第4話 利久の独壇場とグラマン株急上昇
「ええ!グラマン来れないの!?楽しみにしてたのにー!」
「あう、残念です」
団長宅に到着した里奈と
「まあ、そのうちオフ会とかで会える機会もあると思うよ」
そんな団長からのフォローの声にもしょんぼりしたままだ。こいつらどんだけグラマンに会えるの楽しみにしてたんだよ。
「どうも初めまして!
燈色と里奈とは対照的にめちゃくちゃ元気なのは、俺の中学からの友人「火雷利公」だ。団長宅で、桐菜さんの姿を見つけるなり、はりきって自己紹介を始めている。
「こ、こんにちは。
そして一方の桐菜さんはと言うと、利久からの一方的なアプローチに若干引き気味だ。
「いつもゲーム内でお世話になってます!いやーそれにしてもあの『千隼』さんが、こんなに美人なお姉さんだとは思ってもみませんでした!」
「あ、ありがとね」
「あ、そうだ!あの良かったら携帯電話のアドレス交換してもらってもいいですか?ほら、緊急の用事とかあるかもしれないし!」
「え、えっと、あ!今日スマホ忘れてきちゃった!」
「えー!あ、じゃあ、知ってる人から聞いといてOKですか?僕これでも結構マメにメー・・・」
パコーン!
利公の後頭部に、里奈からのスリッパでの華麗なアタックが決まった。それにしてもいい音がしたなあ。
「な、なにするんですかー!」
「あんたしつこいのよ!桐菜への連絡なら私が代行してあげるわよ」
「い、いや別にそれは・・・」
「無いならメアド必要ないじゃない。はい、この件はおしまい」
里奈から一方的に桐菜さんへのアプローチを終了させられて、利久の奴見てて面白いくらいしょんぼりしてる。だが里奈にはGJと言っておこう。桐菜さんへのナンパなど、天が許しても俺が許さん。
さて、今回のお呼ばれ夕食会は、
「このチキン南蛮、今まで食べたのと全然違う!」
「そんなに喜んでくれたら作った甲斐があったなあ♪」
「明海ちゃんの作った南蛮はホント最高なんだよ!タルタルソースも、何度も改良を重ねた自慢のタレなんだ」
がっついて食べている俺と利公をみて、明海さんはすげえ嬉しそうだった。団長も珍しく興奮気味に、奥さんが作る料理について熱く語っている。
あと、桐菜さんが作ったっていう、オリジナルの野菜ドレッシングが、これがまた美味かった。人参と
「ねえ、燈色。帰りに料理の本買って帰ろうか?」
「はい、私もそれを考えていた所です」
そして、圧倒的な女子力を見せつけられた燈色と里奈が、こっそりと料理スキルの上達を誓い合っていた。でもこの二人、たぶんすぐに投げ出すと思う。
「先輩、何か言いましたか?」
「な、何も言ってないけど」
「そうですか、気のせいかも・・・」
そう言って、再び里奈と話し出す燈色。一瞬ゲームでやってるみたいに、考えてる事を口に出してたかと思っちゃったよ。あいつはエスパーか!?
さて、美味い料理を食べさせてもらって、食後のコーヒーまでサービスされた所で、今回の2番めのテーマを、みんなで話しあおうかとなった。
応接間の中央のソファーに団長が座り、左右の3人掛けソファーに俺たちが座る形で話し合いを始める。
団長から見て、右側ソファーには、明海さん、桐菜さん、俺の順で、左側ソファーには、燈色、里奈、利久の順で座っていた。部屋の出口にに一番近い席に、男子二人が座っているところに、このギルドでの男女の力関係が
そんな事を考えていると、突然桐菜さんが、俺の首に腕を回して自分のほうへ引き寄せる。
ぽよん
!?俺の左腕に柔らかな感触があった。今の感触は絶対あれだ!なんという破壊力なんだ・・・ごくり。しかしふと見ると、桐菜さんは明海さんも自分のとこへ引き寄せている。
「へへー、仲良し二人に囲まれて嬉しいなー♪」
「私も桐菜ちゃん好きだよー!」
「キャー嬉しー!」
などと、きゃっきゃと喜んでいる。いやあ、今日は本当にここに来て良かった!桐菜さんのぽよんもあったし、可愛い女の子二人のキャッキャウフフしてる所も見れたし言うことは無いな!
