第38話
学校の授業が終わり、海生達は自主練習しながら幸隆達が帰って来るのを待っていた。
「早く帰ってこないかなー」
昼過ぎの飛行機で熊本を出発し、沖縄に着いてそろそろ学校に到着するはずだ。
「そういえば一年生も一人大会に行ってたんだったな」
鏡也が海生の技練習に付き合いながら答える。海生と鏡也は階級が近いこともあり、練習を一緒にすることが多くなった。ちなみに海生は66㎏級、鏡也は60㎏級だ。
「そうそう。幸隆っていうんだけど、今年の二月から練習しててセンスもあってめっちゃ上手いの」
「あぁ。ちょっとしか練習見れてないけど上手いのわかったわ。全然動きが違った」
せやろ?となぜか大阪弁になりドヤ顔をする海生。なんでお前が調子に乗ってるんだと海生を小突く鏡也。
そんなやり取りをしているうちに日が暮れはじめ、練習しながら帰りを待っていた一年生と武光は部員達を乗せたバスが道場の近くまで帰ってきているのを見つけた。
バスが道場の前に停まり、バスから部員達が降りてくる。
「おかえりなさーい」
駆け寄る一年生達に一番に声をかけたのは優香。
「ただいまー! 皆あたしがいなくて寂しかったー?」
「あそっか。優香先輩と美優先輩とかも一緒に行ってたんだった。完全に忘れてた」
「えぇ!? 本気で言ってるの海生!?」
「海生後でお仕置きね」
バスから降りて来ながら海生を睨め付ける美優。
ははっと冷や汗をかきながら笑って誤魔化す海生。
「んー動かずに乗り物に乗り続けるっていうのもなんか別の意味で疲れるなー」
肩を回しながらバスから降りてくる匠。そして続々と部員達が降りてきた。
最後に降りてきた幸隆を見つけて海生は声をかける。
「おかえり幸隆。あっちはどうだった?」
「おうただいま。すげぇ選手がいたぜ海生。九州大会に行けて良かった。試合は勝てなかったけど」
海生はどうだったという質問に、笑顔で答える。
「社会不適合者になる寸前だったおっさんに、短距離走と筋トレばっかさせられてたよ」
なんだそれと幸隆も笑いながら答える。
今日は疲れているだろうからと話は短めに切りあげ、ミーティングを終えると解散するこになった。
そしてそのまま着替えて帰ろうとした海生は、優香と美優に何か忘れてない?と引き留められた。
「お仕置き」
美優がニヤリと笑い、優香に指で支持を出し海生を二人で取り囲んで暗がりに誘い込もうをする。
「え!? 冗談じゃなかったんですかアレ!? スミマセンでした謝るんで許してっ……」
それでも取り囲むのをやめる様子はなく、観念しなさいと距離を詰めてくる優香。
「ちょっ近っ、近いですって先輩達!」
そのまま二人に捕まる海生。最近少し調子に乗っており、優香と美優をバカにして舐めた態度を取っていたツケが回ってきていた。
そして暗がりに連れ込まれ、優香と美優に好き放題されてしまった海生は、アッーという叫び声を上げた。
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