沢山のブレスレットを着けた少女の話

「はい。なんでしょう?ええ、一人で来ました。よく分かりましたね、はい、高校生です。過去の話ですか。……話さなくちゃいけませんか?……そう、ですか。え?サービス?素敵なハーブティー……そんなに聞きたいのですね。分かりました。

私が両腕に沢山のブレスレットや腕時計をしているのは、腕への自傷行為を抑制するためです。……こう見えて、私は対人恐怖症で、特にあがり症がひどいんです。学校でも指名されただけで震えが止まりません。人に触られるのが嫌いです。いじめの経験や、虐待から、手を振りかざされたりなんかすると、体が凍り付いたようになって動けなくなるのです。驚くと四肢が硬直するヤギがいるじゃないですか。そんな風になって、交通事故などで真っ先に天へ召されるのは私だと思います。いいえ、そんな反応しないで。誰かが助かるならそれでもいいと思っているの。最近はSNSで自傷行為や自傷発言なんてよく見かけるけれど、全く共感しないとかそれほどでもないですけれど……やっぱり痛がり屋さんはどうにかしてる。私も痛いのは人並みに辛いもの。それでもイライラしてしょうがないこともあるの。物に当たってしまったりするのは、後から悲しくなる。でも、自分の心だけを傷つけるのも傷つけられるのも本当に苦しい。私には救いはない。少なくとも、あと二年は。それに、誰も助けられない。無力なの。無気力なの。発言できない。発言権もない。ね、……こんな話重いでしょ。でも聞いてくれてありがとう。これで、飛び降りる覚悟も固まるかもしれないし」

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