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まだ七月になっていない校内で冷房を使ってもいいと言う許可が下りている教室は限られている。職員室に保健室、あとこの部屋位だ。一昔前のお年寄りなら「学校で冷房使うなんて!」と悲鳴を上げそうな所ではあるが、今はヒートアイランド現象なども問題化しているし、年々気温は上昇しているのだ。冷房を使わないと健康被害だって起こるし、おまけに熱暴走で機械が壊れる事だってある。だから学校も許可を下ろさない訳にはいかない。授業で一体何人分の機械を使うのか、もし熱暴走で壊れた場合一体何台買い直さないといけないのか、それらを考えたら冷房代の方が安いと言うのは日の目を見るより明らかである。
蝉の鳴き声はまだ響かない中で、カタカタとキーボードを叩く音が響き渡り、その時々でペンタブレットがガリガリと線を引く音が続く。
「ねえ、これどうなるの? 新作のプロット、随分と作風変わってるけど」
「うーん? そう? そこまで変わってないと自分では思ってるんだけど」
「いやあ……主役交代は賛否両論じゃないかなあ……」
「でもさ、課金するのって高校生より大人の方が多くない? だからターゲットユーザーに年齢合わせただけなんだけどさ」
「それでもさあ、学園もののコンセプトから外れない?」
「いや、外れないし外さないよ」
キーボードが叩かれるたびに、モニターには文字の羅列が吐き出される。モニターの一つは日本語の小説のような会話文のような文章群は、モニターの一つは日本語に混ざって意味が分かる人にしか判別つかないような英単語が並べられていた。
「テーマは青春なのは変わってないしねえ」
「はあ……それだったらいいんだけどさ。でも今回は初めてだから許可取りに行かないと駄目だよね」
「そりゃもちろんだよ」
少女達の会話の中、部屋のドアが開いた。振り返ると顧問の先生だった。少女達は「こんにちはー」と挨拶をすると、先生は「おお、頑張ってるな」と笑った。
「何でもいいけど、今回もちゃんと許可取るんだぞ?」
「はーい、毎回毎回ちゃんと取ってますしー」
「全部読んでくれるし意見もくれるので正直助かってます」
「そうかそうかー……ん? 今回は主役を変えるのか?」
誰も使ってないパソコン机の上には、少女達の描いたラフ画が存在し、ゲームのキャラの絵が描かれている。主人公は基本的に顔を出したりはしないものの、一応頭だけ、手だけはスチルが描かれるのがセオリーなため、ラフ画は存在するのだが、前の主人公は制服を着ていたのに対して、今回はエプロン着用と明らかに学校の生徒ではなかったのだ。
少女達はにこやかに笑う。
「今回は先生にも前にも増していっぱい読んでもらいますから覚悟してて下さいねー」
「はー、何だ何だ?」
「えっへっへー!」
先生が目を白黒させる中、少女達は顔を見合わせて笑うばかりだった。白いセーラー服が眩しく光り、窓からの射光の強さがいよいよ夏が近付いている事を思わせた。
テストさえ乗り越えた先には、夏が待っている。
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