魔法書店【琥珀堂】

冬空ノ牡羊

第0話

 魔法。それは、人間の理解を越えた不可思議な力。魔力と呼ばれるエネルギーを消費することで、様々な現象を顕現させるもの。魔力は霊力を材料にして生成される。


 霊力。それは、命ある全てのものが無意識に発するもの。生成量は極々微量のため、その存在に気付けた人間はそうはいない。


 でも、神の悪戯かDNAの異常かは知らないけれど、稀に霊力の生成能力が頭一つ抜きんでている人間が産まれることがあるわ。でも、そんな彼ら彼女らが霊力を用いられるのは、精々占い程度。魔法を唱えるまでには至らないわ。

 世に言う魔法使いは、それとは比べ物にならないほどの霊力を生成できる者しか、なることの出来ない職業。だから、あなたがいくら正確に呪文を唱えたからって、魔法を唱えることは出来ない。

 だけど、そんなあなたでも魔法を使える方法がたった一つだけ存在するの。己の霊力を使わずに魔法を唱えるある方法が。


 知りたい? いいわ、教えてあげる。


 昼空と夜空が出会う頃。霧に閉ざされた道を止まることなくただ真っ直ぐ進みなさい。そうすれば、いつか自分に死の魔法を使うことが出来るわよ。


 フフフッ。冗談よ冗談。人間に魔法はそう簡単には使わせるわけにはいかないのよ。ルールって程のものではないわ。どちらかといえば、モラルというやつね。モラルの意味、知ってる? 道徳と言い換えればしっくりくるかしら?

 まあ、本当に心の底から求めるのなら、私は拒みはしないわ。いつでもいらっしゃい。辿り着ければ……の話だけれどね。












 ……リヴィ様、もう行きましたね……。接続は大丈夫でしょうか……。あ、大丈夫そうですね。

 では、コホン。


 どうにもならない悩み事。神様任せにする前に、魔法書に頼ってみませんか? 人智を超えたその力で、あなたの願い、叶えます。

 魔法書店【琥珀堂】。お近くの異次元空間で待ってます♪ 夢の中でそっと願えば、琥珀の招待状を全国どこでもお送りしますよ。


 ……ふぅ~。ちゃんと宣伝できました。これでお客さんも増えま……って、あ、リヴィ様! あ、いや、違うんです。これはその、えと、あの、べ、弁解の余地を!!

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