巨人進撃LINE
警察病院から
車にいるときは気付かなかったが、彼は以外に背が低い。彩やティアより少し高い程度で、光輝や二界道と比べると小さく見えた。
「あぁ……君、意外と大きいなぁ」
本人も気にしているみたいだ。
「それで? 俺に何の用?」
「あぁ、えっと……用があるのは俺じゃなくて、ティアさんなんです」
「ティア? あぁ、Fメールの君かぁ」
頷くティアが丸めた青ハンカチを取り出すと、おもむろにジャックの目の前で広げてみせた。そこには一本のUSBが、傷も手の油もついていない状態で入っていた。
「ずとマエ、ゼウスて言う人からモラタUSBデス。アナタなら、何とか出来るかも思て」
ハンカチから出てきたUSBを手に取り、ジャックはふぅんと軽くうなった。様々な方向から見回して、ティアに視線を移す。
「これ……あぁ……ふぅん! It could come and tempered several times ?〈コレ、何度かいじった?〉」
「No……I am fearful ――one time.〈いいえ……怖くて1度も〉」
「I see……This was received when?〈なるほど……これはいつ受け取ったの?〉」
「The summer of last year.To about July.〈去年の夏、7月くらいです〉」
「I understand――it is good.Leave it to a specialist.〈わかった、いいよ。専門家に任せな〉」
「Thank you!〈ありがとうございます!〉」
ジャックとティアの英語だけでの会話に、彩だけ首を傾げた。光輝にそっと耳打ちして、訳してもらう。
その間にジャックはノートパソコンを広げ、USBを差し込んだ。
「紅茶でもすすっててくれ。正体自体は一分でわかる」
そう言ってキーボードを叩き始めたが、実際は三〇秒もかからずUSBの中身を解析した。得意げにドヤ顔してみせる。
だがその正体はジャックの口角を引きつらせ、指を止めて震えさせ、冷や汗を頬に垂らした。二界道が様子を窺う。
「どうした、Bメール」
「……見ればわかるぜ、二界道。神が行おうとしてる、次の計画が」
パソコンの画面を、二界道が後ろから凝視する。その文面に目を通せば通していくほど、体中の体温が奪われていくような感覚に陥った。
横目から見た光輝も、案の定固まった。
「ど、どうしたの光輝くん。そんな怖い顔して」
彩が窺う。すると光輝は彩とティアの二人に場所を譲り、画面を見るように促した。
「これがもし実行されれば、日本の人口は大分減る……やべぇなんてもんじゃねぇなぁ」
ジャックに隣で脅されながら、二人は恐る恐る画面を見る。そこには大きな緑色の輪と、その上に点々と存在する白い丸印があった。
丸印にはローマ字で書かれた文字が線で結ばれている。丸印、それぞれの名前を表しているかのように。
「コレ、ナニですか?」
「Shinjyuku、Yoyogi、Harajuku……東京にある地名?」
「駅名だな、それも山手線の」
ジャックの指がまた動く。ある項目を見つけて、そこを強く指した。
「見てみなよ。君達にもわかりやすいよう、詳しく載ってるからさ」
彩とティアが画面の文面に目を通す。そして一つの項目が目に映ったそのとき、二人は顔を見合わせた。
――Titan asalt〈タイタンアサルト〉――
去年の一二月。歌姫詩音のコンサート会場まで、巨人が進撃するかのように爆破地点が移動する神の破壊作戦。
つい最近のことで、忘れたくても忘れられない。
「あれを、今度はこの線路上でやるっていうのかい?」
「……そういうことだ」
山手線の駅を、一駅一駅爆破しながら進行する作戦、
その場にいた全員が、あまりにも短い期間で行われるそれに、肝を冷やした。
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