おとうさん

『ぼくのおとうさんはいまうしろにたっています。きょうはじゅぎょうさんかんなのでみんなのうしろにもおとうさんかおかあさんがたっているとおもいますが、ぼくのおとうさんはいつもぼくのうしろにたっています。おとうさんはむかしじこにあいましたが、それからはずっとぼくのうしろにいてくれます。このさくぶんをよんだひとのうしろにも、おとうさんはたっています』


 私は拙い字で書かれた原稿用紙を折りたたみ、文部科学大臣に訊ねる。


「本当にこんな作品に文科大臣賞を与えるのですか」


 文部科学大臣は口ひげをさすりながらうなずいた。


「ああ。もっと多くの者にこの文を読んでもらうべきだ。すべては我らが父のために」


「何をおっしゃって――」


 そこで、私は背後に気配を感じた。

 全能で、荘厳で、偉大で、そして我らをお創りになった聖なる父の視線が後ろから私を握りしめていた。

 私は震える唇でつぶやく。


「主よ……」

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