008.Clavinet~クラビネット

クラビコードではない。

そもそもクラビコードとは、テーブルに乗せられるくらいの箱の中に何本も弦が張られ、鍵盤に直結したタンジェントという金属片が下から弦を叩くという、至って簡単な構造をした鍵盤楽器である。

ハープシコードと同期の楽器であり、鍵を押している間、指を動かすとビブラートを掛ける事が可能だった(現在のアフタータッチやホリゾンタルタッチに近い)。

しかし、はるかに音が貧弱な為、演奏には使われず、専ら練習用として使われる傾向があった(クラビコード用の楽曲はある)。繊細な楽器であった故に、バッハの息子は「クラビコードが上手に弾けないのであれば、チェンバロでさえ弾けるはずもない」と言うほどだった。

クラビコードという名前には「鍵盤(クラビ)」と「弦(コード)」という意味があり、本体のその簡単な構造から付けられている。

対してこのクラビネットとは、形状はクラビコードと同じく箱型で、鍵と一体化したゴム付き金属のハンマーで、鍵のすぐ下に張られた弦を叩き付けて音を出す方法を持っている。弦の下にはピックアップが装備され、アンプなどを通して発音される。いわば、エレクトリッククラビコードである。

ファンクなどに用いられているホーナー社のD6などが有名。というか、クラビネット自体がホーナー社の製品である(国内製品でこのサウンドが「Clavinet」ではなく「Clav.」などと書かれているのは、商品名であるため)。

鍵盤とハンマーが直結しており、弦がすぐ下に張られているために、キーストロークが5ミリと非常に浅く、素早いアルペジオなどの演奏に向いている。

気温が高くなると、ハンマーのゴムが弦に張り付いて、戻らなくなる現象もあった。

ピックアップのトリガーが変えられるスイッチが2つあり、音色のバリエーションがあったほか、弦を押さえて短い音を出す為のミュートレバーが付いていた。

ホーナー社はこれの他に、ピアネットやチェンバレット、オルガネッタという物も作っていた。

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