死者はいつまでも踊り狂う
魔桜
1
「01話 『凶悪犯、死す』」
護送車は燃えていた。
曲がりくねった山道の途中で、護送車は横転している。
車の中にいた護送中の凶悪犯達。
その内、二人だけが生き残った。
一人は、気弱そうな表情をしている少年。
もう一人は、それとは真逆に意志の強そうな瞳をしている少年だった。
二人は地面を這いながらも、なんとか抜け出すことができた。
脱走するつもりなどない。
だが、早く病院に行かなければならない。
二人の少年の内の一人、気弱そうな少年が重体だ。
服の端を破いて出血箇所を塞ぐが、損傷個所を見るに、きっともう――
「いいです……もう……十分です……」
倒れている少年は力なく笑う。
「生きるんだろ? 生きて、あの人のためにってさっき――」
「だめです。僕のためにあなたがここから離れたら脱走扱いになる。そしたら、あなたの刑期は長くなってしまう……。それに、もう、僕はだめ……です……。病院に行っても、もう……間に合いません……」
抱き起す少年は、その言葉が真実だということを悟る。
脈拍が弱くなっている。
瞳に色が無くなっていく。
体温が低い。
助からないのなら、せめて、せめて、何かできることはないかと軽傷の方の少年は問うことにした。
「……何か、何か言い残すことや、俺にできることはあるか?」
「う、あ……」
もう、大きな声で話すことすらできないらしい。
口の端から血を流す。
そんな可愛そうな少年をみやって、泣きそうになりながらも耳を口元へとそっと寄せる。
その要望は、かなり長かった。
何度も気絶しそうになっていた。
だが、最期の力を振り絞って、頼み込んだ。
死ぬことを覚悟し、自分の意志のバトンを繋いだ。
「分かった。お前の言うとおりにしよう。――約束だ」
満足そうな表情を最後に、優しい顔をした少年は息をひきとった。
残されたもう一人の咎人は、約束を果たすと自分の心に誓った。
どんなことがあっても。
どんな手段を使おうとも。
絶対に。
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