第22話 グランて誰?

 はあああああああああああ、疲れたああああああああああ!


 俺達はグラマンが連れて来てしまったモンスター3匹をなんとか倒しきった。かなりグダグダだったが、なんとかグラマンも無事なようだ。


グラマン「いやあ、助かりましたエリナ殿!あの3匹に追いかけられた時は死を覚悟しましたからなあ!」


 すっげえでけえ声(文字ね)が、疲れた体にひびき渡るぜ・・・。と言うか・・。


ダーク「なあグラマン、ああいう場合は、せまい場所へ逃げるのがセオリーだろうが。なんで広い場所へ行っちゃったんだよ」


グラマン「なんと!?そういうものなのか?」


 ええ?確かこいつ、俺よりもブラックアース歴長かったよな?それなのに、基本中の基本知らないとかあり得んの?


エリナ「ねえグラマン。あなた、所属ギルドどこだったっけ?」


 俺がそんな事を一生懸命考えていると、姉貴がグラマンに質問していた。


グラマン「シャイニングナイトですが。それがどうかしましたか?」


 え!?こいつシャイニングナイト所属かよ!超似合わねえ・・・・・。


 シャイニングナイトとは、俺達が遊んでいるサーバー「カシオペアサーバー」でも指折りのバトルギルドだ。常時どこかの要塞を所持しており、ギルドメンバーも桁違いに多いと聞いた。


グラマン「似合わないとはどういうことだ!?」


ダーク「あれ?なんで俺が考えてることわかったの?」


燈色「思い切り口に出してましたよ」


千隼「うん、出してたね」


ダーク「ホントに?でもまあいっか」


グラマン「よくないわあああああああああああああああ!」


 里奈が、そんな俺らのやり取りをあきれ顔で見ながら、再びグラマンに質問する。


エリナ「でもグラマン、シャイニングナイト所属なら、バトルに参加しなくて良かったの?」


 あ、そういえば、さっきのバトルログでシャイニングナイトが砦を取ったって出てたな。


グラマン「ああ、私ぐらいの地位になりますと、バトル参加免除さんかめんじょの権利が与えられますからな」


ダーク「そんな事言ってさぼってたんじゃないのお?」


グラマン「私の剣にちかってそのような事は一切無いと断言する!」


 こいつの返しはイチイチ面白いんで、ついいじりたくなるんだよなあ。うちのギルドには居ないタイプだ。


 そんな馬鹿な話をしている俺達を「はいはいわかったから」と軽くあしらって、里奈は再びグラマンに話しかける。


エリナ「でも、シャイニングナイトなら、高レベルのプレイヤーたくさんいるでしょうから、狩りの基本とか教えてもらっといた方が良いわよ。レベル100プレイヤーも確かいたわよね」


 ええ!と驚く俺と燈色ひいろ


 レベル100プレイヤーってのは、このサーバーに現在3人しかいない超高レベル者の事だ。レベル100になると、L特典として、攻撃速度が段違いのスピードが得られる「ブラックナイトの変身リング」というのがもらえる。


 ただ、レベル100になる経験値は目眩めまいがしそうなほど多く必要になる。なので、モンスター殲滅せんめつ速度の早い「剣士」や「武術家」ばかりで、後衛職のレベル100達成者はいないらしい。


 俺も一度だけブラックナイトに変身したプレイヤーを見たことあるけど、めっちゃカッコいいんだよ。


ダーク「いや、そんな凄いギルドに所属してるなら、こんな所で俺らにちょっかい出してないで、そいつらと一緒にギルドハントやってろよ」


 たぶんっつーか、こんな深淵しんえんの森とかじゃなくて、自由同盟じゃ絶対行けないようなダンジョンとか間違いなく余裕じゃねーの?


グラマン「まあ、通常は神秘の塔や罪人達の流刑場るけいじょうなどが、ギルドハントの主な狩場となっているな。」


 し、神秘の塔に流刑場だとおおおおおおおお!すっげえうらやましい・・・。


燈色「そんなに凄い場所なの?」


千隼「まあ、今行ける狩場としては、経験値、レアアイテム、共に最高ランクかな。」


燈色「おお・・・」


 たぶん今の俺が行ったら、瞬殺しゅんさつされるくらい敵も強いらしいけどね・・・。


 あれ?でもグラマンの奴、そんな狩場に行ってる割には、レベルも俺と大差なかったし、装備もあんま変わらんぞ?どういうこと?


エリナ「よし!じゃあ今日はこのくらいにしときましょうか。」


 里奈の奴が、今日の訓練は終了宣言を出してきたので、俺は考えるのを中断した。


千隼「今日は「深淵のスクロールでたから、ちょっとほくほくだねえ」


燈色「私、これ見たの初めて」


エリナ「え?そうなの?まあ、ここに通ってる内に何度も見れるようになるわよ」


千隼「そうそう、そしたら新しい装備もまた買えるしね」


燈色「奇術師の新シリーズ欲しいかも」


千隼「あー、あれは奇術師やってたら避けて通れない装備だもんね」


 そんな女子達の会話を俺は微笑ほほえましく見ていた。


 いやあ、俺はこういうのを見たかったんだよ!年頃の乙女達が、キャッキャウフフしてる姿!今日一番のご褒美ほうびだな、うん。


燈色「先輩やっぱり変態」


 気が付けば、燈色と里奈が冷めた目で俺を見ていた。千隼さんの苦笑いしながら俺の方を見ている。


ダーク「え?なんで!?」


燈色「口に出してましたよ。年頃の女の子がどうこう」


ダーク「え?また?」


千隼「ダーク君・・・・」


エリナ「ダーク・・・」


ダーク「いや、違うんだ!待って、そんな目で俺を見ないで!」


 考えてた事をいつの間にかチャットに打ち込んでいたとは、俺って天才か?俺達がそんなやり取りをやってると、グラマンが会話に参加してきた。


グラマン「このギルドは大変仲が良いですなあ」


ダーク「え?あ、そう?そうかもな!」


 俺は、自分への軽蔑けいべつ眼差まなざしから逃れるため、グラマンの会話に全力で返答する。


ダーク「いやでも、大抵どこも似たようなもんじゃないの?」


 俺のその答えには返事をせず、「では、私はこれで」とだけ言って、グラマンは帰還の魔法で最寄もよりの街まで帰ろうとしていた。しかし、帰ろうとしていたグラマンをさえぎり、千隼さんが話しかけている。


千隼「ねえグラン。最近のギルドハントの調子はどうなの?」


グラマン「さあ、私にはわかりかねますな」


千隼「そう」


 そして今度こそグラマンは最寄りの街へと帰還していった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 え?何?何なの今のやり取り。てか、グランて誰?もしかしてグラマンの事?


 俺と同じく、わけがわかってなさそうな燈色や姉貴と共に、俺はPCのモニター越しに、千隼さんの方をぽかーんと見つめていた。

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