二節:いつもの席
「ん?」
教室に入るなり、ある光景が目に入った。
窓側の一番奥の席、そこに一人の男が座っていた。
見覚えのある黒の短髪。机に立てた右肘の手のひらに頬を当て、だらしなく口を開けては前を見つめている。
男の左側にある窓が少し開いてるせいか、その体はゆらゆらと揺れていた。
……ッチ、アイツめ……。
急ぐ事もなく、いつも通りの足取りでソイツが座っている席まで移動し、目の前に立った。
……どうやら、まだ向こうの世界から戻ってないみたいだ。
俺の存在など未だ気づかず、相変わらず口を開かせたままだ。
「――ったく、おい……おい!」
「……あぁ……うん?」
左肩を掴み、前後に大きく揺らしては、元の世界へと呼び戻す。
「おい、起きろ! 僚!」
「ん? ……あぁ……起きてるよ……」
「――ったく」
その言葉に俺は掴んでいた手を離し、しばらく様子を見守った。
僚は机に立てた右肘を微動だに動かす事はなく、窓の隙間から吹き込む風に揺すられ続けている。
その動きを数秒見続けた俺は、再び左肩をそっと掴み、
「やっぱ、寝てんじゃねぇーかよッ!」
激しく体を揺すった。
先ほどよりも激しく前後に揺れ動き、右手に押し付けていた頬の肉が縦横無尽にうねる。
「……んぅ……おきッ!!?」
突然、右手から頬がずれ落ち、支えを失った顔が机へと向かい、急速に落ち始めた。
目を見開かせたまま、激突ギリギリの所で止ま――った矢先、今度は顔を上げたかと思うと、何かを探すように、忙しく周りを見回し始めた。
数回首を左右に振った後、眠気眼の目と合う。
「…………」
僚が、じっと顔を見てくる。
「……? おい、大丈じ……」
「無理」
そう一言、今度は重ねた両腕を枕に、再び顔を伏せた。
「なっ!? 何が無理なんだ! おい! おいッ!」
「……あーあぁ……るっせなー」
ふてくされた様な小声を呟きながら、僚はゆっくりと体を起こし、椅子に背を倒した。
伸ばした両腕が喉から絞り出す声に合わせ、小刻みに震えている。
「っんんー!! ……っと、へへっ、遅かったじゃないか」
「……ああ、いろいろあってな」
「いろいろ? ……ほっほー、色々ね。いろいろ……」
何を納得したのか。右手で顎をさすり、不気味な笑みを浮かべる。
「な、なんだよ?!」
「いや、何でもないぜ。……へぇー、いろいろか。い、ろ、い、ろ」
「なんだよ気持ち悪い奴だな。その言葉、気に入ったのかよ……って、おい、それより早くそこをどけって! 俺の席だろ、そこ!」
その言葉に僚は、ハイハイと軽く返事し、椅子から立ち上がった。
「龍麻君のために僕が温めておいたんだよ。偉いでしょ?」
「はあ? 何言ってんだよ。いま、夏だぞ」
机に鞄を置き、すぐさま空いた椅子に腰を掛ける。……生温い。
「まぁ、何はともあれ無事に着いて良かったな」
へへっと鼻で軽く笑いながら、今度は前にある席に、僚が腰を下ろした。
「おいおい、そこもお前の席じゃないだろ」
「いいの いいの。邪魔なら潔く退くから」
「……なんだよそれ……、だったら最初からその席に座ればいいだろ?」
その言葉に、相変わらずのふしだらな笑みを見せつけてくる。
「龍麻君はさぁ、ほら、小さい時からのお友達だし、特別だよ特別」
「特別? なんの得にもなってないってのに……で、それより何の用事だよ? 何かあんだろ?」
毎度恒例となる雰囲気を察し、それを口にしたことが嬉かったのか、僚は笑顔を浮かべた。
「おっおお! 流石は友! 幼なじみ! やっぱ分かった?」
「……分かるもなにもいつもの事だろ? 俺の席に座っている時は『必ず何か頼みごとがある』って、合図になってるんだからな。いつのまにか」