ふと前方を見ると、利久の奴が血涙を流しそうな悔しそうな目で俺を見ていた。なので、もうちょっと利久に見せつけてやろうかと思ったが、燈色と里奈が俺を物凄い寒い目で見ていたので、速攻で桐菜さんから離れることにした。非常にもったいないが、背に腹は代えられん(約:後が怖い)
「えっと、一応グラマンからの提案なんだけど、要塞バトルで同盟を組まないか?ってことらしいよ」
俺が二人からの冷視線で
「同盟?」
「うん。グラマンからさ、要塞バトルの同盟関係を自由同盟と結びたいって、要請があったんだ」
里奈の質問に団長は丁寧に答えていく。そういえばこいつらその話聞いて無かったんだった。
「結構本気でバトルに参加したいらしいんだ。それこそ、ブラックアウトとかシャイニングナイトみたいにね」
「それグラマンが言ったの?」
「うん、かなり本気らしいよ」
里奈の質問に答える団長。確かに、実明さんは本気だったと思う。じゃなきゃ、俺らに同盟組もうなんて言ってこないだろう。
「あいつ・・・やるじゃない!」
「ですね、わたしもあのナル男を見直しました」
「グラマンにそんな甲斐性があるなんて思わなかったわ!」
「どうせやるなら目指すはトップです」
燈色と里奈の奴、今回の提案にはかなり前向きなようだ。二人の間でのグラマン株も急上昇しているようで一安心だ。まあ、甲斐性もくそも、グラマンは女の子なんだけどな。そしてこの提案には利久もノリノリで賛成している。
しかし、今の二人の反応を見てると、別に実明さんは正体を隠す必要は無かったんじゃないかなあと思う。この二人の反応を、ぜひ今度実明さんに教えてやろうと思った。
「じゃあ、とりあえず同盟の件はOKってことで。あと、バトルは自由参加だからね。無理する必要ないよ?」
「はーい」
「じゃあ、話し合いはここまで!あとはゆっくりご歓談下さい」
色々と細かな点を話し合った後会議は終わった。その団長の言葉と共に、待ってましたといわんばかりに、利久は桐菜さんのとこへ向かって行く。さっき里奈に言われたばかりなのにあいつすげえな。
グループは3つに分かれたみたいだ。俺と団長と明海さんとで、おいしいチキン南蛮の作り方について、里奈と燈色でブラックアースについて、利久と桐菜さんは一方的に利久が話している。
しかし明海さんの料理の作り方はとても参考になる話ばかりだ。今日教えてもらったレシピは今度実行してみよう。お袋に教えるのも良いかもしれない。料理の話の後は、新しいグラボについてあーでもないこうでもないと話していた。
ふと、桐菜さんの方を見ると、あれから20分くらい経ってるにも拘わらず、利久の独演会が続いているようだった。さすがに桐菜さんもうんざりした顔をしている。
「桐菜さんて彼氏とかいるんですか?」
「ご想像にお任せします」
「僕今フリーなんですよ!」
「へー」
「いやー奇遇ですねー」
桐菜さんの返事が段々とおざなりになっているんだが、利久の奴は全く気付いていない。あいつすげえな。あのコミュ力最強の桐菜さんの心をここまで閉ざしてしまうとは。と言うか、このままだと桐菜さんがかわいそうなので、助け舟を出すことにする。
「師匠」
「何?」
俺は里奈に声を掛けた。里奈と燈色はさっきから、
「なあ、その話、利久の奴も混ぜてやってくれよ。あいつも確か行ったことが無いはず」
「ああ、それ良い考えね!ちょっと利久ー!」
哀れ利久。里奈の奴に「いつまで千隼を困らせてんの!あんたもこっちで深淵の森について勉強しなさい!」と怒られ、本日2回目の強制連行となった。俺も深淵の森B2は詳しくないので、一緒に混ざってみるか。
そしてそうこうしているうちに、楽しい時間は過ぎていき、いつの間にか帰宅しなきゃいけない時間になっていた。
「それじゃあ団長に明海さん、お邪魔しましたー。今日は楽しかったです」
「いやいや、こっちも楽しかったよ。またこういう機会を作って集まりたいね」
「またねダーク君」
「外でダーク君は勘弁して下さい!」
そんな挨拶をしつつ、俺たちは全員電車で来ていたのでみんなで駅へと向かった。桐菜さんだけが俺たちとは反対方向のホームなので、改札口でお別れになる
「じゃあね千隼。またゲームで」
「またね里奈ちゃん」
みんなそれぞれ桐菜さんとあいさつした(利久の挨拶だけは延々と続きそうだったので、里奈が無理やり終了させた)後、最後に俺も挨拶して改札口を抜けようとしたら、桐菜さんから手をぎゅっと握られた。
一瞬ドキッとしたが、よくみたら、メアドと電話番号が書かれた紙を渡されていた。
「里奈ちゃんとは交換したんだけど、真司君にはまだ教えてなかったなと思って。また何かあったら相談にのるからねっ」
そう言いながら軽くウインクして来る。
桐菜さんのメアド ゲットだぜ!
帰ったら速攻で、自分のスマホに登録する事にしよう。
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