第37話 幕間の幕間
「いいですか…。失ってからじゃ遅いんです。すべてが零れてからでは集めることなんてできはしない…。恋や愛なんて傲慢に捕まえなくては、手に入りません…。考える間も手放したりなんてしてはいけないんです。それが目の前から消えることも、誰かにかっさらわれるのもゴメンです…。」
巧さんは悲し気に。でも、この人がこんなに感情をあらわにしているのを、初めて見た。
「ただいまー…。巧、大丈夫?」
タイミングを見計らったようにナツミさんが戻ってくる。
「ああ、でも少し休ませてもらう。」
「…うん。ゆっくりしてきていいよ。…リク、巧を上に寝かせてきてくれる?」
「ハイ。」
ナツミさんはこちらに向きなおって
「ゴメンね。巧も結構な過去があるからさ…。失いたくなかったものを失う経験を二度もしている子なの。許してあげて。」
「いえ、そんな人に無茶ぶりをした、俺のほうこそ謝らなくては…。」
ナツミさんの下げた頭に慌てて俺も頭を下げ返す。
「でもね。巧の言うことは正しいと思うの。大切なら手元に置いておきなさい。いつだって見失わないように。」
「距離の話じゃないぞ。あの子が不安にならないように。ちゃんと話してやれ。そうすれば、きっとあの子も許してくれるんじゃないか?」
「あんたが来る前にね、あの子もここに来たの。」
「え…?」
「私が出て行ったのは、私があの子の話を聞いたから。あの子は強いわ。」
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