一つ変わりなく生きている。

 極平凡、極平然。それが突然こんな事になるのか?

 大体、冒険たってどうなるんだ? 魔王みたいなものは居ないし、世界の破壊を目論むような秘密結社なんてものは、どのニュース番組を見たってそれについての話題なんて話された事も無い。

 もう一度俺は、俺自身を確かめるように大きな溜め息を吐き、横に首を向けた。そこにはぼんやりと映し出される襖がいた。

「ヒロインか……」

 頭の中に浮かぶ麻祁の姿。揺れる銀髪に白の制服と黒のスカート、そして緑のポーチと背中の大型のリュック。坑道、広場、公園、道路。色々な場所で見た麻祁の姿と、あの冷たく切り捨てるような声が頭の中で次々と現れては、違うシーンへと切り替わっていく。

 だが、目に映る景色からは、今そこにあの女が寝ている思えなかった。そう、さっきまで経験した事の全てが幻……そうも思えてくる。

 顔を戻し、天井を見る。やはりそれは変わりのない、いつも寝る前に見ている変化のない天井だった。

 妙な話だが、今の気持ちに不安や恐怖などはなかった。……これもあの女のせいかな。何だかんだで会話していると、和むというものじゃないけど、自分の命が関ってる、そんな気分を紛らわせてくれていた。

 時折真剣で、いつも砕けた言い方。必死さが無く、どんな状況でも変わらない姿勢、近くでいても安心というより、その場その場の緊迫の空気を壊し、二人だけの世界にして、任せていれば何でもしてくれる。そんな雰囲気を常に纏っていた。

 それはあの夜、学校で話し合った時と同じような感覚だった。

「ヒロイン……ないない」

 そう考えているうち、なんだか少し可笑しくなった。

 雰囲気はともかく、あんな性格で物語のヒロインなんて想像できない。

 やっぱヒロインと言えば、常識知らずでやんちゃだけど、どこか可愛げがあったり、もしくは大人しくて優しかったりと、そういうのこそ守りたいヒロインというものだ。そう、例えるなら霧崎とかそうかな……。

 ふと頭の中に、霧崎や僚が話している姿が浮かんだ。

 明日は学校、また皆と会えて話せる。霧崎、僚。最初に僚が話しかけてきて、遠くで霧崎がいて……。

 頭の中で進む学校での日常の流れ。瞼が自然と重くなり、そして――。

――――――――――――――――――

「……きろ!」

 耳に聞こえた一瞬の声。重み瞼を薄く開ける。

 ぼんやりとした視界に、白の制服が映りこむ。寝ている俺の横に誰かが立っている?

 鮮明になりいく意識。そして、名前を口にする。

「あ、麻祁……?」

「ああ、そうだよ。皆が羨む麻祁さんだ。ほら、起きろ。伝えることがある」

 麻祁の声に促され、俺は体を起した。まだ少しだけ瞼が重たいが、目元を擦り、無理矢理ハッキリとさせる。

「夢じゃないのか……」

「夢なら良かったがな、残念ながら夢じゃない。どう願っても昨日起きた事は無しに出来ない。……それより、いいかよく聞け」

 腕を胸元で組み、麻祁が言葉を続けた。

「私はこれから学校へ行く。お前は来なくていい、今日は休むと伝えておいた」

「えっ? なんで……?」

「これからの段取りをスームズに進ませるためだ。面倒があったら困るからな。学校の方は安心しろ、私から色々説明しておく。今日はゆっくり休め、まだ痛む場所もあるだろうしな。鍵は掛けておくから」

 麻祁はそう言いながら、部屋を後にし、玄関のドアを開け外へと消えた。

 頭の整理が追いつかず、一人ベッドで取り残された俺は大きな欠伸をした。

 ドアの鍵が閉まる音を耳に、俺は再びベッドへと入り込んだ。

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