第2話 呉博士の逆襲!

プロローグ

 理想、だったのだ。

 それも、とびきりの。

 顔は特上。頭も特上。口は悪いが、気立ては良好。何でもできて、何でも話せる。

 もともと、結婚願望などなかった。だが、この男となら結婚してもいいとまで思った。いや、この男としか結婚なんてしたくない。

 しかし、今の友情関係も居心地がよくて、捨てがたくて。しばらくは様子を見て、タイミングをはかろうと思った。

 それなのに。

 あの日、キャンパスの一角で、同級生の一人を目で指して、あの男は彼女にこう囁いたのだ。


「俺さ……あのが好きなんだよ……」


 ――仕事に生きよう。

 少女のように恥じらう男の顔を見つめながら、彼女は心に誓った。


 知り合ってから、わずか一ヶ月後のことだった――

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