第24話
放課後図書室に戻ってきて勉強はじめようとした幸隆と海生。紀之も誘ったのだが、俺は自分でなんとか出来ると思うから良いやという、どこから来るかわからない自信を持った答えで断られた。絶対大丈夫じゃないと思うのだが、それでも本人が良いというのだからしょうがない。
すると二年生の先輩方も図書室に来ていた。
「康則先輩達もテスト勉強ですか?」
「そうなのよ私勉強あまり出来なくてさぁ」
声をかける海生。図書室にいたのは匠と康則、相変わらずのおねえ口調なのは康則だ。
「そなんだよな。一応全部の教科が出来ないわけじゃないから二、三教科教えるだけで良いんだけど。数学とかはそこまで悪くないし」
同じクラスらしい匠と康則は互いの学力がどれくらいなのかは知っているらしい。
「保健体育とか得意なんだけどねっ」
康則が得意げにウインクするがどう反応して良いかわからない。正直そんな情報いらなかった。
「俺らは優香先輩と美優先輩から去年のテスト問題もらったんで、その問題を見ながら今から勉強するところです」
幸隆が昼休みに渡されたテスト問題を見せながら言う。
「あら、あの子達バカなのにそういう物はちゃんと取ってあるのね」
「誰がバカだってぇ!?」
そこにタイミング悪く図書室に入ってきた優香と美優が駆け寄ってきていた。
「私達とあんまり頭の出来変わんないでしょうが康則は!」
憤慨しながら言う優香。
「そうね。だからこそヤバイと思うんだけど」
さらっと自分自信の頭もヤバイことを認める康則。そこは潔いのかもしれない。
「優香と一緒にされた……」
優香と一緒にされたことに対してショックを受けている様子の美優。ただ去年の解答用紙を見る限り同レベルだと海生は思う。
「優香先輩と美優先輩も図書室で勉強なんですね」
幸隆がそう言うとこれには優香が答えた。
「うん! でも勉強だけが目的じゃないんだよね!」
後を引き継ぐように美優が答える。
「テスト時期になると図書館は男の子同士が勉強教えるために寄り添いあってるの見ることが出来るから」
それを聞いて海生はなぜか悪寒がし、次の瞬間幸隆に提案をしていた。
「幸隆、今日はうちで勉強しない?」
幸隆は二つ返事で別に良いよと答えていた。
通天高校の図書室を後にした幸隆と海生は、20分ほどで海生の家に着いた。
「ただいま」
「おかえ…… 海生お前またイイ感じの子を」
出迎えたのは姉の海里。両親は共働きでこの時間は働きに出ている。大学生の海理は日によっては授業がないので家にいることもある。
「言っとくけど変なことしないでね。あと幸隆の半径二メートル以内に近寄らないで」
「なんでー!? お前鏡也の時はそんなこと言わなかったじゃないか!」
「鏡也は昔から付き合いあったし、どういう目で見られてるか知らなかったし」
幸隆を見て妙に興奮する海里。それに対して冷たくあしらう海生。
「えっと海生の姉さんか? はじめまして幸隆っていいます」
挨拶をする幸隆に海里は満面の笑みで答える。
「はじめまして姉の海里だよ! さぁ今日はゆっくりしていって!」
「テスト勉強するから邪魔しないでね」
「わかったー」
本当に邪魔しないか不安が残る中、二人は海生の部屋に向かった。
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「海生の姉さん面白そうな人だな」
「んー別に悪い人じゃないんだけどちょっと趣味がね」
クエスチョンマークを頭につける幸隆。なんでもないよーと言いながら海生は勉強の準備を進める。
「おっこの漫画俺も見てる。スゲー面白いよな」
幸隆が本棚に置いてあった漫画を見て言った。海生が集めているスポーツ漫画だ。
「うん! それすっごい好きでさ。主人公達が頑張って、それでも勝てなくて、でも諦めようとしないところとか!」
「あぁ良いよな! 試行錯誤しながらどんどん成長していくところとか!」
二人が漫画の話で盛り上がる中、ドアを隔てたその隣では海里が聞き耳を立てていた。
「くそっ海生め…… 鏡也以外の子ともいちゃいちゃしやがって…… 妄想がはかどるっ」
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漫画談議がひと段落して勉強を始める海生達。まずは生物からだ。
「暗記でどうにかなる問題もあるから、まず覚えるところからあ始めようか」
「う…… 俺はそこんところ苦手だからやり方は海生に任せる」
海生はもらった優香達にもらったテスト問題をみながらテストの傾向を予想し、出そうなところをピックアップしながら暗記を進めようとしてくる。
「えっとこの細胞の図は植物や菌類、細菌類の細胞にみられる構造。 動物細胞には存在しない。 細胞膜の外側に位置するのが 細胞壁」
「細胞膜? 細胞壁?」
「んー壁っていわれたら細胞壁って覚えとけばいいよ」
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