第3話:「愚か者」「先に行け」



「先に行け」


 君はためらう。

 私はすぐに追いつくからと愚かな嘘をつく。

 するりと背を伸ばした君はひねくれてるようで素直で、素直な癖にひねくれていて生意気だった。

 それでも私が保護者で、君はまだ子供だった。



「人を呼んでくる!」



 そう言って駆けだした君の後ろ姿に安堵する。

 子供を一人走らせた愚か者だ。

 親切な誰かの温情を期待している愚か者だ。




 地鳴りが聞こえる。



 私は動けない。

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