市場経済の勝利

冷泉 小鳥

序文

 世界は市場経済の勝利した領域と、いずれ市場経済が勝利を収めるであろう発展途上領域に分けられる。現在では、かつて市場経済の対抗勢力として人気を集めていた「東側諸国」は崩壊し、社会主義の輝きも失われつつある。これはとてもいいことだ。


 市場経済においては、社会の基本単位は個人であり、家族でなければ国家でもない。家族を基本単位として構築される社会がもし実在したことがあるとすれば、それはお互いの顔が見える距離で家族が寄り集まって暮らしていた部族社会だろう。部族社会はある意味では機能するが、現代人が享受している文明の基盤としては不適切だ。互いに顔の見えない人々を相互に協力させて有益な目的に労力を向けさせることができるのは、市場経済だけだ。


 「働けば豊かになれる」という市場経済の基本スローガンによって人類がいかに豊かになったかは、想像すらできないほどだ。「働いても生きていけるかどうかすら分からない」という社会がありふれていたことを思えば、これは奇跡と呼んでも差し支えないだろう。


 市場経済の素晴らしさを知りたいのであれば、スーパーやコンビニに行けばいい。いつ行っても種類豊かな商品が豊富に売られている。「金で買えない物はない」と主張しても、あながち間違いとは言えないだろう。


 「労働者は搾取されている」というのは誤りだ。搾取とは詐欺や窃盗と類似の概念であるが、詐欺や窃盗の被害者は即座に警察に訴えるのが常であるのに対し、搾取されているはずの労働者がそうした行動を取ることはほとんどない。要するに、これは「俺の給料をもっと上げろ」のような、人類であれば誰もが持っているような利己的な衝動なので、真に受けない方がいい。


 田舎ではありふれている、地域共同体は市場経済を補完することはできるかもしれないが、代替案とはならない。田舎のそうした後進性に息苦しさを感じた人々が次々と都会へと移っていったからこそ、田舎は衰退し、都会暮らしをする人々は増えている。


 この文章は市場経済の素晴らしさを伝えるために書かれた。

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