第29話

 ウチ、百合菜は頑張っている人を見るのが好きだ。勉強を頑張る人、運動を頑張る人、趣味を頑張る人。そういう人達を見ていると自分も頑張れる気がしてくる。


 バレーボール部のマネージャーになったのは、頑張っている人達を見られるから。そしてそういう人達のサポートをしたいと思ったからだ。母親がママさんバレーに通っており、バレーボールに少し興味があったのも理由の一つだ。


 海生先輩に出会ったのはマネージャーになってから。最初見たときはあんまりやる気なさそうな人だなと思った。


 そのイメージは海生先輩が二年生のうちは変わらなかった。正直こういう人を見ているとちょっとテンションが下がる。


 バレーボール歴は長いと聞いたが、それでもレギュラーに入れていないところを見ると、そのやる気のなさから来るものなんだろうと思った。


 それが三年生になった時一変した。急に練習に真剣に取り組むようになったのだ。今までの海生先輩ではないかのような変貌に目を疑った。


 学校の練習だけではなく、母親が所属しているママさんバレーに来てまで練習しているという話を聞いた。


 この時に興味を引いた。どうしてこんなに頑張るようになったのだろう。こっそり母親のママさんバレーの練習を見にいったりすることもしばしばあった。


 その時の海生先輩の姿はなんだか輝いて見えた。あれ? この人こんなに格好良かったっけとその時初めて思った。


 そんな練習を続けて三か月、三年生最後の大会のレギュラーメンバー発表の日。海生先輩は控えのメンバーにも選ばれなかった。


 練習が終わった後、どこかへ向かう海生先輩が気にかかり後を追った。体育館の舞台裏に隠れて海生先輩は一人で泣いていた。


 海生先輩がどれだけこの三か月頑張っていたかを知っていたうちは、その姿を見て同じように涙を流した。あんなに頑張っていたのに。


 その時からずっと海生先輩のことが気になっている。

 大会の時に知り合った海生先輩のお姉さんの海里さんとは海生先輩のことで色々話をし、今でも連絡を取り合っている。


 まだ彼女が出来ていないことや、レスリング部に入って頑張っていること。あとはこの前鏡也先輩とは違う男友達を連れてきていい感じだったとか、海里さんはなぜか興奮しながら話していた。


 今日祭りに来たのはぶっちゃけ根回ししてもらったからだ。海里さんと通じて鏡也先輩に協力してもらった。悪いとは思っていない。だってこれくらいしないと海生先輩とつなぎを取れないではないか。


 海生先輩が高校に上がり、薄れるどころか強くなってしまった思いを抑えきれなくなっていた。


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