パステルカラーの空と水彩画売りの魔女
睡眠不足
プロローグ
第1話 空
この部屋から見える空は、きっと彼女が見上げる空とは違った色をしているだろう。
今日もあの魔女さんは、いつもと同じように真っ白なキャンバスを並べ、風に揺れる髪を遊ばせたまま、空色の絵の具を混ぜているのだろうか。
蝉もようやく泣き疲れた秋の始まりは、夏の猛暑を増長させる空とは違った穏やかな顔をしていた。
僕は目の前に広げた文庫本をそっと閉じ、少しだけ冷たい風の音に耳を澄ます。
そうして、僕がこの街に引っ越してきてからの、彼女と見た空色の日々を思い出していた。
「いらっしゃい、お客さん」
魔女さんは、いつも僕をそう呼んだ。
彼女が僕に向ける笑顔は、いつだって優しさに満ちていた。
ある時は道端に咲く花に微笑むように、またある時は、親猫とじゃれ合う小さな子猫に笑いかけるように。
「魔女さん」
「なんですか?」
「今日の空はどうですか?」
僕らの会話は、いつもここから始まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます