記憶のロストストーリー

どれが必然だったのだろう


あれは突然ではなかった

それは偶然ではなかったと信じたい

これは当然私の話


どっちに私が居れば良いだろう


あっちには私の引っ越し元の県

そっちには私の通っていた小学校

こっちには私の家がある


どの時も一人だった


あの時はただ耐え続けた

その時はただ自責の念に苛まれた

この時はただ自分を探した


どこに生きる意味があったのだろう


あそこに逃げ込んだ意味はあった

そこに歩く意味はなかった

ここに押し殺してしまう意味はない


どちらに私の意志があっただろう


あちらに幼い意志が転がっていても

そちらに同じ意志があるかなんて知らない

こちらに同情する意志なんていらない


どうして変わることを忘れたのだろう


ああして曲線を描いて忘れたのだろうか

そうして忘却への恐れを忘れたのだろう

こうして唯一の自分をあの夜に忘れたのだ

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