目的の裏返し

 春。


 薄い桃色の小ぶりの花を枝いっぱいに咲き誇らせた桜が見物な季節。



 僕は彼女と近所の公園に花見に来ていた。


 公園と言ってもベンチしかない簡素な所でそこまで広くはない。


 けれど桜並木に隣接する形であるその公園は花見をするには絶好の場所であり、無名なため穴場だった。


 

 そんな中、彼女は満面の笑みを浮かべながら三色団子を頬張っていた。



「せっかく花見に来たのに君は全然桜を見ていないよね」



 僕は彼女の様子を眺めそう言った。


 彼女は自作のお弁当や和菓子を実に嬉しそうに食べ、僕にもこれは頑張って作ったのだのこれはおいしいだの、メインの桜はそっちのけで食べ物の話ばかりしていた。



「そ、そんなことないわよ。ちゃんと桜も見ているわ」



 彼女は否定するが噛んでいるし目が思い切り泳いでいるから説得力は皆無だ。



「君は花より団子みたいだけどね」


「そ、それは……」



 図星を指され、むうと黙り込んでしまう彼女。


 言葉に詰まってしまい困ったような表情をする彼女も僕はかわいく、愛しいなと思う。



 別に僕は花より団子状態である彼女のことを責めている訳じゃない。なぜなら僕自身も、桜なんかよりも彼女と過ごす時を楽しんでいるのだから。










END.

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