たられば

@kei0905

第1話 風景

 家に帰るはずだった、正確には自らが育った家に。この電車から流れる風景にはそんな面影はどこにもない。

面影がないどころか、慣れ親しんだ路線は数十キロ離れているだろう。

ひとつ共通点があるとすれば広がる田園風景に少し間隔をおいてならぶ家々。

 おそらくこの話を誰かにするとするならば、きっと田舎の澄みきった空気に、田んぼに空の青が反射して、何て考えてるに違いない。

 俺にはこの空気がとても重いものに感じて、空は黒に限りなく近いグレーに見えた。本当に澄みきった青空が目の前に広がっていたとしても。。。


 三年ぶりの帰郷だ。おそらく両親は喜んでくれるだろう。

どうでもよい期待を自らに煽りながら、見知らぬ最寄駅へと降り立つ。

帰ってきたと家族に会えると高揚感を覚えるはずが、見知らぬホームから改札への行き方すら戸惑う自分に嫌悪感を抱いた。


 自らの育った家なら最寄駅から歩いて一時間は越えるだろう。山を二つ越えるんだ。家からコンビ二だって歩いて30分はかかった。

 今は徒歩で15分、コンビニは10分。家族が迎えに来てくれるはずもなく歩いて行くんだろうと思っていた。


 ???「お兄ちゃん?」


     「弓子か?」


 見知らぬ車から背丈の高い女が声を不安そうにかけてきた。俺は妹だと気づけなかった。3年と言う年月は人をここまで変えるのか?そう自問自答せずにはいられなった。

綺麗な黒髪にスッピンで女子高へと通っていて妹は、茶色と金髪が交じり合ったよくわからない色の髪になり、付けまつげやアイシャドウのせいなのか目元が以前より、大袈裟に言えば二倍の大きさに見えた。


弓子「迎えに来たよ」


そう言って妹は車へと乗った。そう運転席に。。。車の免許を取ったことすら知らなかった。自分の車を買ったことすらも当然わかるわけがない。

 茶色の軽の助手席から見る妹は全くの別の人に思えた。

気色の悪いこの風景に俺が興味を示すこともなく、家族でありながら少し距離を保ったような、不思議な空気間で横目に見知らぬ女を見ながら家路についた。



 

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