嘘だと言えない

「死にたい」


 少年のその一言で、村は大騒ぎになった。

 ここは正直村なので、彼は本当に死にたがっているということになる。


「死にたい」


 実は彼は、正直村の母親と、嘘つき村の住人の父親の不倫の末に生まれた子どもだった。


 そのことを知ったショックからか、それとも、本音と嘘を使い分けねばならないことに疲れたのか。

 その言葉が嘘か真か、少年自身にもわからない。

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