Re-17 ~人間にほど近いロボットとロボットにほど近い人間の物語~
屈橋 毬花
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第X次人工知能ブーム。人工知能も既に人間並みにまで発達した現在、ロボット開発チームは、新たなプロジェクトに挑んでいた。
【アンドロイド開発プロジェクト】
人工知能が人間並みにまでなったといっても、現段階では学力知能が人間に並ぶほどになったまでである。今回のプロジェクトでは、アンドロイド。つまり、人間に程近いロボットの開発をしようと試みているのだ。学習能力、会話能力を研究する中、特に開発チームが何より目を置くところは、『感情』プログラムの進展。まだ人間並みにまでは達していない『感情』に目をつけたのだ。
そして、ロボット開発チームはもう一つ。また別の視点から挑み始めるプロジェクトが密企画として進められていた。
「───駄目だ。くそっ」
一人の研究員が声を荒らげた。途端、Re-17の肩が一瞬びくりとする。
「学力は人間並み、といえば人間並みだが、知能機能は設定年齢の17歳の平均知能に相当しない」
「だが、プログラムにミスはないはずだ」
「こいつ自身の学習機能スピードが遅いのかもな」
「感情プログラムは完璧なのに、どうして、学習機能が……」
研究員が眉間に皺を寄せて彼をジロジロと見る。
「す、すみません」
Re-17は眉尻を下げ、研究員らに謝る。自分の目の前にあるモニターに目をやる。学力検査の結果が映るそれは、あまり、いいとは言えない。
「大丈夫よ。学習機能なんて直ぐに発達するわ。貴方はまだ、日が浅いんだから」
Re-17。彼は【アンドロイド開発プロジェクト】で唯一成功といえる。しかし、感情と会話プログラムの容量が膨大なせいか、学習機能の発達が比較的遅いのが現状なのである。
女研究員はRe-17の頭へ手を伸ばし、優しく撫でて微笑んでやった。
「さあ、部屋へ戻って少し休みましょう」
「はい…」
女研究員は検査室のドアの開閉スイッチを押し、彼と共に検査室を出た。
長く延びる廊下を二人並んで歩く。
Re-17は自分の肩ほどの背丈である女研究員を見下ろす。
「いつもすみません。
「そんなに自分を責めないで」
博美は自室のドアを開け、Re-17を部屋に入るように促す。部屋へ入ったRe-17は特等席に腰を下ろす。
「私にとって、貴方のような感情プログラムと会話機能に特化させたロボットを作るのは初めてのこと。上手くいかないことは当たり前のことよ。これは、貴方が目を覚ましてから何度も言ってきたでしょう」
「でも、僕は」
───先生に申し訳ない。
Re-17は人間とほぼ同じ程度の感情は持っていた。博美の開発は業界の中で大きな発展に貢献をした。だが、業界は笑っても、Re-17は笑うことができなかった。感情を持っているが故に、より上を目指す研究者たちの期待に応えられずに苦しんでいるのだ。
「Re-17」
俯く彼を博美は抱き寄せた。頭を優しく撫でる。
「ごめんなさい。貴方に辛い思いをさせてるわよね」
でも、と博美は続けた。
「この辛さを乗り越えた時、きっと私たちは笑っていられる」
「先生」
博美がRe-17に向けた笑顔は何かに耐えているようだった。
───辛いのは僕だけじゃないんだ。
Re-17は真っ直ぐに博美の目を見て頷いた。
「
ノックをして、一人の男性研究員が部屋に入り、博美を呼ぶ。
「直ぐに向かうわ」
博美の表情は変わり、鋭い眼光を放つ。博士と呼ばれる者の目だ。
「先生、被検体って」
人工知能に携わる博美が被検体と関わることが、果たしてあるのか。それが、Re-17に疑問を過ぎらせた。
「貴方には関連しないことよ。じゃあ、しっかり休むといいわ」
博美はRe-17に音楽プレーヤーの用な形をしたバッテリーを渡し、部屋を出ていった。
Re-17は渡されたバッテリーに繋がるイヤホン型のプラグを耳に差し、バッテリーの電源をオンにした。
───被検体。
Re-17にはその存在が頭にこびりついたように離れなかった。
To be continued…
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