「そうか? 俺はすでに了承を得たつもりなんだけど……じゃ、内容を聞かずとも、友情熱き龍麻君の事だから、もちろんオッケーを出してくれるよな」
何が嬉しいのか、まるで獲物を得た盗賊のような笑みを見せてくる。
「はぁ? 何言っているんだ。俺がいつから友情熱き男になったんだよ。いつも通り、今回もただ話を聞くだけだ」
「えぇー、ひど……おっ! 麻衣ちゃんじゃん、ちょっと待ってろよ。麻衣ちゃんおはよー!」
話の途中、扉の開く音に反応し、突然、僚が横に向いたと思うと、そそくさと席を立ち、霧崎の方へと走っていった。
それを視線で追いかけると、そこには霧崎がいた。
「おはよ、僚君」
はた迷惑で最も騒がしい奴が迫ってくるというのに、面倒な顔色ひとつ見せずに霧崎が挨拶をする。
少しだけ話したあと、僚がまた戻ってきた。
体の向きを横にしたまま、未だ、浮かべた笑顔を霧崎に向けている。
「……あのな、それだけ気になるなら、なんで帰ってきたんだよ。ずっと傍にいればいいだろ?」
その言葉に僚は、くるっと体を向き合わせてきた。
「バッカダナーお前は。本当になんもわかってないなー。いいか、女性の心ってのは――海ってやつと同じなんだよ」
「うみ? 海って、あの……泳ぐための海?」
「はあ? 他に何があるっていうんだ? まさか、化膿のした時の『うみ』ってか?」
「い、いや、それはないけど……突然、うみって聞いたから……で、なんで海なんだ?」
「……変わるんだよ、突然な。穏やかで、心地よいさざ波」
「ほら、もう少ししたら帰ってくるぞ。そこはお前の席じゃなく竹田の場所だろ、早く自分の席に着けって」
「ん? まあ、待てって。今から言うから、そんな事言うなよ」
へらへらと笑いながら、僚がやっと俺の方へと向き直した。
「時に龍麻、お前、怖いモノのとかある?」
「怖いモノ? ああ……これと言ってないけど……」
その返答に納得出来ないのか、僚が小首を傾げた。
「ふむ、おかしいな……。私のスーパーアイによる分析結果では、君の怖いモノは、天渡三枝高の一年三組、左端の席にいる子だと出ているのだが……」
自身の両目の前に、突き出した人差し指をそれぞれゆっくり前へと動かし、ある一点で重ねる。
ちょうど作った三角形の頂点に霧崎の姿がある。
「ああー、ないない、それはない。それは絶対にないから、さっさと戻れって!」
その言葉の後、僚が目を細め、俺を見てきた。
「な、なんだよ……」
「いい。いいって無理しなくって。分かる、分かるよ。俺だって実は怖いんだから」
「なんだよそれ……」
「まあ、それはそれで、さておいて、これが最後の質問」
そう言いながら、僚が人差し指を立て、俺の目の前で小刻みに振ってきた。
「最後の質問? 早いな」
「あぁ、もう時間とネタがない。……えぇーっとだな、龍麻。今朝、ニュースとか見た?」
「ニュース? ああー、今日は見てない……な。時報は助けてはくれたけど」
「……そうかそうか」
顎を手でさすり、何を納得したのか、今度は小さく頷いた。
「何一人で納得してるんだよ? 何か変わった事でもあったのか?」
「あってあって。いいか? この世界は常に変化している。分かるだろ? 例えば一組の香奈ちゃんの前髪が三センチぐらい短かったりとか、二組の由紀ちゃんは後ろ髪を――」
「あーあーもういいもういい! そんな事気付くのはお前ぐらいなものなんだから、俺にわかるわけないだろ? 真面目に言わないなら、俺は絶対に手伝わないぞ!」
「……ったく、そんなんだからお前は全てにおいて乗り遅れるんだよ。それじゃ常に置いてけぼりだぞ?」
「いいよ別に。今も一人でいるんだし、問題ないよ」
「将来は辛いぜー。まあ、今はこうして俺が話をしてるからいいよな。ほんといい友達をもったよお前は」
