第33話

「え?」

ナツミさんの質問に少し衝撃を受けて思わず問い返す。

「単なる質問だからそんなに難しく考えなくていいわよ。恥ずかしい?」

「ふつーに顔が好みだったのが一番で、二番には性格の悪いところです…。あれだけの性格の悪さなら、共にいられると思った。…エゴですね。」

恥ずかしくて声が小さくなる。

「ふーん。じゃあ、嫌いなとこは?」

「人に興味ない癖に、外面大魔王で、みんなに笑顔を振りまいてるところと、冷たいくせにおせっかい焼くところとか、こんな無茶を受けいれるところとか…。」

「ああ、もういい。わかった…。つぐな。ユキはここの常連だけど…。私たちは彼のそんな一面を知らないわ。あと、つぐな、恋も愛もエゴに決まってるでしょう?甘ったれないで。」

「え…?」

私は驚いた。彼はここに絶大な信頼を寄せているように思っている。少なくとも、学校という空間よりかは。

「澪も。巧も、リクも。もちろん私も。彼が分厚い仮面をかぶっていたのは年の功でわかるけれど、その仮面をはがすことはできないわ。…つぐな、イズミとその先輩知ってる?」

話が急に脱線したことに困惑を覚えながらも、コータとセットの先輩といえばあの人しかいない。

「灯先輩ですか…?」

「そう。イズミも分厚い仮面をいろいろ付け替えて生きてる。ものすごく歪な子。私たちの前ではイズミだし、学校ではまた違う仮面でしょう?彼は灯の前では航太の仮面を自然に使う。あの子は裏表はない代わりにいろいろな仮面を付け替えているけれど、灯のことだけは無条件に信じてる。…もちろん、私や巧は彼の過去をすべて知っているわけではないけれどね。でも、過去を知っている灯に対してあれなんだから。」

「ええ。有名ですね。」

「ユキも同じよ。イズミとよく似ている。あなたの前で素直な姿を見せているのなら、それがどうであれ、あなたに他の人とは違う感情を。懐に入れているのだと私は思うわ。」

「妹と言われても?」

「妹上等よ!だって家族じゃない!私があなたくらいの時、彼にそれを言われていたら多分狂喜乱舞してたわ。まあ彼は特殊だったけれど。」

「ナツミさん…。」

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