フェルミ・ストライカーズ!

狐付き

プロローグ

 人々が再び宇宙へ興味を持ちだしたのはいつのころだっただろうか。

 ISS国際宇宙ステーションも2代目となり、更に外周型の民間宿泊衛星まで出来た辺りだろうか。


 そのおかげか、誰でも気軽にとまではいかないが、21世紀初頭とは比べものにならぬほど簡単に宇宙へ行けるようになった。


 フォーミュラ・フェルミオンが開催されたのもそのころだった。

 フェルミオンと呼ばれる、全長2.5メートル、全幅4メートル、全高0.8メートルほどの、ひとり乗り飛行体によるレースだ。

 機体は宇宙での活動を想定し、通常の航空機と異なり揚力の利用や混合気を禁止。燃料から得られる出力のみで飛行する。



 様々な理由から軍事利用はできなかったため、開発速度は鈍かった。それでも今後増えるであろう宇宙事業では不可欠なものとなる予定で、民間企業を中心に開発されていた。

 そんな折でのレースである。開発を飛躍的に向上させるのは、なにも軍事だけではない。競争こそが技術発展の要になるのだ。


 仮想ヴァーチャルではない、実際の空を翔るフェルミオンに、心を躍らせる少年たちも少なからずいた。

 彼もそのなかのひとりであった。


 子供のころ開催されるようになったそのレースの虜になり、将来はフェルミオンドライバーになると決意。

 まずはジュニアカートから始め、水上バイクなど、フェルミオンに必要なことならばなんでもやった。


 そんな彼に目を付けたのが、近所に住む隠居した博士、通称『じっちゃん』だ。


 博士は彼と共に、地元の町工場で仲間を募りフェルミオンのワールドチャンピオンを目指す。



 だが彼らに待っていたのはレースではなく、宇宙からの刺客であった。

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