僚が慰めるかのように左肩を叩いてくる。
「自分で言うなよ。……で、結局、何なんだ? 朝のニュースがどうこう聞いてくるしよ……」
「あっ、気になる? まあ、見てないなら仕方ないよな。いいか聞いて驚くなよ?」
突然僚が声を落とした。まるで内緒話をするかのように、口元に片手を当て、顔を近づけてくる。
「実はな、今朝、この近所で殺人事件があったのよ」
「殺人事件?」
「あぁ、場所はこの近くの路地らしい。ほら、お前が来る時に通る公園があるだろ? あの辺りにある家だ」
「公園? ああ、なるほど……」
頭の中に今朝通ってきた公園が映り出される。確かにあの辺りは住宅密集地なので、路地などが多い。夕方は住宅から漏れる明かりにより、道は明るいのだが、夜になると街灯が少ないせいか、一気に薄暗くなり、人の気も全くしなくなる。
さらにあの公園は、住宅に囲まれた街の真ん中にあったとしても、その土地としては結構広く、森林のように数多くの木々達が生え並んでいる為、変わった行動をする人の目撃情報も少なくはなかった。
……しかし、その近くで殺人事件があったとは驚きだ。
「しかし、殺人事件なんて初めてだな」
「だろ。変人は出る話は聞いたことあるが、殺人鬼はな……。今朝のニュースでやってたから、来る途中で見に行ってると思ったんだが……」
その言葉に俺は何も答えなかった。その事を知れば人は興味本意で行きたくもなるだろうが、俺は行かない。そういうのはあまり好きじゃない。
「まぁ知らないなら仕方ないよな」
そう言いながら、残念そうに僚が深くため息をついた。
「……んで、その事件。犯人は?」
「いや、それがまだ。犯人は見つかってないらしんだよ。それにその殺人事件、被害者は普通の女性だったんだが、殺され方がかなり異常なんだってよ」
僚が更に声を落す。
「ニュースではよ、その女性は刃物により腹部を刺されたって言ってるけど、実際に見た奴らからの話じゃ、かなり酷かったって話よ。嘘かどうかは俺にも分からねぇーが、まず、体がバラバラの状態で発見されたんだってよ」
「バラバラ……」
頭の中にイメージ映像が造られていく。俺は急いで頭を左右に数回振り、無理矢理頭の中から消し去った。
「あぁ、んでさぁ、さっきも言ったが、警察は腹部を刺されたって言ってるけどよ。実は、腹部は刺されたんじゃなくて、何か鎌みたい物で肩から斜めに、勢いよくぶった斬ったって感じなんだってよ」
「ぶった斬る……」
頭の中にイメージ映像が造られていく。――ダメだダメだ。
「後、関係はないんだが、切り離された体はカラスとかが啄んでいて、見つけた時には原形をとどめてなかったらしい」
「啄んで……」
頭の中にイメージ映像が造られていく。うっ……、気持ち悪い。
「それと、これは新情報なんだが……」
僚が顔を近づけ、俺の耳元で小さく呟いた。
「実は、バラバラにされた死体、未だ――頭部の方だけが発見されていないらしぜ」
そう小さく呟いた後、ニヤッと笑みを浮かべながら僚が頭を戻す。
「頭部だけ……」
頭の中にイメージ映像が造られていく。……もう許してくれ。
「まぁ、これだけ奇妙だと、警察側も気味悪がってな。周りの住人にも恐怖を煽らない為に、内容を少し変更したって話らしい」
両手を出し、指を二本だけ残すと、胸元でハサミのように動かした。
「……そうか、――んで、結局、お前は俺に何を頼みたいんだ? このままだと、お前の頼み事は、この事件の犯人探しか被害者の頭探しになるぞ」
「それは、困る。俺にはそんな趣味はないし、暇もない。それに、俺は既に犯人の目星をつけているんだ」
「へぇー、誰だよ? 気になるんだが……?」
「ふふっ、聞いて驚くなよ。犯人はな――」
