第9話 男と女の屋根の下

これは私の憶測になる。

1つ目の屋根の下の、男と女の話だ。


彼らは、共依存しているのだろう。

今は書類上では離婚しているが、交流は持っているらしい。

持っているらしい、と言うのは、2年ちょっと前に、たまたま男と会ってしまったとき、「女に会ってくれ」と言われたからだ。

さんざん殴り倒して罵声を浴びせていた女に、何の未練があるのか知らないが、男にとっては今でも必要な女なんだろう。


今にして思えば、女は母親になりたかったのかもしれない。

母親になるには、子供と一緒に成長する必要がある。

それが、女にはできなかった。

とてもじゃないが、成長できる余裕のある環境ではなかったからだ。


私が歳をとってから、「家族になりたい(意訳)」と言われたことがある。

今更ごめんだ、と私は答えた。

家族が欲しかったのなら、もっと早くに見切りをつけるべきだったね、と。


女もまた、複雑な家庭環境で育っていたらしい。

詳しい話を聞いたことはないが、少なくとも、女の実家のことを私は何も知らないし、女も話そうとしなかったから、たぶん良い関係ではなかったのだろう。

家族の在り方を知らなかった女だから、「家庭を持つこと」は女にとって憧れだったのかもしれない。

それが、どんなものであれ。

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