掌編小説集
鈴井ロキ
苦味と甘味
「ねぇねぇ。それ飲ましてよ」
ベッドに寄りかかりながら雑誌を読んでいると、後ろからそんな声が聞こえてきた。
ちらりと視線を“それ”に移すと、青い色が特徴的な缶コーヒーが目に映った。
視線を元に戻し、後ろのそいつに向かって疑問を投げかける。
「なんで?」
「飲みたいから」
分かってはいたが希望した返答は得られず。
「だからなんで?」と返そうと思ったがどうやっても期待する返事が返ってくるとは思えない。
また視線を移して缶コーヒーを手にとってそいつに渡してやる。
「ありがと」
手短に礼を言ったかと思った次の瞬間―――
「うっ!」
予想通りのリアクションをしているらしい。
視界の端に何かが入り込んで、視線を動かすと例の缶コーヒー。
「もういらない」ってことらしい。
受け取って一口飲んでからあった場所へと戻す。
「よく飲めるね」
「慣れだ慣れ」
「ふぅ~ん」という適当な声を返したかと思うと、そいつはベッドから降りて台所へと向かっていた。
多分、アイスでも食べに行ったんだろう。
………そんなに苦いか?ブルーマウンテンって。
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