「……犯人は?」
「宇宙人だ」
その瞬間、俺の心が一瞬で凍りついた。それはまるで、真冬の湖に突き飛ばされたぐらいの寒さだった。
しかも『宇宙人』と発言した後の僚の顔。真顔であり、その表情が冗談で言ってるのか、本気で言ってるのかが分からない所が更に寒さを引き立たせている。
「……あ、そ。それはよかった。宇宙人が来てるなら観光が一つ増える。ついでにお前のその頭にもミステリーサークル作ってもらえばいいよ」
「いやいや、俺の毛って結構硬いから無理無理。……だってよ、よく考えてみろって。被害者の体はバラバラになっていたんだぞ? ましてや、頭部がないとか……。宇宙人以外に説明がつかないだろ?」
「なんで宇宙人が頭なんてもっていくんだよ」
「……研究?」
僚の言葉のあと、沈黙が数秒流れる。
先に口を開いたのは僚だった。
「俺たちも連れていかれるぞー!」
両手を勢いよく上げて叫ぶ僚。
「はいはい、連れていかれろいかれろ。お前が消えても誰も困らないって」
俺は呆れ、校庭へと顔を向けた。
「なんだよ冷たいなー。まあ、いいよ迎えに行くからさ」
「やめろよ! 迷惑だろ!」
「ともだち、ともだちともだちー」
僚が玩具を指差す子供のように、何度も人差し指を向けてくる。
「ばっ、バカやめろって」
「まあ、冗談はさておいて、ここからお願いの本題に入る訳なのだが……」
「えらい長い前フリだな」
「さっき、俺の質問に龍麻は『怖いモノはない』と答えたよな」
「あぁ、答えたよ」
「実はな、この前、ちぃっとばかし大変な用事があってよ……。掃除時間の時に、持ち場外していて掃除が出来なかった訳よ」
「サボっただけだろ」
「よく分かったな。んでさぁ……」
右手軽く広げ、僚が小さくため息を吐いた。
「結局、掃除してないの見つかっちまってよ。今し方『お前、昨日掃除しなかったろ?』って言われてよ……」
「あっ、分かってきたぞ。徐々にお前の考えが読めてきた。俺にその罰を一緒にさせる気だな」
「ビンゴ!!」
当てられたのがそんなに嬉しかったのか、僚が目の前でパチンと指を鳴らした。
「テレパシー、伝わるもんだな友達ってやつ」
「……あのな、なんで無関係の俺が、一緒に罰を受けなきゃならないんだ」
「いやだってよ、俺一人でやれるならやってるって」
「ええ? 一人でできないってどこの掃除なんだよ? トイレだったんだろ?」
「それが残念なことに配置替えだ。ああーくそー吉田の筋肉野郎、わざわざあんなとこにするなんてよー!」
あの時の光景を思い出してるのか、一人ふてくされる僚。
「そんなこと言ってると来るぞ? 吉田先生、百メートル九秒切るらしいし」
「あの筋肉でそんなに早く走れるわけないだろ? それより場所だよ場所」
「どこになったんだ? そんなに面倒くさい場所なんてあったかな……」
「用具室だ」
突然放たれた言葉に、
「――はあ?」
空気が一瞬止まった。
何かの聞き間違いだろう。俺はその言葉確かなモノにすべく、もう一度聞いた。
「どこって? 場所……」
「用具室」
すかさず僚が答える。
「よ、用具室……って、な、何だよそれッ!? よ、具室だと!? そこって『要塞』じゃねぇーかよ!」
――用具室。それはこの高校に通う生徒なら、必ず一度は耳にする有名な場所の一つだった。
体育館内部の西側に備え付けられた一室。その名前の通り、そこは部活などの道具を片付けて置く倉庫なのだが……その数が異常だった。
学校側は人集めの一つとして、部活の充実さもウリにしていた。
そのため、その種目に必要となる道具が徐々に増え始め、そして置き場所のなくなった今では、その全てが用具室にぶちこまれるようになった。
