第5回「あの水虫のおじさんは何をしているのか?」機動警察パトレイバーの後藤隊長について

「あの水虫の隊長は行方不明」(水虫の隊長=パトレイバーの特車2課第2小隊後藤喜一隊長)


 実写版「機動警察パトレイバー」で年老いて立派な特車2課の整備班員班長になった(名優千葉繁さんが演じる)シゲさん(シバ・シゲオ)の口から語られた事実です。


「パトレイバー」は近未来の日本において作業用ロボ、通称「レイバー」の数が増えてしまった為に起きるレイバー犯罪が社会問題になり、それを取り締まる警視庁警備部特殊車両2課第2小隊の活躍を描く名作かつ傑作ロボットアニメです。

 あの「踊る大捜査線」のモデルになった作品でもあります、


 実写版パトレイバーは「TNG」(ザネクストジェネレーションパトレイバー)とも呼ばれます。

 東京を舞台にした戦争・テロをテーマにした「劇場版2」の事件(またはそれに準ずる事件が起きたパラレル?)の数年後が実写版の舞台です。

 レイバーの犯罪は減っていて、今現在は三代目の第2小隊がレイバー犯罪と戦っているという現状です。


 じゃあ、あの有名な初代第2小隊メンバーと、第1小隊の南雲しのぶ隊長は今どうなったかというと・・・・


遊馬・・・・実家の篠原重工継いだ

野明・・・・遊馬の公私共に最高のパートナーになった(結局遊馬と結婚したっぽい)

太田さん・・・・暴力事件を起こして逮捕

進士さん・・・・サラリーマンやって安定している

ひろみちゃん・・・・実家の沖縄?に帰った

しのぶさん・・・・海外でボランティア活動

後藤隊長・・・太田、進士と共に小さな警備会社を起業したが、無茶な経営をやって即倒産して、現在行方不明。


 なかなか衝撃的な事実でした。なんと全員警官辞めてる!?という・・・太田さんが逮捕されてるなんて事もビックリしました。まさにシゲさんだけが生き証人として残っているのが現状でした。

 彼らは東京で起きる戦争を阻止した功労者であると同時に、警察上層部の命令を無視して行動を起こしたのも事実なので、「警察を辞めるしかない」という事だったのでしょう。


 そして、一番の問題があの後藤隊長が行方不明という事です。

 昼行灯で有名な後藤隊長は別名「カミソリの後藤」と呼ばれるぐらい実はキレ物で危険人物でもありました。その上行動力もある。だから、上司から疎まれて閉所である特車2課に飛ばされて隊長やっている訳です。

 学生時代は反体制側にいて学生運動にも参加した過去もあったそうです。

 あの人が行方不明で、実写版のパトレイバーの劇場版がまた「東京が舞台の戦争・テロ」という話とも聞いていました。(いつもの押井守節をやるんだ・・・とも思いました)

 なので、映画のテロリストの首謀者が、もしかしたら「後藤隊長」かもしれないという事も考えました。でも、その予想は外れましたので、少し安心しました。


 後藤隊長は変なおじさんでもありますが、変な魅力があります。恐らくパトレイバーのキャラクターの人気投票やったら今現在でも断トツで1位になると言っても過言ではないと思います。

 そんな後藤隊長にそっくりな人で人気作品の登場人物が1人いました。ドラマ「相棒」の主人公「杉下右京警部」です。あの人は後藤隊長に近い存在と思います。


・変な部署にいる

・キレ者すぎて行動力もあり、上司に疎まれている

・組織に属しながらも、組織が間違っているなら、それに歯向かう

・嫌われているが妙な協力者も多い

などなど共通点もあります。

 ああいった組織の人間の中でも他の者達とは違った独自のスタンスを取っているから、後藤隊長も右京さんも魅力的に見えるのかもしれません。


 実写版で語られた現状見る限り、後藤隊長は今のところテロに走る予定はないようです。今の日本や組織に失望した事なんて事もないと思われます。

 実写版では後藤隊長の後輩で現特車2課第2小隊の後藤田隊長なる人物がでてきます。後藤隊長は彼に遠まわしに「東京で起きるテロ・戦争を防げ」と指示していましたし、テロが起きた際の抑止力になりうるであろう特車2課を潰させない為の口実である「特車2課の遺産」なんてものもありました。

 劇中では、特車2課が潰れると、その「遺産」が明らかになり、警視庁警備部がひっくり変えると言われるぐらいの爆弾とも言われていました。

 あれは後藤隊長としのぶさんが警察辞める際に、「なんとしても特車2課を残しておく必要がある。その理由を作る」と考えた上の最高のアイディアだったのでしょう。

 まだ実写版見たことない人は「その遺産が何か」と考えた上で見てみるのもいいかもしれません。(ヒントはいつもの押井守のあのやり方です。)


 後藤隊長とは逆に組織に属していて、それに失望してテロに走った人間だと「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のネオ・ジオンの総帥シャア・アズナブルがあげられます。

「機動戦士ガンダム」の続編「機動戦士Zガンダム」だと彼は反地球連邦組織エゥーゴに属し、クワトロという偽名を使って、ティターンズなる地球連邦軍の部隊と戦っていました。

エゥーゴVSティターンズ(終盤はそれに加えてVSジオンの残党のアクシズ軍の)話なんですけど、エゥーゴもティターンズも実は地球連邦軍内の組織だったのであれは組織の内輪揉め物語でした。

そして、その戦いを得たシャアが出した答えは「地球連邦軍を潰す」という結論でした。彼は連邦という組織に完全に失望してしまったのでしょう。


 劇場版2で後藤隊長としのぶさんが、戦争が起きてる東京の現状を客観的な上に楽観的にしか見てない警察の上層部と会議室で揉める有名なシーンがあります。

 あそこで上司に向かって後藤隊長が「あなた方には愛想尽き果てました。自分も南雲しのぶ警部と行動を共にします」と言い切ります。もう完全に日本の警察という組織に見切りを付けたのでしょう。

 でも、組織に失望しつつ、テロに走らず日本の為に動いた後藤隊長はシャアとは違った存在でした。


 結局、実写版では現在、後藤隊長がどこで何をしているのか語られるずに終わりました。分かったのは今でも、彼は日本の為に動いているらしいという事ぐらいです。

 カミソリの後藤・・・どこへ向かうか分からない刃物が行方不明な状況というのは怖いと思います。劇中では語られていませんでしたが、恐らく公安とかにも後藤隊長はマークされていると思います。彼はそれほどキレ者で行動力がありますから。

 そんな頭の良い危険人物が日本の敵に回ったときこそ、この国が終わる時なのではないかとパトレイバーを振り返って見て考えました。

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