おかげで、一番奥の物を取り出すだけでも、手前から一つずつ取り出さないとダメになり、その配置からも、場所を理解している人物でない限りは、目的の物を出すのに一時間以上は掛かると言われている。
その事から、生徒たちの間では『難攻不落の要塞』として言われるようになっていた。
「んなところ二人で掃除できるかよ! 俺は絶対に嫌だからな! 一人でやれよ!」
「無理! 一人じゃ無理! 二人なら出来る!」
甘えたような声を出し、僚が俺の腕へとすり寄って来る。
「気持ち悪い、触れるなよ! 二人でも無理だろ、あんな所!」
「出来る! 俺達なら出来る!」
「どこにそんな根拠が湧くんだよ! どうやってやるつもりなんだ! いいか考えてもみろよ! 全部出して掃いて拭かなきゃいけないんだぞ!? 掃除が終わる頃には部活が始まるって!」
「心配するな。掃除時間の時は俺は持ち場をしっかりとしないといけない。やるのは部活が終わった後だ!」
「後なら余計に遅くなるだろ、何が心配するなだよ! ……って、部活の後なら夜になるんじゃないのか?」
「そう夜になる。一応先生は居てくれるらしいけど、帰りは付いて来てくれない。だからさ、もしだ、もし宇宙人に
「み、魅力的……? よく分からないこと言ってるが、もし拐われたとしても、俺にはどうしようもないだろ? とにかく、俺は嫌だからな! 自分の罰は自分で受けろ!」
「……どうしても駄目なのか……?」
先ほどまでうるさく吠えていた男から、どことなく冷たい目線を感じる。
「なんだよその目。当たり前だろ?」
「ふん……あっ、そうですか。あっ、そんな事を言っちゃうんですか」
僚が静かに椅子から立ち上がり、教室の中心へと向きを変えた。
「なら、仕方ないな……。俺も言いたくはなかったが、言わざる終えないな」
「何を言うんだよ」
「アレだよ。ア、レ」
アレって……何だ? その言葉が妙に引っかかった。
僚との付き合いは幼い時から知り合い、他の誰よりもお互いの事を知ってる。もちろん、いろんな場所へ一緒に遊びに行ったりもした。
しかし、そんな中でも俺は、自分の弱みなど一度も見せた事がなく、ましてや俺から言うなど絶対になかった。
なのに、アレ。一体なんの話しをしてるんだ……?
「あ、あれって何だよ」
「ん? 覚えてないのか、アレだよ。アレ」
背をこちらに向けたまま、僚がへへっと小さく肩を揺らす。……聞いた俺が馬鹿だった。今やどんなに問いただそうとも、こいつから返ってくる言葉はただ一つ。『アレ』その一言しかないだろ。
まぁ、アレやコレやと言われ所で、今の俺には全く見覚えがないし、ハッキリと言わない所を見ると、ただのはったりなのは間違いないとは思うのだが……。
「さて、報告してきますか」
「――報告?」
その言葉と共に、僚がゆらゆらと何かに導かれるように歩き出した。一体誰に何を報告しに行く……なっ……。
僚の行き着く場所。その到着地点を悟った瞬間、唖然とした。
僚が少しずつ廊下側の席にへと向かう。あの席には……!
「っちょ!? ちょっと待て!!」
俺は急ぎ立ち上がり、僚の右肩を掴んだ。
霧崎の事だ。例え他人から聞けば有り得なく馬鹿げた話でも、アイツの耳にはかなり重大な真実として聞こえてしまう。それが嘘だとしても、全てを嘘だとは思わない。
それに僚の事だ、もしかすると小さな事ですら大げさに言いかねない。
掴んだ右肩の先、僚が不気味にほくそ笑んだ顔を少しだけ覗かせる。
「わ、分かったよ。手伝えば良いんだろ。手伝えば!!」
俺は仕方なく僚の頼みを承諾した。これから待ち受ける出来事を頭に描き、後悔しながらも……。
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